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どうして?

放課後、いつものように呼び出された。場所は取り壊しが決まっている立ち入り禁止の旧体育館倉庫。あまりにも王道すぎて、笑いはしないが笑える。


薄暗い廊下を進み、塗装の剥げた古びた扉の前に着いた。甲高い悲鳴のような嫌な音を響かせながらゆっくりと扉を開ける。


「君が、木城 日和ちゃん?」

「へぇ、ほんと。カワイイじゃん」

「聞いてた以上だな」


扉を開けてそこにいたのは、想像していた人達とは違った。みるからにこの学校の生徒じゃない、ジャラジャラ大量のアクセサリーを身につけてこれまた大量のピアスをつけたほっそい眉毛のいかにもなヤンキーが6人、煙草から紫煙を上げながらニヤニヤと笑っている。

これはさすがに危ないと、無意識のうちに後ずさる。

2、3歩下がったところでトン、と背中が何かにぶつかった。


「…え?」


そこに立っていたのは最初、体育館倉庫にいると思っていた人達。


「逃げられるとでも、思った?」


嘲笑うような声と同時に突き飛ばされ、倉庫の中に倒れこんでしまった。


「いたっ…」


はっと顔を上げると、卑しく嗤う男たちに囲まれていた。慌てて起き上がろうとしたが、あっと言う間に圧倒的な体格差で床に押さえつけられて全く身動きがとれない。唯一動かせる視界に捉えた彼女たちの顔は、とてもとても楽しそうだ。


「ふふ、さすがに怖い〜?」

「でもさあ、あんたが悪いんだからね。何されても平気な顔して。そろそろつまんなくなってきたし」

「なにより、会長はあんたの味方するし、ね」


愕然とした。たったそれだけの理由でこんなことをするの?平気なわけない。嫌だ。やめて。

だけど、心に浮かんでくる言葉たちが、口から出てくれることはなくて、ただ開閉するので精一杯だった。


「ねえ、もうすぐ塾の時間だよ」


1人が可愛らしい腕時計をみて言う。


「もうそろそろ行こっか。

そーゆーことだから。本当は見ていたいんだけど、私たちはこれで」


彼女たちはひらひらと手を振って扉に手をかけた。

またあの嫌な音を立てて扉が閉まっていく。


「う…そ、まってっ!!」


私の声が聞き入れてもらえるはずもなく、


「じゃあね、せっかくだしあんたも楽しんだら?」


無邪気な声は笑いながらそう言って───無情にも、扉は完全に閉じた。


「さぁてと。じゃあ早速やりますか!」


異様なほど興奮をにじませた男の声に、血の気が引いた。

自分よりはるかに体格のいい男からのしかかられる恐怖から自分でもわけがわからないくらい、めちゃくちゃに暴れる。


「ちょ、まてまて!」

「日和ちゃ〜ん、暴れんなって」


ガッ…


「いてっ!」


爪が男の頬を引っ掻いたようで、うっすら赤い線ができている。

それまでただひたすら楽しそうにニヤついていた男の顔が、豹変した。

右頬に男の拳を叩きつけられ、体が、視界が、揺れた。

彼女たちから身体的な暴力を受けなかったわけではないが、細身の自分と同じ女の子から殴られた所で我慢できる程度の痛みだった。


「ふざけんじゃねーぞ、ああ!?」


はじめて受けた吐きそうなくらいの痛みに呆然としていると、次は腹に衝撃がきた。

内臓が押しつぶされるような感覚に、息が詰まる。それから何度も何度も、意識を飛ばしたいのに飛ばせない程の痛みが絶えず襲いかかる。


「おいおいそのくらいにしとけって。楽しめなくなるだろ?」


「チッ」


仲間に諌められた男は、もう一度私を殴ると再び床に引き倒した。


服に手がかけられる。


もう、抵抗することなどできるわけがなかった。



痛い、苦しい、嫌だ


私が、一体何をしたというのだろう。


私の何がいけなかった?


私はどうすればよかったの?


ああ、もう・・・限界だ


握りしめた手からたら、と何かが垂れる感触がした。見えないけれど、それはきっと赤い色をしているんだろう。


「…、助けて…っ」


男たちも聞き取れない程の、小さな小さな呟き。のはずだった。


だけど・・・


「いいよ、助けてあげる」


優しくそう言う声がしたのと同時に、のしかかっていた男が吹き飛んだ。


耳元で囁かれたその言葉を、囁いたその人を理解する前に抱き起こされて肩にふわりと暖かい何かがかけられると、後ろから大きくて冷たい手で視界を塞がれた。


「ちょーっとグロいことするから。ごめんね、耳も塞いでて?」


「ぁ…はい」


言い聞かせるようにそう言われてすぐに耳を塞ぐと、良い子、と頭を撫でられた。

多分、そんな状況ではないんだろうけど、守られているような温かいその感覚に身を委ねた。


もういいよ、と声と同時に体を反転させられて、目の上から手が退いた。いまいち焦点の合わないまま視界を巡らすと、体育館は悲惨な有様だった。

積み上がっていた古いマットや跳び箱は粉々になり、壁には多くのひびが入り、なにより、男たちが全員ボロボロになって倒れていた。部屋中が男たちのものであろう血で薄暗い部屋の中でもわかるくらい真っ赤に染まっていた。


「大丈夫だよ?殺しはしてないから」


そう言って、日和の目の前で楽しそうに笑っているのは


「かい、ちょう・・・」


そう、会長━︎━︎藤野 仁だ。

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