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オタサーのオタクくん編③

次の日の放課後、百々子は帰る支度を終えてしばらく自分の鞄を一点に見つめていた。


「ひーめ。ひめ!ひーめ!」

なにかもじゃもじゃした呟きが聞こえる。

「……っは!しげるさん!タンクさん!」

別クラスの二人が突然目の前に。

「姫、お迎えに参りました」

俯いて手を差し出すしげる。もじゃもじゃ頭の隙間から見える笑顔が不気味である。

周りの視線が百々子たちに集まる。


「ひ、ひ、姫ですか!?」

百々子は己を指さし、戸惑う。

「サト先がー、ちゃんとお姫様と接するみたいに誘導しろって言ってた」

タンクが言う。

百々子は二人に顔を近づけてヒソヒソ声で言う。

「で、でも周りの人に変だと思われてるよ……!」

「周りの雑魚どもに気を取られるなんて姫らしくもない!俺たちは俺たちの道を行くのだ!」

とデカデカ声で言うしげる。

周りの視線が百々子たちに集まる。


「と……とにかく部室へ行きましょう」

百々子には妥協しかなかった。



「どうぞ姫様」

しげるがドアを開けて誘導する。

目の前にはサト先がいた。大量に並んでいる服を吟味している。

「あ!来てくれたんですか!今、百々子ちゃんが来たら着てもらう服を選んでたんですよ」

「服ですか?」

「気に入るのがあるかな?サイズは昨日見た感じこのくらいで合ってると思うんだけど」


「サト先の家は裕福」

横にいるしげるが百々子に耳打ちする。

「裕福ってレベルじゃ……」


衣装はきわどい物からアニメキャラのコスプレ衣装、清楚な白いワンピース、アーティスティックなカラフル衣装などが揃っている。

「どれがいい?」

さわやか笑顔で聞いてくるサト先。

「どれって言われましても……」

「そうだよねぇ。いきなり決めろって言われてもね。迷うようならタンクとしげるに決めてもらう?」

タンクは鼻の穴を膨らませて笑う。しげるは百々子の胸を見ながらニヤッと笑う。

「あ、あの!私これがいいです!」

慌てて白いワンピースを掴む百々子。

「着替えはあそこでしてもらうから」

ニコニコのサト先が指さすところに黒いカーテンで囲まれた空間がある。

「昨日しげるとタンクが作ってくれたんだ」

百々子は衣装を持って中を覗く。

黒いカーテンの中は直方体の木の骨組みに黒いカーテンがガムテープでくっついているだけの安い仕上がり。

百々子は振り返って言う。

「狭くないですか?」

「昨日いろんな先生に頼み込んで、なんとか手に入れた木材だからそれが限界なんだ」

(裕福なんだったらそこも用意してくださいよー)

「まぁ、着替えるには十分そうです……」

と苦笑する百々子。


百々子がカーテンの中に入る。しげるとタンクはじっと見る。

カーテンが微かに揺れようものなら、位置的に服を広げたときの肘が当たったときの動きだ。

パサッと音がしようものなら、今制服を脱いだところだ、すなわちこの刹那は下着タイムであるに違いないと妄想を膨らませていた。

極めつけはそのあと、カーテン越しにお尻の形がくっきり見えた。しかもそれがちょうどカーテンの入り口でありつなぎ目であるからして、少しでもめくれば目の前に御尻神オシリスを拝めるに違いないと思ったのだ。

「なぁタンク、あのカーテンのつなぎ目から覗いたとして、こちらを振り向く可能性はどのぐらいだろうか」

「残念だが密着した布生地が少しでも動いたら気づく可能性はほぼ100%だろう」

「じゃあ偶然をよそおってガムテープを外すという作戦はどうだろう」

「そんなこともあろうかと、一か所だけ緩く張り付けた部分がある。見えるか?テッペンのあの一か所を外せば重力で次々に剥がれていくシステムだ」

「おまえってやつはこの絶対障壁バリアになんて欠陥を残したんだ!」

「しげるがやらないって言うなら俺も引くぜ?いいのか?」

焦るしげる。呼吸が荒くなり顔から首から手から汗が滴る。

「やるなら今しかねぇ!うおぉぉぉぉぉぉ!」

しげるはカーテンの最上部めがけて手を伸ばした。


「おい!お前ら何やってるんだ!」

サト先がしげるを止めようと走り出す。

タンクがサト先を止めようと立ち塞がる。

サト先は抜群の運動能力でタンクをジャンプで飛び越える。

タンクは悔しそうな顔でサト先を睨む。

しかし、しげるの手はガムテープに届いていた。

サト先は空中でしげるの肩に手を掛けていたが既にカーテンボックスは崩壊しようとしていた。

さらにサト先のジャンプの勢いが余ってカーテンの中に突っ込んでいく。




百々子は下着姿でサト先に胸を揉まれながら倒れていた。

サト先は百々子に覆いかぶさりながら胸のところにちょうど手が当たっていた。

「痛ってて……あれ?なんか手に柔らかい感触が……」

百々子は状況を理解し始める。最初は驚き、次に痛み、そして次に羞恥心。

「きゃーーーー!!」




「本当にすまなかった。私がスケッチの準備をして目を離している隙に……」

百々子は耳を真っ赤にして俯いている。

「2人はよく反省するように!」

「……サト先だけいい思いをした……」

とタンクが愚痴をこぼす。

「いい思いなわけないだろう!百々子ちゃんを悲しませたんだぞ!」

サト先が怒鳴ると委縮するタンクとしげる。

「はぁ……本当にごめん百々子ちゃん。もうスケッチしたいなんて言わないよ。この衣装も全部処分するから……」

「え?……衣装を処分って……」

百々子は驚いて顔を上げる。

「君のために用意した衣装だからね。君が来なければ部室を狭くするだけだよ」

「そんなのもったいないですよ!」

「今回のことはうちの部員が起こした不祥事だから君が気に負うことはないよ」

タンクとしげるはより一層落ち込む。

「でもサト先さんが悪いわけでは無いですし……」

「部長だから私にも責任はある。ただ、もし君がこの衣装たちを無駄にしたくないと思って、我々を許す気持ちがあるのなら、君が来た時のためにこの衣装はとっておこう」

サト先は百々子を見つめる。

「百々子ちゃんはどうしたい?」

「私……」

百々子は胸に手を当ててサト先を見つめ返す。

「またここに来ます」


「ありがとう。いつでも歓迎するよ」


百々子は家庭科室を出て、暗い廊下を歩く。部活動をやっていなかった百々子にとって日が暮れてからの下校は初めてのものだった。

静かな空間を一人で歩く不気味さも初めてだった。その危険性が胸をときめかせるものだと初めて知った。

「私の裸って、そんなに見たいんだ……」

と呟く。

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