『五行の理 ~属性編~』
俺は、ある疑問を抱いていた。なんとなく、話を流されて聞く機会を失っていたことだ。しかも誰もそのことを気にしていないようだったので、もしかして知らないのは俺だけなのかと感じてしまった。だから余計に聞くことが出来なかった。しかし、また同じような話題が出てきた時、的確に対処できなかったら……。
聞くのは一瞬の恥、知らぬは一生の恥ともいう。加えて俺達神の一生は、人間とは比べようもないくらいに長い。ここは思いきって、話を聞いてみることにした。
「なあ、ところで『五芒星』を決めた時にちょろっと言ってた五行、ってなんだ?」
ピシャリッ、と音が鳴ったような感覚がした。全員が、いや。リン以外の三人が不自然な形で動きを止めたのだ。
「あんたねぇ………。あたしたちと五行思想はきってもきれない間柄なのよ?それを忘れるなんて、神としての自覚が足りないんじゃない?」
五行思想?なんだか宗教っぽいな。
「じゃあスズメは知ってるんだな?教えてくれよ」
いかにも神を馬鹿にしたような態度にカチンときたので、スズメを睨み付けながら聞く。
「あっ、ぼくも知らないから聞きたい」
「………(こくこくっ)」
それにリューとトラも便乗した。ほら見ろ。知らない派の方が多いじゃねえか。…… って、お前らも知らなかったんかいっ!?地味に安心したわ。
スズメは呆れたようにこちらを見る。
「あんたたちはまったく………。仕方ないわね。リン、教えてあげて」
「ってお前も知らねえんじゃねえか!!」
「ってスズメちゃんも知らないんじゃん!!」
俺とリューは同時にツッコミを入れた。
「………はぁ。スズメ、だめだめ」
深くため息を吐くトラ。
「な、なんで私が………?」
いきなりとばっちりを受けたリン。
「ど、ド忘れしただけよ!聞けばすぐ思い出すわ。それにせっかくリーダーが決まったんだし、リーダーに頑張ってもらいましょうよ。さっ、よろしくねリーダー」
そして言い訳をして、全てをリンに丸投げするスズメだった。なんて奴だ。それでも神かよ。
「こ、こういうときだけリーダー扱いされるんですね………。いいですけど」
丸投げされたリンは、うぅ、と半泣き状態だったが、しかしやはりというか、律儀に説明を始めた。
「こほん。では、五行、つまり五行思想とは万物は木火土金水、五つの種類の元素からなるという説のことです。ちなみにこれは私たちにも当てはめられます」
「つまり?」
「私たちにはそれぞれ属性がある、ということです」
「なにそれかっこいい~」
リューは目を輝かせた。こいつ、こういうの好きだからな。しかし属性か……。たしかに格好良いな。って俺も大概こういうの好きだな。
「私は土、タケシさんは水、リューさんは木、スズメさんは火、トラちゃんは金といった感じです」
「ぼく、木属性なんだ!?水かと思った」
「まあ、青色ってなんだか水属性っぽいもんな」
「でも龍って山にある池とか沼に棲んでるイメージよね」
「………海から出てきたら、龍じゃなくて海蛇っぽい」
それもそうだ。なんかそれだとリヴァイアサンみたいになるよな。
「なるほど確かに。そういや七つの珠から出てくるドラゴンもナメ○ク星人が作ったんだったね。沼とナメ○クってなんだか似てるし」
「似てねえしそういう意味でもないし例え俺らが神だからといって、どうどうとパクっていいってわけじゃないから自重しろ」
でもシェン○ンは緑色だし、木属性っぽい気がしないでもないな。なんて思ったりしたのは内緒だ。
「………ところで、金、ってなに?」
トラは疑問を口にした。たしかに、一言『金』と言われても何のことだかわからないな。するとリューが「はいはいっ」と手をあげた。
「お金じゃないっ?」
「違います。金属のことです。例えば刀とかがそうですね」
「ソッコーで修正入った!」
リューのボケはリンに瞬殺された。というか、この流れでお金はねえだろうよ。お金属性ってなんだよ。お嬢様キャラとか、そういうやつか? 札束で頬を殴るのか?それとも買収?それか、金に物をいわせて大量の武器や兵士を操るとかか?……なんか、普通に強そうだな。
「そしてこの☆の五つの頂点にそれぞれ位置付けることで、星の形が出来ます」
「それで五芒星か」
「はい。そして上から右回りでさっき言った木火土金水となります」
「私が頂点!!やっぱリーダーはぼくなんじゃない?って……あっ、リンさん……いえ、リン様……や、やめっ──」
リューはまた調子に乗って卓袱台の上に乗る。数秒後リンに殴られる。そして土下座して謝る。学習能力ねえなお前は。
「リーダーは私です!絶対に譲りません!」
……あれ?怒ってた理由そっちなの?卓袱台に乗って行儀が悪いってことじゃなかったの?どんだけリーダーに拘ってるの?色々聞きたいことはあったが、とばっちりは受けたくなかったので、大人しく静観することにした。