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短めに二つに分割しました。
どうやら、俺が手紙を入れ間違えたらしい。司と美衣ちゃんの席は、都合10年以上隣同士だ。これも”主人公補正”のお陰だろうか。焦っていた俺は美衣ちゃんの机に手紙を放り込んでいたようだ。
保健室で俺は怪我の治療をしている。大したものではないのでさっさと済ませてしまおう。
「ごめんなさい、私がついていながら……」
しょんぼりしている夏瀬くんに、「気にするな」と手をひらひら振る。考えるべきことは過去ではなく、これからのことだ。俺は、自分の拳に消毒液を振りかけながら考える。
(実際、どうあれ俺は美衣ちゃんを泣かせたわけだからこれはヤバイぜ……。司も”金輪際近づくな”なんて言ってたしな……)
考えれば考えるほど八方塞がりな気がする。
「とにかく、橘に誤解を解く必要があるね。仁自体は橘に敵意も悪意も無いわけだから、話せば分かってもらえると思うんだが……」
晃が言葉を濁す。
「藤堂くんがそれをさせないでしょうね。彼、自分のことを”騎士”か何かと勘違いしている節がありますし」
棘のある夏瀬くんの言葉に「あぁ、そうだね」と晃が返す。今日の夏瀬くんは、彼らに対して普段より辛辣だ。何でだろう?
「仁、君は明日は一日中橘にまとわり付くぐらいの覚悟で彼女に謝り続けろ。謝って、許してもらったら事情を説明しろ。橘だって君の事を本気で嫌ってるわけじゃないはずだよ」
「それって……かなりキツくねェか? アイツら、ゼッテー邪魔するぜェ!?」
俺もそう思う。多分、いやきっと総出で邪魔してくるだろう。美衣ちゃんと話をするなんてかなり……いや、ほぼ無理な気がする。それでも……。
「今がどん底だからな。失うものなんてもう無いぜっ! 今すぐ行って謝れってのは無理だが、明日ならやれる気がするぜ!」
いつものように親指を立てる。これがなくては俺じゃないような気がする。
「私たちまでついていくと話が大きくなりそうですから、待っていることにしますわ。御武運を」
明日は俺一人の戦いだ。いや、今日も俺一人だと思っていたのだが……どっちにしても、明日は本当に一人だ。心が折れている暇も無い。もう此処ですることもない、今日は帰ろう……と言いたい所だが、部活動がある。頑張ろう。
「よし! 取りあえず明日のことは明日だ。今からでも部活動だぜ! 今日は河川敷だ! 河川敷に行くぜっ!!」
俺が勢い良く立ち上がると、晃も「継続こそ力なり、か。今日ぐらいは休んでもいいと思うんだがね。ま、頑張ろう」と肩を竦めて席を立つ。他の二人も同様に立ち上がった。
「そうだ、清十郎! この前行った幼稚園からお礼の手紙が来てるぜ!」
「マジかよ大将ッ! いやー無理して逆立ちのままケイドロした甲斐があったってもんだーッ!」
「まぁクローズアップされているのは殆ど炎燈寺くんですけどね……」
はははっ、とみんなで笑いながら部室へ向かう。清十郎が「あいつ等にナックルペンデュラムあげたら喜ぶか?」という言葉に、晃が「やめときなよ、父兄から苦情が来るよ?」と突っ込む。そんな日常がまたやって来た。大丈夫だ、俺はやれる。明日だってどうにかなる。そう思うと、この絶望的な状況もどうにかなるような気がしてきた。
またいつもの朝だ。司と美衣ちゃんの話し声がこちらまで聞こえてくる。しかし、いつもと違うものがある、俺の心情だ。以前の怒りに震えていた俺とは違い、今は不安で押しつぶされてそうだ。食事も喉が通らず、いつもより随分早く、玄関で二人に備える。
(おおおお落ち着け、俺! いつもの挨拶だ! 何を怖がることがある!?)
