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チャラ男編②

須貝百々子は女性型アンドロイド15歳である。

百々子は学校で恋人のマッキーに会いに来たところである。マッキーのシャツを摘まんで話しかける。

「マッキー今日、マジ大事な話あるから一緒に帰ろうね」

「おう、わかった」

「絶対だよ」

「わかったわかった、じゃあね」

マッキーはすぐに振り返り友達たちの会話に戻る。友達というのが女友達3人なのだ。百々子は嫉妬という感情に近いものを覚えた。


約束の放課後、百々子はマッキーの教室の前にいると出てきたのはマッキープラス女3人。

「おう。百々子、みんなでカラオケいこーぜー!」

「マッキーなんで……」

百々子は走って逃げてしまった。

「何かあったの?」「マズイ感じ?」「今日やめとく?」と女3人組は言う。

「大丈夫っしょ!へーきへーき。つか百々子マジ空気読めなくね?」

カラオケには百々子抜きで行ったとさ。


百々子は一人家に帰り、メールを打つ。

『カラオケ行ったの?』

10分待って返信は来ない。

『ごめんね、別に怒ってるわけじゃないよ』

『メール返信くらい出来るよね?』

『メール見てる?見てたら返信ください』

『なんで返信くれないの?あの女達との遊びがそんなに大事?返事くれなかったら別れるから』

『カラオケ終わってからでいいから電話して』

『電話するまで起きてるから』

『いつになったら電話してくれるの?まだ待ってるから』

『どうして電話に出てくれないの』

『ごめんなさい。怒ってないからなんでもいいから連絡して』

百々子は一人、部屋で携帯電話を見つめている。体がストレス反応で振動する。

「エラー起きちゃうよ……」

携帯電話が鳴る。百々子は慌ててメールを開くと、スパムメールだった。

百々子は『まだ待ってるよ』とメールを打とうとして手が震える。

『まだ』と打つ手に力が入る。震える。親指に力が入る。気がついたら携帯電話に親指が貫通していた。『ま』のボタンが埋没していた。

「誰か来て……」



百々子はマッキーの家の前にいた。マッキーの部屋は明かりがついてた。

30分くらい立ち尽くしていると窓が空いた。

上半身裸のマッキーがタバコを加えていた。

百々子を一瞬見て、慌てて窓を閉めた。

「マッキー……そういうことなの……?」



次の日の学校。

百々子はマッキーとは違うクラス。クラスのみんなは休み時間にもなれば楽しそうに雑談している。誰か孤独に過ごしてるものは居ないかと辺りを見渡す。机に突っ伏してる男の子を見つけ、ホッとするが、少し時間がたつと罪悪感に苛まれる。

でもマッキーの教室に行くことは何よりも怖かった。百々子のことをどう思っているのかが分からないからだ。鬼のようにメールを送ったことによって気味悪いと思われてるか、家まで押し掛けて危ないやつと思われてるか、はたまた弁明しようと少しは考えてくれているのだろうか。

家にいるときと同じだ。孤独は思考を支配する。人は楽しいという表現をするとき、嫌なことを忘れられると言うが、それがどれ程人間にとって必要なことなのかを理解した。百々子は考えても仕方ない、と思うが思考を反芻し、考えても仕方ないんだ考えても仕方ないんだというイライラを募らせて身震いをする。その事を誰かに見られることを恐れて両腕を強く抱く。誰か助けて。

「携帯電話が壊れてメールが見れなかったって言って。昨日のことは何もないって、女を家に上げてなんかないって言って。マッキー……」

か細い声が漏れる。


「どうした?須貝、体調悪いのか?」

いつのまにか授業が始まり、化学の先生から心配の声を受ける。

「体調悪いので……帰らせてください」

鞄を持って教室を出る。家に帰っても誰もいない。結局は孤独の場所でしかないのだ。でも、集団の中の孤独よりは気が紛れる。思考を止めて眠りにつきたい。ベッドの上に寝そべってもどうせ寝れるわけがないのは薄々気づいていた。頭の中の声は止む気配を見せない。一人でいれば頭の声に集中してしまうことも。

階段を下りると百々子は外から声がするのに気がつく。この場所は、この声は、この時間帯に教室にいない不良はマッキーしかいない。

上履きのままで外に出ると例の女達とマッキーがいた。出てきたところでなにができるわけではない。

「マッキー……」

それしか百々子の言葉はでなかった。

マッキーは友達と話しているテンションのまま百々子に言う。

「別れよう」

百々子には府に落ちた言葉だった。ただ、再び歩き出すことは出来なかった。足を持ち上げることが出来ないのだ。神経が通っていないのではないかと思うほど固くなっている。

「おまえキモい」

続けて出た言葉がさらに百々子の胸を刺す。憎しみもあったが、自分が劣った人間なのだと悟った。自分が回りと違うということが本能的にわかった。そしてそれが自分の感情よりも支配力が上だった。間違った自分と言う存在が、須貝百々子というアンドロイドが、社会から切り離された瞬間だった。

この場にいてはいけない。この場に居るのに自分は相応しくない。この人たちと同じ空間にいてはいけない、という脳の指示を受け、ようやく最初のショックから思考が切り替わった。片足ずつゆっくりと歩き出し校門へ向かう。あまりにゆっくりなので、恐らく4人の注目を集めている。哀れみの目で見られていると思うと情けなさが更に襲ってきた。もっと速く、もっと速く動けと命じて急に力を入れると、足が固くなるだけなのだ。そして足に力を入れることしか頭にないので肩や首が垂れ下がっている。やっとの思いで校門の外に出た瞬間百々子は走り出した。鞄が落ちそうになるのを何度も何度も押さえて走る。息が声として耳にはいるほど荒くなって、自分の家がどこかなんて忘れて走る。

流されたように家につくと、家の前に杉山がいた。

「先生から連絡があって来たんだけどー、大丈夫?」

「杉山さん。杉山さん、杉山さん」

百々子は杉山のシャツを掴み頭を押し当てた。そのまま顔を上げず、立ち尽くして時間がたった。




「私わからないんです。どうすればマッキーとうまく関係を築けたのか」

「そうか、相手が悪いとは思わないんだ」

「だって私にはマッキーしかいないから」

「たぶん、そういう生き方は人間には出来ないようになってるんだと思うよ。たぶん……」

テーマは「誰かに依存するのはやめといた方がいい」です。

昨今ストーカー暴力事件みたいなのがあって恐ろしいと思ったわけですが、どうしたらそういう人間が出来上がるのだろうかと考えた結果、回りから疎外された人が依存する人を見つけた場合にストーカーになってしまうのではないかという答えを出しました。

かくゆう私も価値観の違いを感じたり一方的に貶されて疎外感を覚えることがありますが、違う人と話しているとそんなことはどうでもよくなったりします。

それも難しいときは自分を強く持って孤独に生きるしかないのかな、ちゅらいね。

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