第4話 魔竜征伐
私は魔王城跡地に現在建設中の新生魔王軍本部基地司令室にて、親衛隊長勇者アオイと共に、魔道軍団長である大魔導師ザウエルの報告を受けていた。ちなみに司令室は司令官であり魔王たる私の執務室であり、基地全体や各部隊に指示を出すための発令所である指令室とは意味が違う。なお、魔王城は既に9割方解体され、ストーンゴーレムなどの素材になっている。
「ふむ、私の旗揚げに際し、魔王領を実効支配している旧魔王軍各勢力に書簡を送ったが、反応は芳しくないみたいだね」
「ええ、残念ながら。先代魔王ゾーラムが斃れたのを良い機会だと捉え、自分こそが新たな魔王たらんとしている様です。魔王様と我ら新生魔王軍は、ぽっと出のよくわからない勢力に過ぎない、と思われてるみたいです。まあ僕と魔道軍団が従ったことで、ある程度の評価はされていると思いたかったですが……。」
「逆に魔道軍団の評価が落ちているかもしれないな。ぽっと出の勢力に屈したという事で。」
ザウエルは眉を顰めて頷いた。私はおもむろに、執務机の上に開いた世界地図を見遣る。その地図には、北、南、東の3つの大陸が描かれていた。このうち東の大陸がもっとも大きく、南の大陸が一番小さい。
この南の大陸こそが、今現在新生魔王軍本部基地が存在している場所で、人類社会からはバルキーゾ魔大陸、この大陸の住人からはバルゾラ大陸と呼ばれている土地だ。先代魔王の侵攻が起こる以前、魔物たちはこの大陸に閉じこもり、戦国時代さながらに争いあっていたらしい。
今現在、魔王領は北のアーカル大陸、東のコンザウ大陸にまで広がっている。バルゾラ大陸を統一した先代魔王が、張り切って侵攻を行い、そこまで領土を無理矢理に広げたらしい。ただし先代魔王が勇者によって討たれてそろそろ1ヶ月。それぞれの大陸に向かった侵攻軍の統率が乱れ、進軍は停止するどころかコンザウ大陸では人類側の反撃により、戦線を押し戻されつつある。
私は新魔王としてアーカル大陸の侵攻軍には侵攻の一時停止と亀のように閉じこもっての防衛戦を、コンザウ大陸侵攻軍には占領地を放棄してアーカル大陸侵攻軍との合流を指示した。しかし先ほど口に出した通り、その結果は芳しい物ではなかった。アーカル大陸侵攻軍もコンザウ大陸侵攻軍もこちらの命に従わず、無謀な戦いを繰り広げて被害を拡大しているとの報告が、使者に出した魔道軍団の魔道士から上がっている。
ここでアオイがぽつりと呟く。
「魔王様、舐められてる。ガツン、と一発やっちゃったら?一応兵力も数はそろったでしょ?」
「僕もそれが良いかと思いますね。ここで1つ、魔王としての『威』を示しておいた方が良いでしょう。」
「ならば目標とするべきは、この勢力だな。」
私は地図の1点を右手人差し指の爪先で指し示す。そこにはバルゾラ大陸の東側に連なるカルトゥン山脈があった。そこには魔竜の一族の本拠地が存在する。魔竜の一族は、旧魔王軍における一大勢力であり、魔竜軍団はアーカル大陸侵攻軍の主力でもある。
そして今現在魔竜軍団の軍団長である魔竜将オルトラムゥは、魔王の座を狙っている者たちの中で最右翼だ。支配している領域は魔道軍団を配下に収めた新生魔王軍の直轄領よりも広く、更にその領域を広げるべく、私を含んだ競争相手の領土を削り取ろうと周囲に対して無差別攻撃を行っている。オルトラムゥ当人の能力であるが、勇者アオイに倒された先代魔竜将ギャリオルゥに、勝るとも劣らない強者であるらしい。
アオイが眉を顰める。
「魔竜……。正直な話、先代魔王よりも私にとっては相性的に厄介な相手だったかな。空からの吐炎での地上掃射モドキの攻撃で、こっちの攻撃は剣がまともに当らないし、魔法での応戦が主になったから。
それでも普通の魔竜は魔法でなんとかなったんだけど……。ギャリオルゥ相手には、結局3日に1度しか使えない必殺の聖剣技を叩き込まないといけなかった。」
「ほう、聖剣にはそんな機能があったのか。」
「キーワードを唱えて聖剣を振ると、斬撃の威力が飛ぶの。それも普通に聖剣で攻撃する威力の10倍、ううん、もっとそれ以上のパワーで。……聖剣はあいつらに持っていかれちゃったから、もうその技は使えないけど。」
その話を聞き、私は作戦を決める。もっとも作戦と呼べる様なものでは無いが。
