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暇神様は今日も京都で暇してる  作者: いけがみいるか
15/30

『青春のその先』

「どうでもいいこと聞いていい?」

「どうでもいいなら聞かなくてよくね?」


毎度のことながら、リンの神空に集まった俺達にリューがいきなりそんなことを言ってきた。


「ぼく、ちょっと気付いたことがあるんだけどさ」

「あれ?俺の言葉は無視ですか?聞こえてますか~?」


華麗なまでに俺をスルーしたリューは話を続けた。なんだろ、泣きたい。


「ぼくってさ。青龍じゃん」

「いきなり何なのよ?そりゃそうでしょ」

「ぼくってさ。春を司ってるんだよね」

「そうですね」

「ってことは、青、春。つまり青春ってならない??すごくない?!」


本当にどうでもよかった。


「青春。いい言葉だよね~。人間にとっては最高の季節だよね~」

「まあ、言葉自体は確かに良いわよね」

「……良いイメージばっかり」

「そうだな。トラの言う通り明るいイメージだよな」


うんうん、と誰もが頷く。なんかそういうの羨ましいな。俺もなんかないのかな?


「ありますよ?」

「……なんで今ナチュラルに俺の心読んだの?」

「顔に書いてありましたから」


リンは笑いながらそう言う。俺、そんなに顔に出やすいタイプだったっけ?


「……よく見てる」

「ちょっ、トラちゃん!何を言ってるんですか!こ、これくらい普通ですよ」


普通、ではないと思うな。流石はチートキャラだな。と、今はそんなことより。


「あるのか?俺らにも?」

「あっ、はい。ありますよ。スズメちゃんにも、トラちゃんにもです」

「あたしにもあるの?」

「……わたしも?」


お約束、リン先生のお勉強コーナー開始。


「そもそも青春、というのは緑が芽吹く時期、まだまだ未熟でこれから成長していく時期ということで、夢や希望に溢れ活力のみなぎる若い時代を言います。青年時代という奴ですね。年齢で言えば16歳から30代前半にあたります」

「予想以上に長いっ!」

「高校生くらいまでだと思ってたわ」


スズメの言葉に俺も頷く。でも確かに社会から見れば30前半はまだまだ未熟なのかもしれない。


「次にスズメさんのですが、朱夏(しゅか)というものがあります」

「……初耳」

「ぼくも~」


口には出さないが俺も今初めて聞いた。


「それで朱夏は前後半ありまして、前半は30代前半から40代後半で、朱夏後半は50代後半までとなってます」

「前後半制なの?あたしの時代」

「人生の真っ盛りの時期ですね。この年代の前半では、子育てを頑張ったり、仕事を頑張ったりして一人立ちする年代で、後半は今までの努力の成果を結集させて、次の時代に繋げるんです」

「……だが、人生というのは、そんなにうまくいかない」

「おおぅ!急にどうしたよ?何かあったか?」

「……言ってみたかっただけ」


常にクールな娘なので、たまにジョークをぶっこまれるとちょっとビックリするな。


「確かにトラちゃんの言う通りですね。でもこれはあくまでプラスイメージでの話ですから。そこはあまり深く考えずに次にいきましょう。次はトラちゃんのですよ。トラちゃんは白秋(はくしゅう)です」

「……きたはら?」

「友達の名前を呼ぶみたいに言うなよ。白秋さんって言いなさい。偉い詩人さんなんだから」


俺もその名前が即座に頭をよぎったけどさ。


「白秋は50代後半から60代後半。余生を楽しむくらいの時期ですね。トラちゃんが言った白秋さんの名前もここから取ってるとされます」


ここでふと気付く。


「なぁ?白秋の終わりが60代後半、ってことは……」

「はい。タケシさんは玄冬。60代後半からすべてです」

「すげえおじいさんおばあさんじゃん……」


青春、とは似ても似つかないな。まあ、悪い意味ではないので落ち込むというのもおかしな話だが。


「それにしても、青春より先があるなんてねぇ~」

「そうよね。毎度リンの知識の多さには驚かされるわ」

「……脱帽」

「いやぁ~それほどでも~。えへへ」


皆に褒められ照れるリン。その時俺はふと、どうでもいいことが気になった。


「俺達って今なに時代になるんだ?」

「「「えっ?」」」


俺の疑問に皆が、う~んと考え始める。


「青春……じゃないかな?この姿だと」

「いや。年齢的に考えて玄冬だと思うんだが」

「神と人を一緒に考えちゃアレでしょ。ここは朱夏でいいんじゃない?」

「……間を取って、白秋」

「トラちゃんの姿で白秋というには厳しい気もしますね。あはは…………ふぅ」


やっぱりというか、当然というか。俺達はそれぞれの司るものが好きなのだった。


その後もやいのやいのと討論していると、いつの間にかリンの姿が見えなくなっていた。


いや、いた。部屋の隅に移動していただけだった。リンは壁に向かって体育座りをしながら、なにかぶつぶつと呟いていた。


「また、仲間外れです……。いい加減影が薄すぎて消えてしまうかもしれません……。しかも消えても誰にも気付かれないかもしれません……」

「「「「…………あっ」」」」


またしても、リンの扱いがアレだったことにようやく気付く。


俺達は四人でアイコンタクトをとった。


(あんた励ましなさいよ。あんたが余計なこと言うからこんなことになったのよ?)


(俺かよ?!そんなこと言い出したらリューが一番最初にこの話始めたんじゃねえか。リューが励ませよ)


(ホワーイ!?言いがかりだよ!ぼく今回何も悪くないよ、珍しくね)


(……間をとってスズメが謝る)


(なんでっ!?しかも謝るになってるし!)


結局、全員で励ますことになった。スズメは文句たらたらだったが。


「だ、大丈夫だってリン。ほら?なんつーか…… 。そのぅ……そう!お前のは俺達を超越した何かなんだよ」

「そうそう。青春よりももっともっと良いものなんだと思うよ」

「そ、そうよね。ええと~、こ、こういうのはどう?黄金時代、ていうの。あなた黄龍の名も持ってるし、ぴったりじゃないかしら」

「……金属性は、わたし」

「トラ、今はそれは置いといて!お願いだから空気を読んで!」


相変わらずマイペースですねトラさん!落ち着き具合が半端じゃないッス。


しかし、そんなマイペースが功を奏したのか、リンは少し笑った。


「そうですね。黄金時代。ということは私とトラちゃんの時代って感じがします。これはこれでアリかもしれませんね」


そこがポイントかよ。とまあ、理由はどうあれ、立ち直ったようでよかったよ。


そうして俺達は大したオチも付けずに、今日も今日とて、くだらない話を繰り広げ続ける。


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