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黄金のヴァンブレイス  作者: 岡村 としあき
第二部 第一章 『復讐する者とされる者』
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七十二話 ナカヨシ

「あ?」


「ふむ」


「え?」


ロッテが発案したのは、フィーザを僕らに同行させるというものだった。


「彼女の実力は、刃を交えた私だからこそ解ります。それに、彼女はゼオンの出身。道中の道案内はもちろん。現地に詳しい人間は重宝(ちょうほう)するでしょう」


 そういえば、掃除の間にロッテはフィーザに何やら聞いていたみたいだった。それは会話というより、怒鳴りあいのようなものだったけど。


「ほう……なるほど。実力面でも、私の目から見て問題は無い。むしろ、我らが王の下でその腕を振るってもらいたいくらいではある。それに、私も個人的に気に入っておるしな」


「おお? なんかおっさんがオレの事褒めてる……? やべえ、なんかおっさんかわいい」


 フィーザは遊んでいた手を止めてドルイドを指差し、げらげら笑った。


 ドルイドのきょとんとした顔は……かわいい、のだろうか。僕にはよくわからないが。


「……その性格を直した後ではあるが」


 ドルイドがフィーザをチラ見して、視線をロッテに戻す。


「まあ、よかろう。本来ならば、正式な手続きが必要になるが、今は戦時中。特例ということで、娘を第六席の下に着ける事を許可しよう。身分の保証も私がしてもよい」


「ありがとうございます」


 ソファに座ったまま、ロッテが深々と頭を下げる。


 僕もそれにならって頭を下げたが、チラリと隣を見ると、フィーザはあいかわらず、げらげら笑ったままだったので、ロッテが左手で強引にフィーザの頭を倒した。


「って! んだよ、赤毛!」


 頭を上げたフィーザはロッテを睨みつけた。


「ドルイド様があんたの同行を許可してくださったの。その何も詰まってなさそうな軽い頭を下げなさい、バカフィーザ」


「なんだかよくわかんねーけど、オレ。アルフレッドと一緒に行っていいのか?」


「ええ、そうよ」


 ロッテが天使のような笑顔をフィーザに向けると、フィーザはソファの上に足を乗せてガッツポーズする。


「おっしゃあ! やっぱ持つべき物は友達だな、見直したぜ、赤毛!」


「あんたには、あたしの部下としてせいぜい役に立ってもらうわ」


 途端、ロッテの天使のような笑顔が、悪魔のようにクククと笑い出す。


「さんざん使い倒して、虫けらみたいに扱ってやるわ……フフ。戦闘の時はちょうどいい盾になりそうだし、戦死でもしてくれれば一番都合がいいんだけど。宿に着いたら肩でももんでもらいましょうか。その前に買出しね。しつけもちゃんとしなきゃ」


