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俺とアイツのバースデー

作者: 如月瑠璃

 ピョン子が俺の前から姿を消した。今日は俺の誕生日だって言うのにアイツはこの数日間、

携帯にも出ないし俺の部屋にも来ない。 ピョン子なんて変てこな名前はもちろんあだ名だ。

何でピョン子なんてあだ名かって言うと、アイツはいつでも真っ白な服を着てるんだ。冬は

真っ白ふわふわの帽子とマフラーと手袋で身を固め、寒くてもミニスカでおまけにタイツと

ブーツまで真っ白だ。夏はといえば、やっぱり真っ白なワンピと白いサンダルと日傘でキメて

俺とのデートに現れる。俺はピョン子の本名を知らないし白い服以外のピョン子を見たことも

ない。

 アイツは去年のクリスマスの次の日、つまり12月26日に銀座の高級デパートの前で一生懸命

売れ残りのケーキを売ってた。ケーキは五千円ぐらいする高級店の美味しそうなやつだったけ

ど、もうクリスマスを過ぎれば誰も見向きもしない。もちろんその高級ケーキは哀れにも半額

に値引きされてはいたけれど。たった一つ残ったケーキの前でピョン子は真冬の真っ白ないで

たちで、一生懸命「ケーキはいかがですか?」って声を枯らして叫んでた。俺はその数日前に

本命の彼女にフラれたばかりで、もちろん誰かとクリスマスにケーキなんて食べてなかった

し、何よりもアイツの真っ白な姿と、その時久しぶりに降り出した、東京では少し遅めのホワ

イトクリスマスの雪の中、まるでうさぎのようなアイツのからだに降り積もる雪に一瞬見とれ

た。

 俺がピョン子の目の前に立った時、アイツはすごく嬉しそうに笑った。「最後のケーキ、お

買い上げありがとうございます!」ピョン子が真っ白な姿で寒そうに頬を赤く染めて、まるで

うさぎのようにピョコンと俺だけに向かってお辞儀をして、そして笑ってくれた、と思ったそ

の瞬間、俺は思わずこう言ってた。「一緒にケーキ食べよう!」って。ピョン子は一瞬戸惑っ

た表情を見せたけど、やがてまた微笑んでしっかりとうなずいた。それが俺とピョン子の出会

いだ。

 この夏まで半年間ずっとアイツは俺と一緒にいた。なのにどうして俺の誕生日にいないんだ

よ! 俺は今、アパートでずっと時計をにらんでる。現在23時55分、あと5分で俺の誕生日は終

わる。確か、いなくなる少し前にアイツは「一緒にニンジンケーキ食べようてお祝いしよう

ね!」って言ってたのに。真夜中の時計は無常にもチクタクと時を刻む。あと3分、2分…。

 俺は夢見ていた。アイツが俺の部屋のドアを開け、ニンジンケーキを持って現れる。そして

こう言うんだ。「お誕生日おめでとう、一緒にケーキ食べよう!」って。

                                      "THE END"

この物語には続きがあります。今日は彼の前に彼女が現れないまま物語は終わってしまいましたが、いつか必ず彼女は彼の元に戻ってくると私は思っています。その時まで、彼と彼女の行く末を見守ってあげてくださいね。

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