表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

西村あずさ -希望-

 大通りが見えてきたことで、私は安心した。後ろを振り返っても追う者の気配は無い。もう大丈夫かな。でももしかしたら、何十分の一かの確率で私が走った経路をあの店員も偶然選んで追いかけているかもしれない。数学が苦手な私にはその確率を計算することなんて出来ないけれど、それはおそらく随分小さい確率のように思えた。しかしながら、万が一を考えると不安になるため、息も整ってきたこともありもう一度だけ走ってみることにした。左手に白いヒラヒラとしたスカートに水色のシャツ、その上からベージュのジャケットを着たマネキン人形が店頭に立つ洋服屋さんが見えて、そのまま視界の後方へと遠ざかっていく。ちょっとかわいらしい服だったな、なんて思いながら私は走る。そういえば、私が着ているこのコートもあのお店で買ったんだっけ。大通りから少し入った所にあるため、客入りが少ないせいか服の値段もそう高くない。高校生や大学生には嬉しい価格設定で、特に大学二年生ぐらいの頃はよく足を運んだのを覚えている。卒論が落ち着いたら、また服を買いに出掛けてみようかな。そう思うと、今日もちょっと頑張れるような気がした。そんなことを考えながら大通りの歩道に飛び出すと、キキキッとブレーキの軋む音がした。見ると、驚いた表情のおばちゃんがその音を発した自転車に跨っていた。

「ビックリするでしょ!」

「すみません、ごめんなさい」

 ペコリと謝って私が再び走り始めると、おばちゃんは全くもう、と呆れたように私を睨みつけて去っていく。後方で、何度かキキキッという音が響いた。確かにいきなり飛び出してきた私も悪かったかもしれないが、案外危ない走り方をしているのはあのおばちゃんもだったんじゃないかと思えた。そう思うと、怒られ損だった気がしてきて少し陰鬱とした気分になる。パッと後ろを振り返るが、もうおばちゃんの姿は見えなかった。それと同時に、あの店員の姿も見えないことに安心する。もう少し。もう少しで駅に着く。私はそう自分に言い聞かせ、酸素を求めて喘ぐ体にムチを打った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