「んだと、この赤毛。誰がてめーの命令なんか聞くかってんだ! 相変らず何様だ、この野郎!」


「相変らずロッテ様よ、この野郎!」


 始まった。赤い龍(ロッテ)黄色い虎(フィーザ)が、目の前で天下を分かつ戦いを始める。


「やめい! 見苦しい! 若い娘がそんなはしたない姿で争うでない!」


 が、それは黒い魔神(ドルイド)の一喝であっけなく終息した。


「も、申し訳ございません、ドルイド様」


「チ。命拾いしたな、赤毛」


 ロッテはドルイドに怒鳴られて、しゅんと落ち込み、それを横目でフィーザが小ばかにした笑いを浮かべている。


「いいなー。野生的なお姉さんは……本当ならぼくも行きたいんだけど……お兄さんとゼオンで遊びたかったなー」


「ならん! この馬鹿者が!」


 地震が起こった。どうやら、原因はドルイドが床を右足で踏みつけたことが原因らしい。


「仮にもハーケンの家を継ぐ者が、戦以外で軽々しく国外に出るものではない! 戦は遊びでは無いのだぞ! 解っておるのか!」


 ものすごい迫力だ。目の前で火山が噴火したかのように、怒涛のごとき説教の波がエリスに襲い掛かった。


 エリスは涙目になっている。


「ごめん、なさい、父上」


「うむ。解ったのならばよし。……お前が遠いところにいってしまうと、屋敷が静かになる。それでは……寂しいではないか」


 怒り顔のまま、ドルイドはぽつりと本音を漏らした。けっこうこの人、寂しがり屋さんかもしれない。


「見苦しい所を見せたな。さて……大方の話は済んだ。今日はこれくらいにして、お前達は休むがいい」


「はい」


 僕らは立ち上がると、広間を出ようとする。しかし、ロッテとフィーザがドアの前でぶつかって、やり始めた。


「ちょっと、フィーザ! 今あたしの足踏んだでしょ!? 痛いじゃない!」


「うるせー、んな所でちんたらしてるのが悪いんだよ! って痛てえ! てめーこそ、オレの髪引っ張ってるじゃねーかよ!」


「……仲良くケンカしてね」


 宿への帰路を辿る最中も、2人は相変らず仲が良くよりそっておしゃべりをしていた。


 こんなんで、この先やっていけるのだろうか?


 かなり不安だな。


 それに、僕らに同行するということは、ロッテだけでなく師匠やリト、オルビアらとも行動を共にするということだ。


 彼女達ともうまくやってくれるといいのだけど……。


 不安に思いながらも、なんとか宿にたどり着き、僕はさっそく師匠たちを部屋に呼んだ。


「フィーザ。僕の連れを紹介するね。まず、こちらが僕の剣の師匠、セインさん」


「セインです。初めまして、フィーザちゃん」


 師匠が微笑んでフィーザの手を取った。


「おう、よろしくな。セインさん」


 フィーザも笑顔で師匠の手を握る。


「で、こっちがリト」


「リトです。よろしくね、フィーザお姉ちゃん!」


「おう、困ったことがあったら、何でもオレに言え」


「フィーザお姉ちゃん……かっこいい……どっかの赤毛のおばちゃんとは大違い」


 フィーザが男前に笑ってみせる。すると、リトは感激したように胸の前で手を合わせ、きらきらとした眩しい視線をフィーザに向けた。


 たぶん、僕だけだろう。ロッテのこめかみに、青筋が浮き出たのを気付いたのは。


「最後に、オルビア」


「オルビアだ。ふむ。ふむ。ふむ。いい筋肉をしているな、フィーザ殿は。まるで理想を絵に描いたようだ」


 オルビアはフィーザの全身を眺めて、そう呟いた。


 ……どんな理想なんだろう。でも、確かに太ももとかいい形をしている。


 ふっくらと、それでいて引き締まっていて……いや、僕は太ももフェチというわけじゃないんだけど。


「へへ、褒めるなよ、照れちまうぜ。あんたとは気が合いそうだな、オルビア」


「うむ。よろしく頼むぞ、フィーザ殿」


「おう!」


 がっちりと握手するフィーザとオルビア。よくわからないが、2人は馬が合うみたいだ。


 みんなとの挨拶を終え、フィーザは改めて3人を見渡し、腕を組んで溜め息を付いた。


「にしても、リトはかわいいな。赤毛とは大違いだぜ。セインさんも優しいし、赤毛とは大違いだ。オルビアは頼もしいし、やっぱ赤毛とは大違いだな」


 そして、フィーザとロッテの目が合う。


「なんですって!? あたしだって、こんなにかわいいし、こーんなに優しくて、こんなにこんなに頼りなるんだから!」


「自分でかわいいとか言うんじゃねーよ、引くだろが」


 火花が散った。 


「どうどうどう。ロッテ、落ち着いて」


 髪色だけじゃなく、顔まで真っ赤になったロッテをあやす。これでは話が進まない。


「おばちゃん、見苦し~い。少しはフィーザお姉ちゃんを見習いなよ。そんなだから、小じわが増えるんだよ」


 リトが追い打ちをかけた。


「このっ! なんでフィーザを持ち上げるのに、あたしばっかりこき下ろすのよ! この子は~! 悔しい~~~~!!!!」


 ロッテは悔しさを募らせ、地団太を踏む。


 こんなんでやっていけるのだろうか……。

ちょっと最近、目の調子が悪いので来週はお休みして

6月24日に更新します。

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