「……となると、ゴーレムとかの兵力は連れていかない方がいいな。飛行できる巨鳥型や巨竜型のゴーレムも無くは無いが……。私、アオイ、ザウエルの3人で真正面から力任せに叩き伏せよう。思い切り暴れて、力の差を思い知ってもらうとしよう。
それにちょうどいい。相手には申し訳ないが、ついでに私の戦闘訓練相手になってもらおうか。」
「了解、わかったわ。」
「……僕もですか。となると、本部基地の守りはゼロに任せるのですね。」
「そうなるな。奴にも良い経験になるだろう。」
先代魔竜将をアオイたちかつての勇者パーティーで討つことができたのだから、中~遠距離攻撃手段を数多く持つ私ならば、当代の魔竜将相手でも本気で全力で当たればそう苦戦はしないだろう。私たちは早速、魔王親征の準備にかかった。
そして今、私たちはザウエルの転移魔法でカルトゥン山脈まで一気にやって来た。この山脈の奥地に、魔竜たちの本拠地が存在する。だがそこは流石に結界で守られており、直接そこへ魔法で転移することは叶わない。
アオイが私の顔を見て、訊ねてくる。
「私が先代魔竜将を倒したときは、この辺から山中に分け入って歩いて相手の本拠地まで行ったけど……。歩いて行くつもり?」
「いや、相手を呼び出すつもりだけどね。」
私は『コンヴェイ・シンキング』の魔法を広域に用い、自らの意思をカルトゥン山脈全域に伝達した。
『魔竜将オルトラムゥ及び魔竜軍団に告げる。私は新たなる魔王、ブレイド=ジョーカーである。いちいち口上を述べるのも面倒だ。こうして親征してきた以上、もはやそんな段階では無いしな。
だから要件は1つだけだ。私に従うか、滅びるか選べ。以上だ。』
「……相変わらずの、馬鹿みたいな魔力量ですね。」
「まあね。……お、早速来た。」
あきれ返った口調のザウエルに応えながら、私は目を遥か山脈の稜線に遣る。そこには100体近くの魔竜の群れが、こちらめがけて飛んでくるのが見えた。実際はもっと数がいるはずであるが、幼竜や若年の竜は連れて来なかった様だ。それでもなかなかの数が集まってはいるが、ただし編隊も組まず、漫然と集まって飛んでいるだけである。
私はザウエルに訊ねる。
「……戦術の『せ』の字も無いが、あんなもんなのかね?低空進入するなり、こちらの魔法攻撃に備えて少数の編隊に別れて飛ぶなり……。第一、先ほどの宣戦布告?で、こちらの魔力量が馬鹿みたいに多いことは分かっているだろうに。」
「……慢心してるんでしょう。これまではそれで圧倒できていたわけですからね。」
「慢心か。私もそれには気を付けないといけないな。いい反面教師になってくれた礼をするとしようか。」
魔竜の群れは、ぐんぐんと近づいてくる。私はそちらの方向へ手を差し伸べ、『スタン』の魔法を広域に使用した。30~40体ばかりの魔竜が、まとめて麻痺状態になり落下する。可能であれば魔竜は戦力として取り込みたいので、できる限り殺さないように『スタン』の魔法を選択したのだが、落下の衝撃で死ぬやつも出そうだ。
更にザウエルの『サンダー・ボルト』の魔法が、そしてほぼ同時にアオイの『シャイン』の魔法が炸裂する。10体近くの魔竜が落雷に打たれ、感電して麻痺し地上へ落下する。別の10体弱が閃光に眼をやられて盲目状態になり、脱落していく。空を飛んでいる魔竜はこちらへ届く前に、半数以上が戦闘不能になっていた。
空にいる魔竜のうち、一際大きな個体が大音響で叫んだ。
「何をやっている!炎を吐け!冷気を吐け!雷を吐け!それに使える者は、こちらも魔法で応戦しろ!」
なるほど、たぶんアレが当代の魔竜将オルトラムゥか。私は『レジスト・オール』『レジスト・マジック』の魔法と、『全耐性強化』『耐状態異常』『抗魔』の魔術を重ねて自分たちに行使する。そこへ上空の魔竜たちが吐いた炎や冷気、雷が降り注ぎ、『マジック・ミサイル』『ファイヤ・ボルト』『アイス・ボルト』『ライトニング・ボルト』等々、様々な魔法の集中砲火が浴びせられる。
しかし私が有り余る魔力に物を言わせて行使した防御魔法と防御魔術により、相手の攻撃は私には一切効果が無い。ふと目を遣れば、アオイもザウエルもほとんど傷を負っていなかった。私は念のために『コンティニュアル・ヒーリング』の魔法で長時間僅かずつ回復する効果を2人に与える。
と、私の超感覚に何やら引っ掛かる物があった。
「……アオイ、地下から敵が来る。ザウエルを守ってやってくれ。ザウエルはアオイの支援を。私は相手の親玉を叩いてくる。」