手汗が酷い。気分もひどい、心なしか頭痛もする。思わず玄関でスクワットしてしまう自分が情けない。
『ほら司くん、学校行くよー!』
美衣ちゃんの声とともに扉が開く音が聞こえた。今だ!!
「ようっ、おはようっ! 美衣ちゃん! 司!」
虚勢を張って元気良く家から出て二人に挨拶する。
「…………」
「ぁ……」
司は何も言わない。それどころか顔すら向けない。長い前髪で表情が読み取れないため怒っているのかどうかも分からない。美衣ちゃんは最初こそこちらに注意を向けたが、すぐに顔を背けてしまった。無視だ、どうしようもないほど。
俺は唇をかみ締め、勇気を振り絞る。ここでやめたら申し訳が立たない。
「どうしたんだ二人とも! ほら見ろっ! 太陽があんなに元気だぜ!!」
緊張して清十郎みたいなことを言ってしまった。笑顔を作って二人に近づくが――
「――失せろ。どの面下げて挨拶してるんだ? 馬鹿は一日経つと全部忘れちまうのか? ならもう一回言ってやる。”俺たちに近寄るな”」
睨み付けられた。司の怒りは未だに冷めていないらしい。いや、俺の態度が再び火を点けてしまったと言うべきか。
「……そんなこと言うなよー! 美衣ちゃん、おはようっ」
ここで引いたらダメだ。ダメなんだ。端から見ていても痛々しいほどの空元気だ。
美衣ちゃんは少し困ったように俺、司、自分の手と目まぐるしく視線を泳がし――
「――ごめんね、仁くん……。当分、話したくない。出来れば、近寄らない、で」
覚悟は出来ていた。大丈夫だ。確かに心を痛む、しかし覚悟さえしていれば耐えられないでか!!
「じゃあ俺は独り言を言いながら学校へでも行くぜ! 二人の通学ルートにもしかしたら被るかもしれないがしょうがないよなっ!?」
ここまで来たら自棄だ。どうにでもなれ、と俺が思っていると、
「――おい、少し頭を冷やしたらどうだ?」
突然、後ろから肩を掴まれた。
「嫌な予感がしたので来てみたら……あらあら、炎燈寺さん。強引な男の人は嫌われますよ?」
「巴ぇ―、無駄よその男にそんなこと言っても。ソイツ、頭の中からっぽなんだから」
振り返るとそこには司の親友、つまり”四天王”の三人、長宗我部秀久、一条巴、アリシア・マルムスティーンが立っていた。俺の肩を掴んだまま長宗我部が話を続ける。
「炎燈寺……だったな? お前は昨日あんなことしでかしておいて何も反省しなかったのか? 何も思わないのか? だとしたら――トンだ間抜けだ。どんなに良い成績でもな」
俺はやけに落ち着いていた。恐らくこれは長宗我部なりの注意、思いやりだろう。しかし、それ自体勘違いによって向けられているものだ。そんな好意を受け入れてしまっては、自分の非を認めるようなものだ。
「悪いが長宗我部……邪魔だぜ。俺はお前とじゃなくて美衣ちゃんと話したいんだ」
「だから! それが迷惑だって言ってんでしょこの筋肉ダルマ!! アタシたちが何も知らないとでも思ってんの!? アンタが美衣に渡した手紙の中身もこっちは知ってんだからねっ!」
この煩さは清十郎とは随分違うものだな、などと思っていると、
「私、一条巴としても橘さんの友人として、”あんな手紙”を出した人間をみすみす近づけさせるつもりはありませんわ」
一条がチン、と刀を鍔を鳴らす。大丈夫だ、こんなことは覚悟していたし、以前にもこんなことがあった。その時はボコボコにされてしまったが、今回ばかりは這ってでも死んででも美衣ちゃんに話を聞いてもらおう。
(三人と……約束しちまったからなっ!)
