オタサーのオタクくん編②
「なんか、照れますね……」
ベンチに座る百々子。周りを囲むオタクたち。
シャーペンとスケッチブックの摩擦音がかすかに聞こえる。それ以外に音がしない、オタクたちは一切しゃべったりはしないのだ。
「すごく、本格的……ですね」
沈黙。
「ちゃ、ちゃんと書けてますか?」
「ごめんなさい黙りますね……」
「シャーペンじゃなくて鉛筆使ってたりs―—」
「いいかげんにしろよ!!」
もじゃもじゃが立ち上がって叫ぶ。
「あ、すいません!」
百々子は目を丸くして固まる。
「いい加減にしろよタンク、おめえ須貝さんのスカートの中見ようとしてんだろ!」
もじゃもじゃの視線は体が大きい男の方へ向かっていた。
「……見てないし」
(ホッ……。私じゃなくてよかった……)
「おめえ何でそんな近くで座って描くんだよ!」
「ベストポイントで描くのが流儀。ッフフ」
「おめえ全然スケッチ進んでないじゃねえか!」
「しげるも進んでないじゃないっスか」
「お、お前が須貝さんのスカートの中を見ようとするからだ!」
(もじゃもじゃ頭の人がしげるさんで、体が大きい方の人がタンクさんか……。)
「ふたりともやめなって、須貝さんの前でみっともない」
「「サト先……」」
(この謎の雰囲気があるイケメンがサト先さんというのね……)
「レディとの接し方がなってないぞ、しげる、タンク。百々子さんは善意で協力してくれているというのに」
「……いえ、とんでもないです」
「私が描いたのはこれです」
サト先がスケッチブックを百々子に見せる。
「え!?メチャクチャうまい!!」
「やっぱりモデルがいいと筆が乗るね」
「いや全然そんなことないです……」
百々子は顔を少し赤らめる。
「今日はタンクとしげるは上手く書けなかったみたいだし、外だと百々子ちゃんが日焼けしそうだし明日部室に来てくれないかな?」
「部室ですか?」
「ああ、私らはマンガ研究部なんだ」
「だからスケッチ……」
「おいおいしげる、そこまで説明してなかったのか?」
「あ、はい。すんません……」
「まあ、百々子ちゃんさえ良ければ明日の放課後、うちの部室に来てよ。家庭科室でやってるから」
「か、考えておきます……」




