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暇神様は今日も京都で暇してる  作者: いけがみいるか
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『五行の理 ~相克編~』

あのあと、さらに別空間に連れて行かれて(おこな)われたリューのお仕置きタイムが終了し、リンが説明を再開する。


……それより、リューの角に引っ掛かっているあの布製品の説明をしてもらってもよろしいでしょうか?えっ、()れるな?危険?はぁ、わかりました。ここは俺の危険察知能力を信じよう。でもなんで皆気にしてないの?!特に本人っ!


「では再開しましょう。それで五行には相生(そうしょう)相克(そうこく)というものがあります」

「意味は?」

「相生は仲良しな相手という意味で相克は少し苦手な相手、ということです」


聞き慣れない言葉に疑問を抱いた俺に、リンはすぐにわかりやすく解釈して教えてくれた。リン、案外先生とか向いてるんじゃないだろうか。問題は怒ると何するかわからないところだけど。……ほんとなんなのアレ?


俺の注意がリューの頭に向いていると、リンの話を聞いたスズメが「あぁ」と納得したように言う。


「あたし、タケシのこと嫌いだし、こういうのを相克って言うのね」

「ちょっ!嫌いとかはっきり言わないでもらえませんかね?!結構普通に傷付くから!うわぁーんリン先生ェェ!スズメがいじめるぅ~」

「よしよし。大丈夫ですよ~。でもですね、それは仕方ないことなんです。スズメさんは火、タケシさんは水の属性ですから」


優しく諭され、なんかボケた自分が勝手に恥ずかしくなってきた。その恥ずかしさを誤魔化すためにひとつ咳をついた。


「ごほんっ、で、まあ、とりあえず火は水に弱い。ってことだな」

「………ん。それは常識」

「てことは、火のスズメちゃんを苦手としてるのは………ぼくっ!?燃やされちゃう的な!?」


反省モードだったはずのリューがすぐにいつもの調子に戻って、ややオーバー気味にリアクションを取っていると、リンは首を横に振る。ていうか、そのリアクションよりその角に引っ掛かってる白い布が気になって仕方ない。


「いえ、スズメさんを苦手としているのはトラちゃんです」

「………スズメ、怖い」

「なんでよ!?」


まさかの事実に気を(ゆる)めていたスズメがいつもより食い気味にツッコミを入れた。


「金属は熱に弱い傾向がありますから。リューさんが苦手とするのはスズメさんではなくトラちゃんです」

「………がお~」


トラは棒読みのまま、『襲いかかる虎』のポーズを取った。


「きゃああああ!!全っっ然怖くない!! むしろ可愛い!もふもふしたい!」

「落ち着け。その考えには全面的に同意見だが、トラの奴、すげえ勢いで爪を研いでるぞ。抱きつこうものなら引き裂く、みたいな目してんぞ!」


悲鳴かと思えばただの黄色い声だった。俺が少しでも反応が遅かったら、このままトラに抱きついて、そのまま引き裂かれていただろう。角に引っ掛かってる布とともに。

リューの方はそこまで考えていないが、トラは少しリューをライバル視しているところがある。まあ、昔から対を成す存在として扱われてきたしな。

そんなやりとりの中でも平静とリンは説明を続ける。


「木は金属製の物に()られることから苦手な相手、相克となっています。ちなみに私が苦手としているのはリューさんです。時折(ときおり)ほんとめんどくさいことがあるので……」

「うおっほい!さらっと言ったけど、なんか結構きっつい言葉が聞こえてきたよ!?」


今度はリューが不意打ちを受けたように、リンの方を勢いよく振り向く。 その動きに合わせて白い布もふわりと動く。


「私は土属性ですし、木は土の養分を吸いますからね」

「別に吸わないよ!?………他のナニかは吸いたいけど」

「……こらこら。どこ見ながら言ってんだお前は?けしからん」


リンの胸を凝視するリューに俺はツッコミを入れる。リンもサッと自分の胸を腕で隠す。しかし、リューはニヤニヤしながら否定した。


「やらしいなぁ~タケシ~。私は別にリンちゃんのそのおっきいパイオツを吸いたいなんて、少ししか思ってないよ~」

「いや、少しでも思ってたら問題だろ……。で、違うって言うなら何を吸いたいんだよ?」

「くちびる」

「どっちも大概じゃねえか!」


リンは身の危険を感じたのか、かなり距離を取っていた。リューは「ジョークだよジョーク。………………二割ほど」と後半小声で言っていた。半分以上本気なんじゃねえかよ。と心の中でツッコんでおいた。お前、さっきあんな目にあっときながらよくまあそこまでボケられるものだよ。そして今も……。というか、あれはなにかの罰なのか?継続中なのか?


「て、ことは順番的に、俺はリンが苦手ってことだな」


そんな疑問を抱きながら、少し落ち着いたリンを確認して俺は話を再開させた。


「そうなりますね。土は水を濁らせてしまいますから」


何故か少し悲しそうにこちらを見ながら言った。どうしたのだろうか?普通そういう表情をするのは俺の方なんじゃないか?

なんだかちょっと変な空気になったので、冗談でも言って空気を変えるか。


「そうか。ならもう二度と近付くんじゃねえぞ!」

「そんなひどいっ!!」


いやいや。そんなマジにならなくても………って、そういやリンにはこういう冗談がきかないんだった!!やっべ!泣きそう。どうすれば──


「じゃああんたもあたしに近付かないでよ?じめじめして気持ち悪いのよ」

「えっ!?いきなり何……っ!そ、そうか。なるほど。ってぇ!最悪だなお前!」


「………スズメ、暑苦しい。近付かないで」

「待って!あたしなにもしてないんだけどっ!?」


「ふむ。なるほど。よ~しよし。トラちゃ~ん。怖くないからこっちおい──ごめんなさい、やっぱいいです。なのでその爪しまってください」


スズメは俺を、トラがスズメを、トラをリューが拒絶して、『そういうノリ』という空気が作られた。何故かトラとリューの関係性が若干違ったが。


それではっとしたリンは涙をぬぐい、


「すいませんリューさん。わたしと少し距離を置いてください」

「遠距離恋愛的な?私があなたの全てを奪ってしまうから的なぁ?」


よ、よかった。ちゃんとネタだってことをわかってくれたようだ。スズメに感謝だな。俺はアイコンタクトでスズメに礼を伝えた。スズメはそっぽを向いたが、ちゃんと伝わってはいるようだ。ふぅ、よかっ──


「いえ、そうではなく。生理的に無理なんです」

「………えっ?………うん。ほんとごめん……ね?」


え、えげつねええええええ!!!何でマジな表情で言うんですかリン先生ェェ!!若干泣いてたから余計に嫌がってるように見えるじゃん!!うわっ!あのついさっきまでお仕置きを受けてもすぐに平然としているいつも能天気なリューが激しく落ち込んでいらっしゃるぅぅぅっ!!


リンはなにをどう勘違いしたのか、いっそ全員本音を暴露しあおう、というノリになってるのだと思ったらしい。何で間違えるかね……。あっ、みんな本音しか言ってないからか。

その事実はさらにリューをへこませる原因になったのは言うまでもないだろう。


──このあと、リューの回復まで小一時間ほどかかったのであった………。 むしろ一時間で回復したことを褒めるべきかもしれない。

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