「了解。」
「わかりました。」
私は背中にある重力制御用の翼を広げ、重力を操って一気に飛翔した。視界の隅に、地下から魔竜の一種である地竜がポコポコと沸いて出るのが見える。だがアオイはさすが勇者だけあって、地竜どもを物ともしていない。
その間も、上空の魔竜の群れからの攻撃は、私に集中してくる。だがそれは私に対し、毛筋ほどの傷を与えることもできていない。数瞬の後、私はオルトラムゥとおぼしき魔竜の眼前に到着した。魔竜の長は叫ぶ。
「……やめろ!効いておらん!……貴様が魔王を僭称している馬の骨か。なるほど、魔力だけは大した物があるようだな。」
「僭称ではなしに、本当に魔王なんだがね。ちょっと不本意な事情の結果ではあるが。君が魔竜将オルトラムゥかね?」
「そうだ、俺がオルトラムゥだ。いいだろう、俺自ら貴様の相手をしてやる。貴様を噛み裂いて、その血肉を喰らってやろう。」
私はオルトラムゥの姿を、頭の天辺から尻尾の先まで仔細に眺めた。他の魔竜に比して、体躯が倍以上はある。その首元と尻尾の根本に、何やら装飾品の様な物を着用していた。首飾りと尻尾飾りだろうか。いや、前足の手首にあたる部分と、その指にも何やら宝石の嵌った腕輪や指輪がはまっている。ただの宝飾品ではない証拠に、強い魔力が感じられた。
オルトラムゥが大きく息を吸い込む。おそらくは吐炎を使うつもりなのだろう。
「くらえ!」
やはり吐炎だった。だがその熱量は尋常ではない。ただの炎ではない、プラズマ流とでも言うべき物が、その口から吐き出される。私自身はたぶんこの炎に耐えられるだろうが、今着ている衣類は灰になってしまう可能性が高い。それはもったいないので、『プロテクション・フロム・ヒート』の魔法と『耐高熱結界』の魔術を同時行使した。
プラズマの吐息が、私に直撃する。その吐炎はまるでガラス板にホースで水をかけた時のように、周囲に飛び散って行き、私自身には何ら影響を与えていない。無論、着用している衣類も無事だ。今着ている漆黒の長衣は、見た目は地味で質素だが、見えないところにそこそこ奢った代物である。灰にしてしまうのは惜しいのだ。
とりあえず、お返しとばかりに私は『サンダー・ボルト』の魔法を使った。ちなみに、この魔法で決めるつもりは最初から無い。少しばかり確かめたいことがあったのだ。
「これで、どうかね?」
「はっ!そんなヘナヘナ魔法が俺に効くか!」
「……ほう?」
『サンダー・ボルト』の魔法により天空から呼ばれた落雷は、たしかにオルトラムゥを捉えた。だがその雷は、オルトラムゥが身に着けている首飾りに吸い込まれるように消えていったのだ。
「なるほど。最初の『スタン』の魔法が君を捉えていたはずだったのに、君が無事で飛んでいるのは、その装飾品の守りによるものか。」
「ふん、その通りだ。この『吸魔の首飾り』の力で、俺に向かってかけられた魔法は魔力に還元され、この指輪や腕輪、尻尾飾りに蓄えられる。貴様が魔法を使えば使うほど、俺の使える魔力は増し、貴様はただ消耗するだけだ。」
「ふーん。……ふっ。」
私は鼻で笑ってやった。オルトラムゥは激昂する。
「なんだ!何が可笑しい!」
「いや。……それで勝ったつもりかね?」
「何!?……ふん、くっくっく。強がりはよせ。魔法が効かない以上、貴様に勝ち目はあるまい。」
一変して、私を嘲笑う様子を見せるオルトラムゥ。私はそれに応えて言った。
「んじゃ、試してみよう。」
次の瞬間、私の周囲に無数の魔法の矢が出現した。『マジック・ミサイル』の魔法である。いや、無数とは言い過ぎか。正確には65,536本だ。ぶっちゃけた話、魔力的にはまだまだ余裕なのだが、魔法の制御力の限界が先に来てこの本数になったのだ。オルトラムゥは、あんぐりと口を開けて呆けている。
「じゃあ行くぞ。」
「な、なに!?」
私は65,536本の魔法の矢を一斉発射した。そして発射したらまた次の『マジック・ミサイル』の魔法を行使して新たに65,536本の魔法の矢を出現させる。そうしたら即座に発射し、また新たな魔法の矢を用意。
「ちょ、ちょっと待て……!!な、なにを……!!い、いや無駄だ、無駄!!この『吸魔の首飾り』は!!な、何いぃっ!?」
「あー、やっぱり限界はあったか。」
パン!パン!パパンパン!!
