オタサーの姫編②
学校のお昼休み。
多くの場合、人は誰かと一緒に行動する時間だ。
人間は孤独に耐えられない生き物である。倦怠感、虚無感、劣等感。
それを回避できるのであれば回避して見せよう、それが普通というやつだ。
その為だったら共通の敵を見つけて否定し、己を否定して相手を立てる。そうやって何とか己を保っている。
「凛ちゃんお弁当可愛いね!」
「凛ちゃん、後で理科教えてほしいんだけど」
「凛ちゃんちょっと髪巻いた?」
という声が聞こえる。
平林凛はクラス内グループ台風の”目”ともいえる存在である。
もっと言えばこの学校の頂点に君臨するポテンシャルを持っている。なによりかわいいのだ。容姿に恵まれている。
勉強が出来てスポーツが出来てピアノが弾けて英語が話せて料理が出来てetc...。
平林凛なら誰かを否定せずに、自分を否定せずに、いつだって人がついてくる。
恵まれた人間に否定は存在しない。
平林凛を一言で言うなら”肯定陛下”
その優越感は計り知れないものだろう。
一方、百々子は孤独に慣れずにいた。
百々子にとって昼休みは倦怠感に焦り、虚無感に追われ、劣等感を攻め込まれる時間。
百々子は分かっている。平林凛という存在があるならば、自分がその対極にいることを。
百々子はお弁当を持って教室を出る。
「ねぇ、一緒にお昼食べようよ!」
百々子が向かったのはしげるとタンクのところだ。
「いいねいいね!じゃあサト先も呼ぶわ」
しげるが机の下で携帯を開きメールを打つ。
「俺の席使っていいよ」
タンクがそう言って別の椅子をもらってくるが……自分の席に座らせるとか、なんかやらしいこと考えてないか?
百々子が座って、お弁当を開くと、
「お、さすが姫のお弁当可愛い!」
としげる。
「えへへ、毎日自分で作ってるの」
「女子力……」
とタンク。
「二人にも卵焼き一個ずつあげるね」
と言ってお弁当の上に丁寧に渡す。
タンクは『あーん』してほしいと思っていた。
「そういえば姫に見てもらいたい絵があるんだ」
としげるはスケッチブックを取り出す。
「えーどんな絵かな?」
「この前スケッチさせてもらって、オリジナルキャラが閃いたわけ」
「えーうれしい!」
スケッチブックには清楚な女の子が描かれていた。
「しげる普段はエロい絵ばっかり描いてるくせに」
タンクがボソッと言う。
「うるせぇ!」
「いやらしい……」
百々子は対応に慣れてきたのか笑いながら流し目でしげるを見る。
「ち、違うんだ姫!そういう絵も描けた方が上手くなるっていうか」
ドアが開いてサト先が来た。
「百々子ちゃんがお昼一緒なんてうれしいね」
「せっかく仲良くなったからお昼も一緒がいいなって、思いまして」
百々子の上目遣い。
サト先が百々子の顔を覗き込んで、
「あ、百々子ちゃん前髪切ったの?」
「分かります?ほんの少し整えたんですけど」
「わかるよ。すっごくかわいい」
「て、照れます」
誰かの否定をせずに、自分を否定せずに。
恵まれた人間が成せる圧倒的優越感。