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暇神様は今日も京都で暇してる  作者: いけがみいるか
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『闇に沈む』

「面白いことを思い付いたんだっ」

「「「「じゃ、却下で」」」」

「まだ何も言ってないんだけどっ!?」


 本日も暇してる俺達は炬燵にもぐりながらだらだらとしていた。ちなみに最近はずっとトラがリンに抱き抱えられるように座っているので、席を気にすることはなくなった。

 むしろ俺がトラのポジションに入ってその大きなクッションに後頭部を沈めたいのだが、そんなことをすると俺の命が地獄の血の池に沈められそうなので血涙を流しながら諦めた。


 と、そんなことよりも、リューがまためんどくさいことを思い付いたようなので俺達全員で拒否ったのであった。


「勝手に話を終わらせないでよ!」

「モノローグにツッコミいれないでよ!?」


 俺、心読まれすぎじゃね? そんなに顔に出るのかね?


「はぁ。では、まずは話だけでも聞きますか?」

「聞くだけね」

「……(こくっ)」


 だだをこねるリューを見かねたリンが何とか全員をなだめ、リューの話を聞くことになった。


「この前の鍋で思い付いたんだ」

「「「「却下で」」」」

「なんでさっ!? まだ話は終わってないってば!!」


 炬燵をバンッと叩き立ち上がるリュー。だが、寒かったのか、すぐに座りなおして話を続けた。


「鍋と言ったら闇鍋をしないとダメでしょ!」

「何のルールだよ。どこで決められたんだよそんな愚かなルールは」

「主にぼくっ!」

「なら仕方ないな」

「仕方なくないでしょうが! てか、何なのあんた達のその共通認識はっ!?」


 スズメも立ち上がりながらツッコミを入れた。そして、再び炬燵に潜りなおした。なんだ? ツッコミすると一回炬燵から出ないといけないのか?


「……闇鍋、旨い?」


 そんな中、トラがリンに尋ねる。すると背の小さいトラを抱き抱えるように座っているリンの顔を見るために上を向く。その自分を見上げてくるトラの姿に萌えたリンは頬を緩ませながら答える。


「そうですねぇ~。基本的に、恐ろしい味になると聞き及んでますねぇ~」


 リンの口調はふわっふわだったのであまり恐ろしさは感じなかったが、確かにこのメンバーで闇鍋をすると恐ろしいどころの騒ぎじゃなくなるかもしれない。

 俺はそのことに気付き、さっき賛成したのを取り下げようとする。


「わりぃ。リュー、やっぱ今のなし──」

「じゃ、闇鍋したいの手ぇ上げて~!」


 俺の言葉に重ねるようにリューが声を張り上げ挙手した。そして、それに釣られるようにトラも静かに手を上げた。

 だ、だが、多数決では賛成2、反対3だ。これなら──


「……リン~」

「はいっ! やりましょう!」

「「最悪だっ!!」」


 トラの涙目の姿を見て突き動かされたのか、リンはわざわざ両手を上げた。闇鍋ばんざいっ! みたいになってやがる。


 少数派となってしまった俺とスズメは頭を抱えながら立ち上がり、そしてゆっくりと座りなおした。


~~~


「闇鍋にも一応ルールがあるよな。どんなのにするんだ?」

「フリーダムで」

「おま、もう少しはルールを考えろよ。死人が出たらどうする」

「神がこの程度で死ぬわけないじゃん。バカなの? 死ぬの?」

「神はバカだと死ぬのかよ……」


 知らなかったわ~。てことはリューは何回死んだんだろうか。とは言わない。俺、優しい。


「すごいバカにされてる気がするけど気にしないでいこう。じゃ、みんな好きな具材を持ち寄ること。その間にタケシは鍋の準備しといて」

「結局準備は俺なのな……」


 言い出しっぺなんだからお前がやれよとは思ったが、別に突っ掛かるほどのことでもないので、俺はおとなしく鍋の準備を始める。

 その間、全員部屋から出ていき、それぞれがそれぞれの具材の調達に勤しんだ。


 そして俺は切に願い、祈る。どうか、食い物を持ってきますようにと。


~~~


「はい。始まりました。第一回、神空闇鍋パーリィー 混沌魔境の食物戦争! 今回の実況はぼくリューが行います。で、解説はタケシです。さぁ、タケシ。一言どうぞ」

「タイトルから不安しか感じ取れないっ!!」


 何故かどこぞのバラエティ番組みたいな始まり方をした闇鍋パーリィー、もとい闇鍋パーティの解説にされた俺は鍋の火以外の明かりが一切ない真っ暗な部屋の中で大仰に立ち上がりツッコミを入れる。