何かが破裂するような、砕け散るような音が響く。オルトラムゥが身に着けていた指輪が次々に弾け飛び、次に腕輪が破壊され、尻尾飾りが粉々になった。魔力の吸収し過ぎである。そして最後に、『吸魔の首飾り』が宝石屑と貴金属の粉になって飛び散った。
オルトラムゥの狼狽した声が響く。
「ば、馬鹿な……。『吸魔の首飾り』が……。」
「これで君には私の魔法が効くようになったわけだが……。どうするね?まだ闘るならば、なんなら魔法なしで戦ってあげてもかまわないよ?」
「な!」
と言うか、私的には魔法なしでの戦闘訓練を目論んでいたので、これに応じてもらわないとちょっと困るのだが。まあ幸いなことにオルトラムゥは怒り狂い、突っかかって来た。
「ば、馬鹿にするなああぁぁッ!!」
どうやら頭に血が上っていても、完全に冷静さを失ったわけでは無いらしい。オルトラムゥは自らの魔力を振り絞り、『ストレングス』『アクセル』『プロテクション』『エンチャント』などの補助魔法を自らの肉体に行使し、私めがけて突っ込んで来た。私は拳を振るう。
「フン!」
「はぶっ!?」
私の右拳は、突っ込んで来たオルトラムゥの顔面をもろに殴打した。のけぞるオルトラムゥ。そしてそこに左拳が突き刺さる。
「ぐばぁっ!!」
「……っと。オウリャッ!」
「ぐおおぉぉっ!?」
オルトラムゥは苦し紛れに2本の前足を振り回す。私はそれを察知して体を躱し、相手の右前脚を掴まえて投げ飛ばした。オルトラムゥからすれば、悪夢を見ている気分だったろう。彼の体長は40mは優にある。その巨体が、たかだか3mの身長の私に良い様にやられっぱなしなのだ。
ちなみに私は、相手を殴ったり投げ飛ばしたりする際に、重力制御、慣性制御、見かけ質量制御を併用している。まあ、そうでなければこれだけ体格差がある相手をポンポンのけぞらせたり投げ飛ばしたりはできない。
オルトラムゥは投げ飛ばされた先の空中で何とか体勢を立て直し、こちらを化け物でも見るような目で睨みつける。
「ば、ばかな……。貴様何者だ……。」
「言ったろう、魔王だと。」
「くっ!おのれっ!」
オルトラムゥはまた大きく息を吸い込む。吐炎の構えだ。だが今度は全身の魔力を口に集中させているのが見て取れる。先ほどのプラズマの吐息に比しても、更に強力な一撃を使うつもりなのだろう。乾坤一擲の大勝負に出るつもりらしい。
私は両の腕を相手の方に伸ばす。私の前腕部には、生体粒子ビーム砲が埋め込まれている。これで相手の攻撃を真っ向から受け止めてやるのだ。
「くらえっ!ゴアアアアァァァァ!!」
「……ムン!」
オルトラムゥの口から、先ほどとは比べ物にならない、まるでビームの様なエネルギーの奔流が発射される。その威力は、炎に強い魔竜であるオルトラムゥ自身の口が焼けてしまうほどの物だ。
そして私の両腕からも、強烈な荷電粒子ビームの束が投射される。その粒子ビームは、オルトラムゥの放ったビームと真正面から激突した。私とオルトラムゥの中央の空中で、大爆発が起きる。爆発の向こうから、オルトラムゥの悲鳴が聞こえた。
「ぐぎゃああぁぁっ!?」
魔竜将オルトラムゥが、地上に向けて落下していく。その背中にある両の翼は、皮膜状の部分がズタズタになっていた。実はこれも私がやったことである。私は両腕の生体粒子ビーム砲を撃つのと同時に、額の生体レーザー砲を発射していたのだ。そしてその高エネルギーのレーザー光線が、オルトラムゥの翼の被膜を切り裂いていたのだ。
