『いじられリーダー誕生』
やっと正気を取り戻した四人は、全員が同じ思いを抱いていた。
「えっ?私がリーダー、ですか?」
「ええ。文句の付け所がないわ。なんせここにいる誰よりも強いし」
「麒麟も伝説上の生物で格好良いし」
「……わたし達の中心にいるし」
「巨乳だし──ぶべぁっ!!ご、ごめんなさい。ほんとの理由は、ここがリンの神空だから、ってことです。はい」
満場一致の結果に少し戸惑ったが、しかし正直に言えば、リンも少しだけリーダーに憧れていた。でもあまりにも他の四人がリーダーになりたいと言うものだから、一歩引いていたのだった。
「そ、そこまで言われるのでしたら引き受けさせていただきます」
まんざらでもなさそうな表情を浮かべるリンを見て、全員がほっと胸を撫で下ろした。どうやら機嫌は治ったようだ。そこで俺は話題を変えるために、ある提案をした。
「よし。リーダーも決まったことだし、なんかチーム名みたいなの考えないか?」
「なんかどんどん子供のお遊び感が出てきたわね……」
「それにマジになってたくせに今更」
「………激しく同意」
「うっ!まあ、そうだけど………」
「チーム名、ですか。どういうのがいいんでしょうか?」
全員がしばらく考え込み、タケシが最初に口を開いた。
「ここは無難に『四神戦隊』とかか?」
「ちょっと待ってください!それ、私入ってないんじゃないですか!?リーダーなのに!」
「いやいや。あえて『シシンジャー』っていうのもありかもよ?」
「だからなんで四神なんですか!?なんで五神じゃ駄目なんですか!?」
「そんなのダサいじゃない。それよりは『なんとかフォース』とかの方がよくない?」
「『なんとかファイブ』って言ってくださいよ!なんで四にこだわってるんですか!?なんでそこまで除け者にするんですか!?」
「………あえて全部漢字で『平安守護四神』、とか」
「トラちゃんまで………!?い、いじめ、格好悪いですよ~。うえええぇ~ん!!」
流石に悪ふざけが過ぎたか、リンは落ち込んでしまった。
「まあまあ、悪かったって。でもさ俺達、四神って呼ばれることは多くても、五神って呼ばれることはほとんどないじゃん?」
「そうね。麒麟って言ったら戦隊モノでいうところのゴールドとかプラチナみたいな立ち位置だから、あまり馴染みがないんじゃないかしら」
「それに漢字も難しいしね」
「………首の長いキリン、想像するから」
四人はそれぞれフォロー(?)を入れる。
「うぅ………。でも、私だって皆さんの仲間なんですから仲間外れにはしないでくださいよ」
「そうだよな。うん。じゃリン。なにか案ないか?リーダーなんだし、ここはピシッと決めちゃってくれよ」
「えっ?そ、そうですね──」
むむむっ、と考え込んだリンが何か思い付いたように顔を輝かせた。
「『五芒星』なんてどうですか?ほら。私達の五行思想にも関連しているし、シンプルでいいんじゃないですか?」
おお~。っと四人が歓声をあげる。
「なかなか格好良いじゃない」
「うんうん。さすがリーダーだよ」
「………すごい、良いと思う」
「よっ!天才!日本一!」
「や、やめてください!照れちゃいますよ~」
なんやかんやで俺達はこれから『五芒星』と名乗ることになった。
と言っても、特に使いどころがあるわけでもなく意味も全くないのだけれど。つまり、リンは四人にただからかわれていただけだったのである。
リンがそのことを知るのはもう少し後の話であった。