 だが、暗闇なので誰の顔もはっきりと確認出来ず、恐る恐るこけないようにゆっくり座りなおした。


「じゃ、早速だけど、順番に食材を入れていこうか。まずはぼくから入れるね」


 そういってリューは食材を入れ始める。しかし、やはりその食材は確認出来ず、「トポンッ」という音が聞こえるだけだ。一応固形物を持ってきたようではあるが、油断は禁物である。何せ、この企画の発案者であるリューが普通の食材を入れるはずがないからだ。


「なら次は私が入れますね」

「……わたしも、入れる」


 リンとトラは同じ場所に座っているので二人同時に食材を入れ始める。


「次は、俺か」


 俺はこの間の鍋の時に使わずに残っていた食材を放り込む。せめて俺くらいは真面目にしなければならないからだ。


「最後があたしね」

「いや。お前は入れんな」

「よいしょっと」

「話聞いてもらえませんかねっ!!」


 俺の制止の言葉を聞き流しやがってこの今回一番の爆弾娘がっ!! しかも結構な音してんじゃねえか。「ドポンッ」ってかなりでかい音がして、俺は肩を震わせる。もう手遅れだ……。


「さて。どうやら全員入れ終わったみたいだし、出来上がるまで今回の参加選手にそれぞれ一言ずつもらおうかな」

「なんか勝手に選手になってる!?」

「ではリンちゃん、どうぞ」

「頑張りますっ」

「一体何を!?」

「じゃ、次はトラちゃん」

「……食べる」

「普通ッ!!」

「最後にスズメたん」

「逃げたいわ」

「激しく同意!」


 あれ? なんか俺飛ばされてね? とは思ったが、まあ良しとしよう。概ねスズメと似たようなもんだし。


「それじゃぼくは楽しみます、とだけ付け加えようかな。おっと、どうやら出来上がったようです」

「えっ? 早くね!? まだ食材(?)入れて三分も経ってないけど?! カップラーメンも出来上がらないけど!?」

「それは、あれだよ。大人の事情ならぬ神様の事情だよ」

「無理矢理だなっ!」


 だが、リューの言う通り、鍋は出来上がっていた。


 いや、出来上がってしまった、と言うべきだろうか。そして、闇鍋パーリィーは開幕してしまったのであった。


~~~


「じゃ、まずは誰から食べる?」

「当然言い出しっぺのお前だろ」

「いや、ここはあえてダンディーファーストで」

「ダンディーファーストって何!? 初めて聞いたんだけどっ!?」


 俺は猛烈に抗議したのだが、何故か全員が俺を見つめ、いや睨んでいた。毒味はお前の仕事だと言わんばかりに。


「くそ……。覚えてろよお前ら……」


 俺はそんな視線に耐えきれず、戦々恐々の面持ちで鍋に手を伸ばす。

 ぐつぐつと煮えたぎる鍋は、俺には地獄の釜に見えていた。


 そして、鍋から取り出したものは──。


「なんだ、これ……?」


 黒い固まりだった。しかもでかい。


「何、って見りゃわかるでしょうが」

「わっかんないから聞いてんだよっ!? てか、これお前のかよ!! ならわかったわ。木炭だろこれ!」

「失礼なこと言わないでよ。さつまいもよ」

「どの辺りがっ!?」


 こんなの絶対わかんねえよ。だってさつまいも感ゼロだもの! 見た目はただのダークマターだもの!!


「鍋にはじゃがいもとか入れるでしょ。だからさつまいももいけるかと思ったのよ。でも流石に生のまま入れるのは気が引けたからちょっと火を通しただけ」

「通しただけって、バカなの!? よく見ると中まで真っ黒なんだけど!? 食ってみたらジャリジャリすんだけどっ!?」

「それでも食べるタケシ、格好良いよ!」

「うっせぇ! 次お前食えよリュー!」


 俺は口の中にあるダークマターを水で流し込む。正直吐きそうでたまらない。


「うむ。仕方ないな。タケシが言うならやるしかないよ。では二番リュー。いっきま~す!」


 リューは宣誓するように手を挙げてから鍋に箸を突っ込んだ。やめろ。勢いつけんな。あっつい湯が飛び散るだろうが。

 そしてリューは箸で鍋をかき混ぜるようにぐるぐる回す。やめろ。マナーがなってなさすぎだろ。


「どぅるるるるる、でん! 君に決めたぁぁ…………ぁ"」


 リューはまた勢いよく箸を鍋から出し、箸の先にあった具材を見て、静かに鍋の中に戻した。


「こらこらこら! 一度掴んだモノは食えよ。最低限のルールだろ!」

「ぐ、ぐぬぬ。木炭を食べたタケシに言われると言い返せないけど、これはないよ……」

「同情はするが、情けはかけん。諦めろ。そしてそれを入れたバカを呪うんだな」

「いや…………これ入れたのぼくなんだけどね」

「自業自得じゃねえかバカがっ!!」


