ただ、目立つのが嫌いなんだよ!
帰り道の事だ。
チャイムがなったので、椿にお礼を言い生徒会長室を出て、すぐさま家に帰ろうとした。
急いでいた余り、走ってしまったのが俺の敗因だろう。
ここを曲がれば一直線だ!と思いダッシュしました。
それが、本当にダメだった。
角を曲がった瞬間、
「きゃっ!」
「うぉ!」
資料を持った女子とごっつんこしちゃったぞ☆
「ごめんなさい!ぶつかってしまって!」
落ちた資料を慌てて拾う女生徒。
「いや、こちらこそすみません。急いでいた余り、周りを見ていませんでした」
俺も資料を拾うの手伝おうと思い手を伸ばす、そして、互いの手が触れてしまった。
「「あ、す、すみません····」」
女子生徒は頬を赤くしながら視線を下の資料に落とす。
違う!こんなことをするのは、俺ではなく主人公だ!
モブにこんなことやらせるんじゃねぇ!
帰らせて!?ねぇ、帰らせて!?
「あの、大丈夫ですか?」
はは、やっと主人公の登場か?
俺は、満面の笑みで後ろに振り向く。
そこには、俺の平穏を乱す悪魔の転校生、朝日 鈴音が居た。
俺は、視線を資料に戻し、淡々と資料を拾い集める。全ての資料を拾い集めると笑顔で手渡した。
「はい、どうぞ。ぶつかって、ごめんなさい」
「えっ、いや、あの、披露の手伝ってくれてありがとうございました!」
資料を彼女に俺は、笑顔で「どういたしまして」と言うと、帰ろるため再び鞄を持ち直す。
·····後ろには誰もいない筈だ。そう誰も。決して美人転校生とかいないはずだ。うん、いないいない!そんなものはいなーい。
「さて、帰るか!」
直後、ガシッ!と肩を持たれた。
「あの、法堂さんですよね?一緒に帰りませんか?」
満面の笑みで接して来るが、目の奥は笑っていない。
「ははっ!人違いじゃないかな?僕の名前はタナカ リョウイチロウダヨ?」
「何で片言になってるか分かりませんが、取り敢えず帰りましょうか」
親指で、クイッと正面玄関の方を指す。
頑張ってこいつから離れようとするも、離れようとする度こいつの指が俺の肩にめり込んでくる。
ここは大人しく着いていった方が良さそうだ·····。
俺が走り去ろうとするのを諦めると、朝日は手を離してくれた。
「じゃあ、行きましょうか!」
笑顔で歩き出す彼女に俺は、大人しく付いていくことにした。
「キャー!あれ、転校生の子じゃない?めっちゃ可愛く無い!?」
「ヤベェ、彼女にしたい!」
「てか、横のヤツ誰だよ。彼氏とか?」
「無い無い。まず、釣り合わねーだろ。せいぜい奴隷とかだろ」
「それだ!あー、奴隷でもいいからあのポジション交代してくれねーかな?」
誰が奴隷だ、この野郎!
交代してくれ!むしろ交代しろ!
「すごい言われ用ですね、法堂さん·····」
「完全にお前のせいだろ·····」
「何で私のせいなんですか?」
キョトンとした顔で聞いてくる、朝日。
こいつ、もしかして分かって無いのか?
ありうるな。こいつも恐らく、鈍感系だ。
ここは、生粋のモブたる俺が気付かしてやらなければいかんな!
「あのさぁ、お前みたいな美少女転校生が俺みたいな生粋のモブに絡んでんだから、こんな扱い受けるに決まってんだろ?」
「び、美少女ですか·····。そう真正面から言われると、流石に照れますね」
朝日が顔を赤くして下を向く。
ん?俺、何かしたっけ?
「でも、法堂さんも前髪上げれば、すっごく格好いいじゃ無いですか!」
「何のことだか、分かりません」
「えい!」
そんなこと言うと、俺の目にかかっている前髪を上げてくる。
「ほら!やっぱり格好いいじゃ無いですか!何で切らないんですか?」
「目立ちたくないからだよ!それなのに、お前が喋り掛けてくるから、こんなことになってんだよ!」
現在、俺達はめちゃくちゃ視線を浴びている。
朝日に対しては、好意十割だが、俺に対しては敵意·憎しみ九割、好奇心一割位だ。
正門を出ると生徒達からの視線は止んだが、今度は住民からの視線を浴びた。
「それで、何のようだ」
こいつの話を最後まで聞けば、流石に帰らしてくれるだろう。
そう思い、要件をさっさと聞こうとする。
「えーと、まず昨日は助けてくれて本当にありがとうございました!」
「いや、それは当然のことをしたまでだから、別に···」
「普通の人は助けてくれませんよ!昨日の行動は十分に誇っていい行動です!」
そんなことを言ってくる、朝日。
いや、普通の行動だと思うんだけどなぁ·····。
「あ、後ですね·····」
何かモジモジしだした。
「どうした。トイレか?」
「ちち違いますよ!法堂さんにはデリカシーというものが無いんですか!」
「そんなものは七年前に、トイレに流した」
「小学生の時に流したんですか!?」
「いいから要件を言え」
「法堂さんが言い出したんですよ!?」
俺のせいじゃないと思う。
いきなりモジモジしだした、こいつが悪いと思います。
「じゃあ言うのでちょっと止まって下さい」
止まる必要あるのか?
そう思いながらも素直に言うことを聞き、歩くのを止める。
「えーと、ですね」
「うん」
「私と友達になってください!」
朝日はそう言って、勢いよく頭を下げた。
それに対し俺は、
「嫌です」
普通に断った。
「な、何でですか····」
どう考えても、こいつと一緒にいると目立つ。
うん、間違いなく目立つ。
それだけは絶対に駄目だ。
「はっ!まさか友達では無く、一気に恋人になってくれと言うやつですか!?ごめんなさい。格好いいけど、まだ出会ったばかりなので、もう少し日を重ねてから改めてお願いします。」
「誰もそんなこと言って無いだろ!?ただ、目立つのが嫌なんだよ!」
俺がそう言うと、朝日は首を傾げてこう言った。
「何でそんなに目立つのを嫌がるんですか?私にはよく分かりません」
「逆に何で目立ちたがるんだよ。そっちの方が俺には分からん」
本当に目立ちたがるん奴の気が知れない。
「ということで、俺はお前と友達にはならない。分かったか?」
俺は、そう言うと朝日を置いてさっさと家に帰った。