長宗我部の手を、万力を込めて握る。ギリギリと耳障りな、骨が軋む音が鳴る。
「忠告はしたぜ……? これ以上邪魔したら――バラす」
カチリ、と俺の中でスイッチが入った。恐らくこれを使うのは美衣ちゃんにちょっかいを出したチンピラ以来だ。
目の色……と言うより纏う空気が変わったのを長宗我部も感じ取ったのだろう。一瞬、彼から恐怖の感情を感じ取ることが出来た。当然だ、彼らにもこんな、まるで”化け物”のような俺を見せたことなどないのだから。
「あ……ぐぅっ!」
俺が長宗我部の手を握って、そのまま宙に吊り上げると彼は苦しそうに呻いた。後ろにいる一条とアリシアも目を疑っている。何故、今まで簡単に懲らしめることが出来た人物がこれほどの力を持っているのか、と。
俺は彼女たちを特に感情も込めず、物のように見た。彼女たちも怯えた。その震えがこちらにまで伝わるようで、俺は思わず――嗤ってしまった。
余った掌で拳を作る。ミシッという音とともに完成した拳は、ブロック塀ぐらいなら吹き飛ばすことが出来る凶器に姿を変えた。俺はその拳を長宗我部の顔面に叩き込もうと振り上げ――
「――やめてっ!!」
美衣ちゃんの声が俺の動きを止めた。そしてそれと同時に、”暴力”を喚起させるスイッチまでも切れてしまった。俺が長宗我部から手を離すと、彼は見事に着地し、自分の手をさすり始めた。
「やめてよぅ……お願いだからもうやめてよ……」
昨日のようにまたグスグスと泣き始めてしまった。
「どうしちゃったの仁くん……? いつもの優しい仁くんに戻ってよぉ……」
それは出来ない相談だ。”いつも”の俺ではもう在れないし、在るつもりもない。維持を望む彼女と変化を求める俺、きっと美衣ちゃんにとって今の俺は好ましくないのだろう。
「美衣ちゃん、俺はもう嫌なんだ。自分を偽って、気持ちまで偽っていることが嫌なんだ! 人は変わるんだ。俺は変わりたいんだよ……!」
俺は心に秘めていた事をぶちまけた。俺の必死さが伝わったのか、美衣ちゃんが俺と目を合わせようとしたとき――司がそれを遮った。
「そのお前の変化ってのは、美衣を傷つけて秀久を殴ってでもしたいことなのか? どうなんだ、仁?」
司の瞳には当然、怒りが篭っている。しかしそれ以上に何か、真剣味に溢れていた。
「あぁそうだ、司。この決意はどんなことよりも、俺の人生よりも優先されるべきだ。過去の俺を誇り、未来の俺を祝福するために、俺は”今の俺”を変えたいんだ……っ!」
「じゃあ何であんな手紙書いたのよ!! 何考えてんのアンタ!? 『自分を変えたいん』とか言ってやってることなんて、ただ周りに迷惑掛けて、自分勝手に壊して回ってるだけじゃない!!」
アリシアが噛み付いてくる。俺のことがやはり、気に食わないようだ。金髪を揺らしながら俺を口撃してくる。しかし俺がそれに反応するより早く、
「――いや、いい。アリシア。もう行こう。秀久も巴も行くぞ。ほら、美衣……」
司が制した。そして、美衣ちゃんに手を伸ばして起き上がらせた。そしてそのまま俺に背を向けて歩いていってしまう。
「あ、ちょ、待ってよ司ぁ! ……アンタ、覚えてなさいよ……!」
「ふむ、これは借りにしておくぞ?」
「…………」
三者三様の態度を取り、俺を一瞥して司の後を追う。俺はそのまま突っ立って司の背中を見ていた。 俺は美衣ちゃんを追いかけて釈明すべきなのだろう。しかし、それが出来なかった。そのまま行ってしまうだろうと思っていた司は一度立ち止まり、寂しそうに俺に言った。
「――仁、お前の言いたいことは分かった。だが、美衣をこれ以上傷つけるなら俺は絶対にお前を赦さない」
