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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第二章 交わるもの

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第十六話「触れているもの」

第十六話は、

“触れる”ことに成功する回です。


だがそれは、

まだ“届いていない”段階。


ほんの一歩手前です。



 「……間に合ってない、ってなんだよ」


 らんが吐き捨てる。


 苛立ちと、

 わずかな焦り。


 蒼真そうまは、答えない。


 視線は——


 “糸”。


 薄く。


 だが、確かに残っている。


 空間に、張りついている。


「……あいつは」


 小さく、呟く。


「これを、見てる」


「は?」


 嵐が眉をひそめる。


「見えてるのか?」


「違う」


 蒼真は首を振る。


「“見てる”んじゃない」


「触れてる」


 その瞬間。


 空気が、歪む。


 遅れて——


 気配が来る。


 無月むつき


 同じ位置。


 同じ距離。


 同じ“始まり”。


「……対象、再確認」


 変わらない声。


「排除、継続」


「チッ……!」


 嵐が動こうとする。


「待て」


 蒼真が止める。


「今度は、俺が行く」


「……やれんのかよ」


「やるしかない」


 構える。


 呼吸を落とす。


 視線を合わせる。


 無月。


 その奥。


 “糸”。


 微かに——


 揺れている。


「……そこだ」


 踏み込む。


 一直線。


 迷いはない。


 刀を振る。


 無月ではない。


 その“先”。


 空間へ。


 次の瞬間。


 “触れた”。


 わずかに——


 だが確かに。


 空気ではない。


 何かに引っかかる。


 浅い。


 だが——


 違う。


 無月の姿が、ズレる。


 いつも通り。


 だが。


「……今の」


 嵐が目を細める。


「ズレ方が……」


 違う。


 ほんのわずかに。


 だが確実に。


 “遅れた”。


 無月が、一歩踏み出す。


 音が、遅れる。


 その遅れが、


 さらに、伸びる。


「……効いてる」


 蒼真が呟く。


 確信ではない。


 だが——


 手応えがある。


「もう一度!」


 踏み込む。


 同じ位置。


 同じ軌道。


 同じ“糸”。


 斬る。


 今度は、深く。


 だが——


 届かない。


 直前で。


 ズレる。


 消える。


「チッ……!」


 嵐が舌打ちする。


「惜しいだろ今の!」


「ああ」


 蒼真が息を吐く。


「でも、足りない」


 無月が、動く。


 腕が振られる。


 嵐が防ぐ。


「ぐっ……!」


 変わらない。


 重さも、

 精度も。


 ズレがない。


 蒼真は、見ている。


 無月ではない。


 “その外側”。


 糸。


 揺れている。


 連動している。


「……やっぱりか」


「こいつは」


 無月を見る。


「自分で動いてない」


 嵐が、息を吐く。


「命令、だろ」


「ああ」


 蒼真が頷く。


「でも——それだけじゃない」


 視線が、鋭くなる。


「命令を、通してる」


「……は?」


「“これ”を通して」


 糸。


 わずかに、

 震える。


 無月の声が落ちる。


「優先順位:対象」


 変わらない。


 だが——


 その直前。


 一瞬だけ。


 “揺れた”。


「……見えた」


 蒼真が呟く。


 断片。


 ほんの一瞬。


 だが確実に。


「そこに、通ってる」


 理解が、

 形になりかける。


 嵐が問う。


「切れんのか」


 蒼真は、答えない。


 まだ。


 断言できない。


 だが——


「……触れられる」


 それだけは、確信する。


 無月の姿が、ぶれる。


 消える。


 今回は、違う。


 完全には消えない。


 “遅れている”。


「……追えるか?」


 嵐が低く言う。


 蒼真は、目を細める。


 糸。


 伸びている。


 繋がっている。


「……まだだ」


 小さく、呟く。


「足りない」


 何がかは——


 まだ、わからない。


 だが確実に。


 “あと一歩”。


 そのまま。


 気配が、遠ざかる。


 無月は、消えた。


 静寂。


 戻る。


 もう、同じではない。


 嵐が、息を吐く。


「……なんだよそれ」


 蒼真は、答えない。


 ただ——


 刀を、見ている。


 そして。


 わずかに。


 “糸”が、


 まだ残っている。


 その先へ。


 繋がっている。


「……まだある」


 小さく、呟く。


 それは——


 ここでは終わらない。


 繋がっている。


 どこかへ。


 もっと、奥へ。




第十六話 終

見えてきたのは、

“本体”ではなく“繋がり”でした。


次話では、

その先に踏み込みます。

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