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文学

スラム街の少年とタトゥー職人

作者: 千路文也

 アフリカのスラム街で大人相手にも無双する少年がいた。少年は何故、戦い続けるのか。それはお金が無いからだ。可哀想な事だが、スラム街出身で金持ちの人間はいない。ほとんどが、ならず者となってしまうのだ。


 少年はスラムのタトゥーショップにいた。まだ十三歳というのに、タトゥーを掘ろうとしているのだ。無論、スラム街のタトゥーショップで接客上手な人間はいない。皆、客の意見など聞かない連中ばかりだ。


「いらっしゃい」


 店主はきさくに挨拶をしているが、目は笑っていない。スラム街で一番の喧嘩野郎が店に来て警戒しているのだ。


「右手にタトゥー掘ってくれ」


 少年は右手を差し出す。細い腕だ。細い体でタトゥーを入れるのは、あまり似合わないと店主は言おうとした。しかしだがだった。少年は鋭い目つきで店主を見ている。店主は口を開いたが、言おうとした言葉を喉の奥にしまい、少年の右手にタトゥーを入れた。丁寧に毛彫りしたドラゴンである。最強の生物だ。スラムで無双する少年にピッタリだろうと思って、ドラゴンタトゥーを入れたのだ。しかしだがだった。少年は気に入らない様子で、店を破壊した。店のライナーマシーンやシェイダーマシンを。


「何が気に入らなかったんだ!」


 店主は怒鳴った。


「俺はドラゴンが嫌いだ」


 そう、少年は言う。しかしだがだった。ドラゴンは最強の生物であり、ロマンあふれる若者の男子は全てドラゴンが好きだと言うのに。


「なぜだ。ドラゴンは最強だぞ」


 怒り心頭の店主である。


「最強は挑戦しない。俺は弱くて挑戦する奴が好きだ」


 少年はそう言い残して去って行った。最強はそれ以上強くなれないから嫌いだという少年の考え方だった。一人残された店主は自分の意見が必ずしも正しいのではないのだと思い、それからは客の言う通りにタトゥーを掘るようになったそうだ。




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