それだけ言うとまた司は歩き出した。その背中は、言葉以上に悲しそうだった。
「……で、いま君はここでウダウダ悩んでいるわけだ、仁」
机に突っ伏している仁は何も答えない。心なしか背中からも生気が失われているような気がする。放課後まで彼がこうしている事など今まで無かった。それだけ、事態が深刻と言うわけだ。
「まさかそのタイミングで”四天王”が邪魔してくるとは思いませんでした。事前に知ることさえ出来ればいくらでも対策でも何でも練れたでしょうに……!」
緋織が悔しそうに言った。
「大将―ッ! 元気出せよッ! 俺らの大将がそんなんでどうすんだよ、アァッ!?」
清十郎の言葉にも仁は反応しない。三人はそんな彼を不安そうに見つめる。それもそのはず、彼は朝、体を引きずるように教室へやって来るとそのまま突っ伏してしまい、今の今までこの調子なのだ。
「どうしましょう、どうしましょう……! 私が朝に様子を見に行っていればこんなことには……」
「……僕が今回の作戦の立案者だ。本当ならば僕が監視役に回れば良かったんだ。これは僕のミスだから夏瀬さんが気を病む必要は無いと思うがね」
「ああああッ! 会長に晃も何落ち込んでんだよ!? 大将、起きろよッ!!」
どんよりとした空気を放ち始めた二人に辟易した清十郎が大仰に手を広げる。しかし、一向に顔を上げない仁に清十郎も遂には頭を抱えてしまった。
「あんだよぉー! 手紙一枚ぐらいで何でこんなに話が拗れんだよォーッ!?」
その時だった。仁が思い切り立ち上がったのは。勢い良く立ったので、椅子が吹き飛びロッカーへ当たり、喧しい音をたてる。仁はそれをあせあせと片付ける。その音で目を白黒させている三人に仁は良く通る大きな声で話し始めた。
「何回も何回も頭の中でシュミレートしてみたんだが、誤解を解くにはやっぱり直接会って話すしかないぜ。手紙、電話と色々考えたんだがどれも失敗する気がしてならないんだ。そこで、だ。俺は放課後、美衣ちゃん家の前で会う約束を「一方的に」取り付ける。卑怯な考えだが……きっと、美衣ちゃんは来てくれる」
ここで話を一旦区切り、仁は晃、緋織、清十郎と見渡した。その目は以前と同じく、やる気と熱意に燃えていた。その炎は三人にも燃え移り、彼らの心を焦がす。
「だが、きっと司が邪魔してくるだろう。その他にも”四天王”の奴らも出張ってくると思う。晃、夏瀬くん、清十郎……この炎燈寺仁、一世一代一度きりの頼みだ。あいつ等を――止めてくれ」
仁が頭を下げた。彼は少し、震えていた。三人は驚き、目を合わせ……笑った。
俺は性懲りも無く美衣ちゃんに会おうとしている。彼女は「とうぶん会いたくない」と言っていた。つまり、俺のしている行為は彼女の気持ちを全く無視するものだ。
「どっちにしろ、止まれないぜ……!」
先ほどは友人に「止めてくれ」と頼み、自分には「止まれない」と言い訳する。どうにもこの”炎燈寺仁”という人間は酷く自分勝手らしい。
『いいですか、炎燈寺くん。あなたの考えは分かりました。しかし、私たちは言うなれば”雑兵”です。それに対して彼らは正しく”一騎当千”。まともにぶつかれば一分も持ちませんわ。だから何個かお願いがあります』
夏瀬くんの言葉を思い出す。確か彼女は念を押すようにこう言っていた。
『まず1つ、場所の指定ですわ。待ち伏せがしやすいところ、自由に使えるところ、ある程度の広さがあるところ……つまり”学校”です。学校なら私がある程度までなら融通は利かせられますし。2つ目は時間の指定。これは放課後、それも夜がいいですわね。他の生徒に迷惑をかけるわけには行きませんし……何より夜ならばどうとでも……!』
