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水色のあくま

「・・・ぃなあ、寝てても」


「顔がニヤついてて変態みたいですよ、あるじ


「おやおやルシー。そんなことを言っていいのかな?ルシーが大切にしている魔法少女ワズのフィギュア、売り払ってもいいんだよ。誰に売ろうか、海獣レヴィアタンなら高額で買い取るかな?」


「なっ…!卑怯な…!」


なんだか、話し声がする。この声は会長と、誰だろう。それにしてもだれかが髪を梳いているその感覚が気持ち良くて・・・そういえば、あれ、ここどこ?何してたっけ、とりあえず起きなきゃ・・・


「ん…?」


頑張って重いまぶたを開けた私は、顔には出さないものの驚いた。


「か、かいちょう」


「おはよ、日和」


「あ、おはようございます」


反射的にあいさつを返した私の頭を、撫で続ける会長を見ていると、意識を失う前のことを思い出した。


「あの、会長。契約って…」


「うんその話ね、その前にはい、水だよ。飲んで」


「ありがとう、ございます」


差し出されたコップを受け取り飲み干した。ほんのりはちみつの香りがする水が渇いた喉を潤す。と、飲み干したコップを見て、手からコップを離してしまった。


「どうした?」


「・・・」


無言でコップを拾い上げ会長に見せる。コップの側面にはクリクリした『 目 』が付いていた。しかもその目は、イタズラが成功した子どものように楽しそうにコップを動き回っている。


会長はあちゃーといった感じでコップを受け取った。


「ああ、ごめんね。たまにこういうイタズラする悪魔がいるんだ。日和がイヤなら消すけど」


あまりにもさらっと言われたその言葉に息を呑んだ。


「消すって…殺すってことですか?」


「うん。殺すっていうより本当に消すんだけどね、その存在を跡形もなく消滅させるってこと」


今まで元気に動き回っていた目は、まぶたを閉じてブルブルと震えている。


「イヤじゃ、ないです。驚いただけで。だから消さないで下さい」


「わかった、消さない。とりあえずコイツは…」


会長はコップの縁を摘んで引っ張った。するとズルズル…と水色の小さなぷよぷよしたものが出てきた。目だけではなくよく見ると手と足のようなものもある。


「ルシー、これ捨ててきて」


ぽい、と会長は隣に立つ中性的な美人に水色を投げた。美人はなんで私が、面倒くさいと言う顔を隠さずにため息をつく。


『捨ててきて』


会長が放ったその言葉に、心臓がドクンとはねた。


「あの、その水色ちょっと貸してください」


「どうぞ」


美人から渡された水色は手のひらの上で身体を小さくしてまだ震えていた。この水色は涙を流しているらしく、手が濡れていく。


「きみ、ここから出て行きたい?」


背中だと思われる場所をさすりながら水色にたずねる。すると、水色はかすかだが頭をふるふると横に振った。


「そのくらいの小物だと、外に行けばすぐに他の悪魔のエサになります」


そう美人が教えてくれた。


「そっか…。会長、この子捨てなきゃだめですか?」


「いや?捨てるなり飼うなり、日和の好きにして良いよ。害のある悪魔でもないしね」


会長はずっと変わらずにニコニコと自分と水色を眺めている。


「じゃあこの子、ここにいても良いですか?」


「もちろん」


「きみ、良かったね。ここにいても良いって」


水色はペコリペコリとお辞儀を繰り返した(ように見えたがプルプルと揺れていたため真相はわからない)。そして猫が飼い主にじゃれつくように手にまとわりついてきた。


「とりあえず、ソイツは水槽にでも入れとこう」


会長が手をひらりと一振りした瞬間、立派な水槽がベッドの隣の机に現れ、手のひらにいたはずの水色が水の入っていない水槽で揺れていた。


「すご…」


「ふふ、僕はこれでも上位の悪魔だからね。

さて、本題に入ろうか。僕と日和が交わした契約、どこまで覚えてる?」


「会長が私のあの願いを叶えてくれるって言って、その代償が何かが分からないです」


「じゃあ契約のおさらい。僕は、日和を愛する、という日和の願いを叶える。

そしてその代償として僕は、『 日和 』を貰った」


「・・・私?」


それは、よくある魂を貰ったとかそういうことなのだろうか。よく分からなくて首をかしげる。


「そう、日和。まあつまりは、日和は僕のお嫁さんになったってこと」


上機嫌な笑みを浮かべた会長はとんでもない言葉を言い放った。




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