オタサーの姫編③
「姫、今日はこれを着てよ」
サト先は慣れた手つきで百々子に衣装を渡す。百々子も何の疑問もなく着替えに入る。
いつものように家庭科室で行われるスケッチ。
百々子もモデルさながら傘をさすポーズやら、銃を構えるポーズやら、セクシーポーズもキメてくれる。
休憩に入るとタンクがカメラを取り出す。
「姫、ちょっとそのままの格好でいて」
1秒間に16回の連射音が鳴り響く。
「あ、俺も撮ろう」
しげるも携帯のカメラ機能で撮り始める。
「じゃあ今から撮影会にしようか!」
サト先も高級そうなカメラを取りだし、1時間にも及び色んな衣装を撮影した。
帰り際に、
「ねぇどんなふうに撮れたか見せてよ」
と、カメラの画面をのぞき込もうとする百々子。
タンクはそれを拒否する。
「姫。明日まで待っってくれたらきっと素晴らしいものが見れるよ。1日待っていいものを見るか、今見て半分のクオリティのものを見るか」
「1日たっても、なにか変わるわけないでしょ」
「果たしてそうかな?」
タンクは不敵な笑みを浮かべる。背後には闇のオーラが見えるような気がする。
「ま、待つわよ1日くらい……」
次の日。
家庭科室に向かう途中、百々子は廊下で異常な光景を見てしまった。
タンクが不良2人に絡まれているのだ。
「コイツめっちゃオタクじゃん!」
「お前らこの本を破いたりしたら紙代400円インク代800円請求するからな!」
「なにこれ、エロ本じゃね?」
不良はタンクの鞄の中身を漁っている。
「エロ本とか言うなぁ!!」
タンクが突然大きな声を上げる。
「なにコイツw急にキレだしたんだけど、ウケるわ」
「オタクくん、オコだぞw」
タンクは鞄を奪い取る。
「俺の宝に触るな」
不良2人はドン引きしている。
「見てただけなのに何キレてんの?キモっ」
「宝とか言っちゃうヤツ、キモっ」
「キモくても俺の世界を守りたいんだ」
不良の間をゆっくり抜けて堂々と歩くタンク。
百々子は見とれていた。
「タンクくん……」
「姫、部室に着いたら例のものを見せるよ」
タンクがどこか男らしく見えた。