学校、か。ならば屋上だ。あの時と同じ場所だ。多少、夏瀬くんが怖い顔をしていたことは忘れておこう。
『3つ目は、人数の指定……と、いきたいところですが、きっと指定しても無駄でしょうね……。意味が無いとは思いますが”一人で来てくれ”とは伝えておいてください』
それは俺も賛成だ。きっと司たちが付いて来る。しかし、俺はそっちのほうが良いと思う。あの連中が居れば夜の道中、美衣ちゃんは絶対に安全だ。
『作戦としては、炎燈寺くんのモノを基にこうさせてもらいます。まず、炎燈寺くんは屋上で橘さんを待っていてください。橘さんが一人で来ようが大勢で来ようが、構いませんわ。私たちが橘さん以外、猫の子一匹通させません!』
夏瀬くんが自分の胸をドンと叩く姿を思い出してしまい、笑ってしまった。彼女は自信に溢れたり、オロオロしたり、見た目とは違って非常に感情豊かだ。もしかしたら、俺が思っているより烈しい感情の持ち主なのかもしれない。
緩んでいた頬を引き締め、目前の建物――美衣ちゃんの家を見上げる。美衣ちゃんの部屋の窓からは煌々と光が漏れている。それはそうだ、今の時間は夜の8時過ぎ。恐らく、自室で宿題をしている頃だろう。俺は息を吸い込み、声を限りに叫んだ。
「美衣ちゃーーーん!! 仁だああああっ!! 明日の夜っ! 一人でっ! 8時に学校のっ! 屋上へ来てくれないかぁぁぁっ!!」
近所迷惑になるような声だと自分でも思う。実際に、周りの家で何事かと動く気配を感じる。当然、俺の前の家でも同じような動きがあり――窓が開いて美衣ちゃんが顔を出した。
美衣ちゃんはびっくりした顔をいている。ここ最近は悲しそうな顔しか見ていないので新鮮だ。
「なっ何してるの仁くん!? こんな時間に!!」
「いや、こうするのが一番だと思っただけだぜ? それでこうした訳だ」
俺のこの行動に美衣ちゃんは何とも言えない顔をしている。驚いた顔から、沈んだ顔へ。そして次はどうしたものかと悩む顔になり、最後は呆れたような顔になっていた。
「……アタシは行かないかもしれないよ?」
美衣ちゃんは窓の縁にぐでっともたれ掛かっている。緊張感というかピリピリしたものは感じられず脱力してしまっている。
「それでも、良い。俺は待ってる。美衣ちゃんにどうしても聞いてもらいたいことがあるから」
その言葉に美衣ちゃんは、
「……アタシのこと嫌いじゃないの?」
不安そうに訊ねられた。俺は即答する。
「嫌いな訳がない! 嫌いだったら毎朝挨拶するわけないぜ!!」
親指を立てた俺を見て、くすっと美衣ちゃんが微笑んだ。嬉しい、泣き出してしまいそうなほどに。
「分かった。明日の8時だね。うん、行くよっ」
そう言ってくれた。俺としてはもう少し話がしたかったが、司の家で動きがある。とっとと此処から離脱したほうが無難だろう。
「じゃあな、美衣ちゃん! 明日待ってるぜ!」
それだけ言うと俺は夜の住宅街へと全力で走り始めた。後ろから誰かの気配を感じた、恐らく司だろう。司からすれば俺は逃げ出したように見えるだろう。だが、実際は違う。嬉しくて、泣いてしまっている顔を誰にも見られたくなくて走り始めたのだ。涙が風で流れ、後方へ舞い散る。
俺はそのままの勢いでいつもロードワークで使っている神社まで走って行き、筋トレを始めた。
(よし! 明日だ!! 明日ダメだったら本当にただの”脳筋馬鹿野郎”だぜっ!)
先ほどまで視界を歪めていた涙は乾き、汗が吹き出てきた。そよそよと吹く夜風は、心地よかった。




