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「かつて逃げ出した故郷へ。俺は今、人生で一番の晴れ姿(ベンツ)で帰る。」


第1話:憧れ

 住宅街の静寂を切り裂くように、重厚なV8エンジンが目を覚ました。

 **メルセデス・ベンツSL。最高級の「オープン・スポーツ」を意味するその二文字は、**若い頃の自分にとっては、ディーラーのショールームの外から眺めることしか許されなかった「成功の証」だ。

 退職金の半分を注ぎ込んで手に入れた、この銀色の貴婦人のドアを閉める。ドスッという密閉された音は、日常を切り離す合図のようだった。

 私はセンターコンソールのスイッチを押した。電動ルーフが複雑な動きで折り畳まれ、頭上の空がゆっくりと広がっていく。この車がオープンカーへと姿を変える数十秒の間、私はいつも、少年に戻ったような高揚感を覚える。

 助手席には、妻が愛用していたシルクのスカーフをそっと置いた。

「見てろよ。今から帰るからな」

 誰にともなく呟き、私はシフトをDに入れた。


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