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きっと大丈夫

「さぁてと、行きますか〜」



住み慣れた光の差さない世界の出口に立ち、うーんと伸びをしたのは、悪魔侯爵 ウェルジーン・ヴィスタリア。

競争の激しい魔界でそれなりの地位を得て、土地をもらって、優秀な弟子もいて、自由気ままに生きて、幸せだったはずだった。


だけど、永遠と言えるほど長い生を生きている中でいつだって心が満たされることはなかった。だから、友人の提案に乗っかり人間界で暮らしてみることにした。


このただの気まぐれだった選択が、自分のこれからを大きく変えることになるとは知らず、鼻歌まじりに境界を越えた───










ぴぴぴ、ぴぴぴ…


私、木城きしろ 日和ひよりは無機質な電子音で意識を浮上させられた。


「…はあ」


朝は、嫌いだ。長い長い一日が始まってしまう。


こうやって何も変わらない毎日を一体どれだけ過ごせば良いんだろう。


でも、いくらそんなことを考えたって何か変わるわけでもないから、のそのそと起きあがってあくびを噛み殺しながら服を着替える。


紺色のセーラーを袖に通してふと鏡をみると、見慣れた部屋と愛想笑いもできない鬱々した顔の自分が映っている。

昨日ジュース缶をぶつけられた額を見ると思ったよりも深く切れていたようで傷の周りが少し腫れている。適当に軟膏を塗ると、これまた適当に絆創膏を張り前髪を整えて隠す。


『母さん』に傷なんか見つかったら面倒だ。

きっと、すごく嫌そうな顔をする。また、何かしでかしたのか、迷惑だって。いや、きっと気になんて止めもしない。

だって私は───



「よしっ」


ふつふつと浮かんできた嫌なことを振り切るように頬をパンッと叩いて気合を入れる。


今日も1日、頑張ろう。


折れそうなくらい軋んでいる心の悲鳴には気づかないふり。一度認めてしまえば、『自分』が壊れてしまいそうだったから。



一通り家事を済ませると、鞄をもって靴をはく。


「…いってきます」


返してくれる人なんていないと分かっているのに、自分でも本当に馬鹿だと思う。


大丈夫、大丈夫だから、と自分に言い聞かせて学校へと足を進めた。





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