≪2≫
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「ぐっぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
今までで一番長く大きい悲鳴。
異形の首筋にはナイフの刃が通った。
間髪いれずに青年は振り向きざまに逆の首筋にナイフを突き立てた。
のろく、リーチの短い異形とでは当たり前の結果だ。
小学生でも成功しただろう。
そして………。
パリン
硬質な音とともに異形は砕け散った。
「はっ?」
予想外の事態に一瞬硬直する青年。
しかし、硬直は痛みとともに破られた。
「いっぎ、あ、がああああああああああああああああああ!!!!」
激痛、激痛、激痛。
赤熱する頭に、寒気を催すからだ。
すぐさま心臓に焼きごてを当てられたかのような灼熱感。
全身の血液がジュウジュウ音を立てる濃硫酸に変わってしまったかのようだ。
――痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
真白に染まる頭の中と、真赤に点滅する意識。
暗転。再覚醒。
いっそ手放したほうが楽になれる。
しかし、全身を駆け巡る痛みに無理やり覚醒させられる。
――痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
どのくらいの時間がたったのだろうか。
永遠にも感じたし、一瞬にも感じた。
実際は10秒程度だが、意識もあいまいな青年にはとてもではないが、分からなかった。
***
「ぅうぁあ………………………ぁぁぁ」
ようやく過ぎ去った痛みに、芋虫のように丸まっていた青年は、こわばっていた体を恐る恐る広げ、大の字になって一息をついた。
青年は、今の謎の痛みが何だったのか必死に考えようとするが、ぐちゃぐちゃになった思考は散り散りになって戻ってこない。
ふと、視界がにじんでいることに気付き右手の甲でぬぐう。
そして、自身の右手の甲に見覚えのないものを見つけ、疑問に思うと同時に乱れた思考が戻ってきたことに気付く。
「ぅうぐううぅぅ……………」
近くからうめき声が聞こえハッとし、警戒しながら素早く立つ。
あの異形が1匹だけとは限らないのだ。
その考えに至れなかった自身を悔みながら、周囲を見渡し気付く。
浅い呼吸を繰り返す、しかし目をしっかりと開けた横たわる女性に。
結果からいえば青年が助けた女性ともいえる。
何故女性に向かっていく異形を止めようとしたか青年は分かっていないのだが。
もう一度周囲を見渡し、抱き合う2人と惨殺された2人の男子高校生以外はいないことを確認し、青年は倒れている女性に駆けよる。
「しっかりしてください!」
足はパンパンに腫れ、顔には大きな青あざがあり、左腕はおかしな方向に曲がっている。
しかし、腹を抱え込むように倒れていたのだろうか背中側の大量の足跡に比べて腹部には足跡がない。
この分なら内臓は傷付いていなさそうだ。
ひどい状態だ。が、命に別状はなさそうだ。
ほっと一息つき、女性の腹部の上に置いた自身の右手の甲に目がつく。
入れた覚えのないタトゥーのようなものだ、さっきの異形のせいか?と、疑問に思い、刹那。
「なっ!? LV.0?」
訳の分からない事態に動揺し、タトゥーをけそうとし、左手にも形は違うがタトゥーがあることに気付き、驚愕する。
そして、
「称号……世界最速。 スキル……なし。 アイテム……【緑小鬼】の爪、薬液」
――なんだこれっ! これじゃまるで、RPGだ!