"雲"の過去
高貴な母と勇猛な父。
間に生まれたカンナは、
世継ぎながら当然、厳しく当たられた。
彼の心の支えは、唯一の伝承者、カエデのみであった。
カンナ「へぇ…非伝承者って知ってるか?」
細く、鋼色に伸びる刀をちらつかせ、唐突に言った。
セイフラント「当然だ。」
刀を見据え、かつ丁寧に答える。
非伝承者とは、読んで字の如く伝承者の逆である。
ややこしいことに、
非伝承者の中にも微小ながら固有家継の遺伝子を持つ為、
非伝承者の子供でも、伝承者として生まれる、
と言ったケースも少なくないのだ。
カンナ「へぇ…俺はな…非伝承者だったんだよ。」
カンナは刀に反射して映る、
宿の照明を見ながら真剣に言った。
騒ぎのお陰で客は逃げてしまい、
宿主は不服そうにこちらを見ている。
アリア「…だった?どういう事だ!」
カンナ「……知りたいか?」
いつもの前置きが無い。
セイフラントは直感で危機を察知したのだろう、
セイフラント「もういい、重要なのは1つだ。」
一歩下がってから体制を低く、左足を下げ剣を下段に…
セイフラント「お前は俺達の…なんなんだ?」
カンナ「敵だっ!!!」
カンナの叫びと同時に、いや、叫びよりも少し速く、
セイフラントに突っ込んでくる。
セイフラント「そうか…
木製の椅子がカンナにぶつかる。
単純な構造の、軽い、セイフラントが蹴った椅子。
続け様に下段に構える剣が、カンナの左脇腹に入る。
一歩下がったのも、左足を下げ低くなったのも、
剣を下段に構えたのもこの為だ。
カンナは薄々感じていた、
大きな大きな力の差を。
~
『…お兄ちゃん、起きてる?』
「もちろんだよ、カエデ」
『今日も、疲れちゃった」
「また聞こえたの?」
『…うん』
「どうだった?」
『………いつもと同じ…あんまり良くない…みたい』
「そっか…」
『やっぱり私…悪い子なのかな』
「そんなことないよ」
『お兄ちゃん…
「もう暗いぞ?寝なくていいのか?」
『話してた方が楽しい…』
~
戦争後、おそらくずっと非伝承者だった。
伝承者などいなかった。
絶えた筈のレイン家の呪いと両親から聞いた。
あの頃は真面目だった。
妹が出来るまでは…
カンナが起き上がる。
受けた脇腹の傷を抑えているが、
カンナ「さっきは取り乱した。
次は殺るぞ…」
セイフラントが机を踏み台にして跳ねる。
そのままカンナに一直線。
ーークラウド家に伝承者が出れば、そいつは呪われて死ぬ。
避けられた剣で今度はさっきの椅子をゴルフの様に打つ。
ーーレイン家の呪いだ。そんな言い伝えがある。
椅子も避ける。飛んできた斬撃をさらに避ける。
ーーもちろんそんなことは無い。
妹がただの伝承者で、ただの病弱だっただけ。
ただーー。
セイフラント「いい動きになったな。」
ーー誰かのせいに出来るなら…
カンナ「思考は分かってる。」
ーーそれで苦が和らぐなら…
改めるアリアの静止をも振り払い、
2つの金属か無情に、ただ何度も交わる音を上げていた。
みなさんこんにちは、
福神漬けです。
朝早い投稿になりましたが、
色々あって寝れてません。
でも私は書くよ!書き続けるよ!
1人だけ深夜テンションで行くよっっっ!
…と、今後も乞うご期待。