そんなオルトラムゥに、私は追い打ちをかける。背中の翼で重力を制御し、高速で相手に向かい飛んだ。そしてその胴体に、蹴りを入れる。
「ぐぼおぉっ!!」
「ダアアァァッ!!」
我々は、そのまま大地に激突した。オルトラムゥは、大地と私の蹴りとに挟まれる形になる。べきべき、とオルトラムゥの胴体から骨がへし折れる音が響いた。もはや相手は言葉もない。
「……!!……!!」
「……勝負あり、だな。」
「それどころか、勝負になってなかったと思うわ。」
地竜を片付けたアオイが、私に突っ込みを入れる。彼女は地竜の群れを殺さない様に手加減して、しかししばらくは動けない程度に叩き伏せていた。私は照れ隠しに右手人差し指の爪で、頬の生体装甲板をカリカリと引っ掻く。
そこへザウエルが引き攣った笑顔を浮かべてやって来た。彼はおもむろに口を開く。
「魔王様、戦勝おめでとうございます。いや、魔法抜きでアレですか……。はぁ……。」
「どうかしたかね?」
「いえ、魔王様との対立を避けた自分の判断が、正しかったと思い知ってるところですよ。ははは。」
「あー、アレでも全力じゃ無いんだが。どこかで全力戦闘の訓練を積みたいところなんだがね……。」
ザウエルが酢を飲んだ様な顔になる。と、ここでオルトラムゥの巨体がビクッと身じろぎした。アオイとザウエルは身構える。私はオルトラムゥに向かい、話しかけた。
「ん?まだやるかね?」
「ぐ、ぐふっ……。い、いや……。がふっ、もう……戦えん。ぐぼっ……。俺、の、負けだ……。かはっ……。ま、増してや……。アレで手加減され、ぐふっ、て、いたなどと……。ぐ、き、貴様いや、貴方、を、ま、魔王と、認めよう……。配下、の魔、竜たちも、従わせ、る。がはっ……。」
「あー。あまり喋るな。死ぬぞ?死んだら死霊魔法使ってドラゴンゾンビにして、こき使うからな?」
「そ、それ、は、勘弁、ですな。くくく、ぐふっ。」
上を見遣ると、空を飛んでいた魔竜たちが次々に地上に降りてくる。そして一斉に私に向かい、頭を垂れた。私は彼らに最初の命令を下す。
「墜落したお前たちの仲間のうち、息がある者をここに運んで来たまえ。治癒魔法をかけてやる。それが終わったら、お前たち徹底して再教育だな。今回の戦いぶり、いくらなんでもお粗末すぎると言う物だ。今から覚悟しておけ。」
魔竜たちは、更に深く頭を下げた。
こうして、魔竜将オルトラムゥと魔竜軍団が、私の麾下に加わった。更にその主力が魔竜軍団であるアーカル大陸侵攻軍も、こちらの言うことを一応は聞くようになった。アーカル大陸侵攻軍は、亀のように守りを固めさせ、戦線を維持させている。
二次的な要素として、最大勢力であった魔竜軍団を下したことで旧魔王軍勢力からの評価が上がり、近隣の弱小勢力などが新生魔王軍へと投降してくる様になった。それらは正面戦力としてはさほど当てにはできないが、それ以外の面でも人手はいくらあっても足りないので、ありがたく受け入れている。
だが弱小勢力はともかく、規模の大きいところはすんなりこちらに従うわけもない。さっさと旧魔王軍勢力を全て併呑してしまいたいのが本音だが、何事もそう簡単には行かないんだろうな、とも思う。だがコンザウ大陸侵攻軍だけは急ぎ撤退させ、アーカル大陸侵攻軍と合流させなくてはならない。それにはコンザウ大陸侵攻軍の主力となっている勢力を、今回と同じように落としてしまうのが手っ取り早い。
「コンザウ大陸侵攻軍の主力は、魔獣軍団か。よし、次の目標は決まったな。」
さて、次はどんな方法で陥落させてやろうか。
魔王様、実力の一端を示しました。まだ全力じゃないんですけどね。