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自作小説倶楽部 第6冊/2013年上半期(第31-36集)  作者: 自作小説倶楽部
第33集(2013年3月)/「蛙」&「蜜蜂」
33/63

08 かいじん 著  蜂 『蜂の一刺し』

 私は夫の裁判で証言台に立つ事になっている。検察側の証人として。

 私が夫に(あの事)を聞いたのは、その時に一緒にいたとされる運転手の方がその後、あんな事になったりして、何と無く夫の事が心配になったからだった。しかし今度の裁判で、私がその時に聞いた事を証言すれば、夫は 非常にまずい立場に立たされる事になる。私は、まず間違いなく、その事で夫を、今の家庭を失う事になるだろう。蜜蜂は一度刺すと針が抜けなくなり、抜ける時は毒腺ごと抜けるのでその為に死ぬ事になると言う。私も今度の証言によって、とても多くのものを失う事になってしまうのだろう。実のところ、本当にそうするべきなのか、そうする事が、どれほど正しい事なのか、心の中ではまだ迷いが残っているのだけれども、それでも、私は今度の裁判で、真実をありのままに証言しようと考えている。

   ・・・

 1976年(昭和51年)2月4日、アメリカ上院で行われた多国籍企業小委員会(チャーチ委員会)公聴会において、同国の大手航空機製造会社が航空会社に自社の旅客機を受注させる目的で、日本を含む数カ国の

政府関係者などに巨額の賄賂をばら撒いていた事が明らかにされた。その後の公聴会で、航空機製造会社副社長が、日本で同社の非公式な代理人を努めていた、大物右翼活動家に同社からコンサルタント料として

21億円の資金が渡った事、さらにその内の5億円が同社の日本の販売代理店になっていた、商社を通じて当時の首相に渡った事などを証言した。この公聴会の内容を受けて、衆議院予算委員会に証人喚問された

政商と呼ばれた男は「記憶にございません」を連発した。(注・正確には「記憶がありません」と答えた)結局、当時の首相だった前首相をはじめ、多くの関係者が逮捕、起訴される事になったが、発覚から捜査の進展の過程で、何人かの事件関係者が急死している。

 チャーチ委員会公聴会から10日後に、この事件を追っていた、日経新聞の記者が自宅で急死、死因は心不全とされた。さらに4ヵ月後の6月、事件発覚後に大物右翼活動家と同じ病院に入院していた通訳が59歳で、肝硬変で急死した。

 大物右翼活動家がA級戦犯容疑で巣鴨に収監されていた頃からの知り合いだったとされ、高名なGHQ G2部長の秘書的役割を努めていたとされている。(実際に著作の翻訳などを手掛けている)航空機製造会社との橋渡し役だったと言われ、この人物の急死は捜査陣に大きな衝撃を与えた。

 7月27日に、前首相が逮捕されたその4日後の8月1日、数回に渡る商社からの現金受け渡しに秘書とともに現場に立ち会ったと思われる運転手が、参考人として事情聴取を受けた後、自宅に「後、2,30分で帰る。」と電話したのを最後に消息をたった。

 翌朝、埼玉県の林道で、この人物が車内で排気ガスを吸って死んでいるのが発見された。自殺と断定されたが、かなり多くの不審な点が指摘されている。


・母親は自宅付近でこの人物の車らしき車の進路を幌つきトラックが塞ぎ

 車が左折して迂回しようとするとトラックも左折して行ったのを目撃している。


・外傷は無いと発表されたが、妹は足に外傷と血痕があるのを目撃、係官からは

 搬送中の損傷と説明された。


・遺体は2ドア車の後部座席で発見され、運転席側のドアはロックされていなかった。


・新品のゴムホースの入手先がわからない。助手席に埼玉県の地図が広げたままに

 なっていたなど……。


 埼玉地検は死亡解剖を要求したが、解剖令状を取る要件が無い事を理由に却下された。いずれにしても、この人物が夏休みに入った子供たちを遊びに連れて行く約束は果たされる事は無かった。享年42歳。

   ・・・

 5年後の1981年10月28日、この事件の裁判で元首相の秘書夫人が、夫が5億円の受け取りを認める発言をしていた事を証言、これに元首相は決定的に不利な立場に立たされる事になり、2年後に懲役4年の実刑判決が言い渡される事になった。

 この証言は、(蜂の一刺し)として、当時、大きな話題となった。

    (この話はフィクションです。実話に似てるけどw)

     了

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