 リューの皿に乗っていたのは、自分が入れたという大福だ。粉は剥がれ落ち、どろどろになっているが、一応大福なのだ。


「ぬぐぅぅぇぇ……。えげつない味がするよぉぉ……」

「それをあたしたちに食べさせようとしたあんたの罪は重いわ。しっかりと罪の味を噛み締めなさい」

「どの口がそれを言うんだスズメ……」


 木炭を放り込んだこいつの罪の味を思い知らせてやってください神様。あ、神様俺達だった。


「……次、わたし」

「気を付けてくださいねトラちゃん。確実にヤバイのありますよ、これ……」


 食欲旺盛のトラは物怖じせずに鍋に向かう。リンはそんなトラを案じたが、トラは気にせず鍋から具材を取り出した。


「……うげ」

「食べろよ、トラ……。まだマシだろ食材なんだから」

「……まあ、木炭よりかは……」

「さつまいもよ」


 あくまでさつまいもと言い張るのかこいつは……。こいつの頭の中では木炭がさつまいもに見える呪いでも掛けられているんじゃなかろうか。


 トラが取り出したのはリンゴだ。ちなみにこれを入れたのはリンである。しかし、一個まるごと入れるのはどうかとは思う。


「……食べられる。一応」

「死んでも美味しいとは言いそうにない顔してるけどな」


 普段は無表情のトラだが今に限ってはとても渋い顔つきをしていた。


「なら次はあたしの番かしらね。正直、今でも全力でこの場から立ち去りたいけど…………まあ、あんた達が見逃してくれるわけもなさそうだし、仕方ないわね」


 スズメが肩を落としながら鍋から取り出したものは、トラの入れたものだった。


「う、うなぎ……。しかも蒲焼き……」

「トラウマ再発警報発令!!」


 リューが目を閉じ耳を塞ぐ。だがスズメは立ち向かわなければならない。


「トラ。最悪の形でこいつと再会することになったあたしに何か一言ない?」

「……がんば」

「他人事だと思ってぇぇぇえ!!」


 (トラ)様ありがとう。スッとしたよ。スズメは泣きながらうなぎを完食した。


「最後が私ですか。嫌な予感しかしませんね……」


 ごくり、と喉を鳴らしてリンも鍋から具材を取り出した。


「これは………………だいこん?」


 まさかここに来ての普通の食材。全員がうわぁ、空気読めよ。という視線をリンへと送る。それ、入れたの俺だけどね。


「な、何なんでしょう。この複雑な感情。普通の具材で嬉しいはずなのに、すごい仲間はずれになったみたいな気持ち……。面白味も何もない、ただただ普通の食材に素直に喜べない私がいます……」


 その気持ち、少しはわかる。俺が言うのも何なんだけど。


 そんな闇鍋はこのあとも続く。


 俺はあの後、肉(と思われる炭)、焼き(過ぎて炭になった)魚、海老(だったはずの炭)を食べ。

 リューはカステラ、梨、まんじゅうを食べ。

 トラは白菜、ミカン、椎茸を食べ。

 スズメはうなぎ、ウナギ、鰻を食べ。

 リンは豆腐、鶏団子、春菊を食べた。



「ごめ……無理……」


 最初に俺が崩れ落ちた。いや、当然だろ? 炭しか食ってないんだから。


「ははは~。うなぎが一匹、うなぎが二匹……がくっ」


 そして次にトラウマでスズメが潰れた。


「うぷ、まんじゅう、こわい……」


 甘いものばかり食べたリューがどこぞの落語みたいな言葉を残して自爆した。


「……闇鍋恐るべし」


 と、言いつつ、闇鍋をつつくトラと。


「幸運スキルでもあるんですかね、私……。しかし、これはある意味闇鍋を楽しめていないのでは……?」


 外れを一切引くことなく、若干甘くなったり苦くなったりはしているが、ごく普通の食材を食べ続けていた。


~~~


「……完食」

「ごちそうさまでした」


 そして三つの屍を生み出した闇鍋はようやく終了した。

 中身は炭以外のものは全て食べ尽くされていた。そして最後まで外れを引かなかったリンがどこか寂しそうな顔で鍋を片付けるのであった。


 朦朧とする意識の中、俺は一人愚痴をもらす。


 神様、だから食べられるのを入れてくれっていったじゃん。炭は食べ物じゃないということを、(スズメ)様に教え込まなければならないと、強く思った、今日この頃の出来事であった。


 あ、あと、これだけは言っておくぞ。これは訓練された神様だからこそ出来る暇潰しだから、決して一般神(いっぱんじん)、及び人間の人は真似をしないように!!


「こんなアホみたいなこと、真似するバカはいないわよ」


 …………だから、ナチュラルに心読まないでください。

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