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第6話:未来からの使者

第7艦隊、姿を現す

太平洋の広大な海域。伊20潜とアメリカの飛行艇が、慎重に第7艦隊が発する音響信号を追っていました。やがて、ソナーに巨大な影が捉えられます。


「司令!反応が急接近!水上浮上を開始しています!」


ソナー員の報告に、吉野少佐とキンブル大佐は息を呑みました。水面に巨大な波紋が広がり、濃い霧の中から、信じられないほど巨大な艦影がゆっくりと姿を現し始めました。それは、これまでの人類が建造したどの艦船とも異なる、滑らかで無機質な、漆黒の塊でした。


「あれが…『未知の艦隊』…」キンブル大佐は呆然と呟きました。


霧が完全に晴れると、そこには原子力空母「ロナルド・レーガン」と「ジョージ・ワシントン」、そして揚陸指揮艦「ブルー・リッジ」を旗艦とする、2024年のアメリカ海軍第7艦隊が堂々と浮かんでいました。その威容は、1941年の日米両軍の常識を遥かに超えるものでした。


伊20潜は、その巨大な艦影に圧倒されながらも、慎重に距離を保ちました。飛行艇からも、その光景は信じられないものとして、ワシントンD.C.と大本営に緊急報告されました。


初めての直接対面

第7艦隊の甲板には、マクドナルド提督と数名の士官が立っていました。彼らは、伊20潜と飛行艇の存在を正確に把握しており、その動きを注意深く見守っていました。


「彼らが接触を試みている。我々も準備を整えろ。」


マクドナルド提督の指示で、ロナルド・レーガンの甲板に、小型の垂直離着陸機がゆっくりと着陸しました。それは、F-35C戦闘機ではなく、偵察や輸送に特化した、より小型で静かな機体でした。


その機体から降りてきたのは、先ほどワシントンD.C.に映像で現れた白人男性でした。彼は、完璧な日本語を話す、第7艦隊の情報士官、アダム・ミラー少佐でした。


ミラー少佐は、小型艇に乗って伊20潜へと向かいました。伊20潜からも、吉野少佐とキンブル大佐が小型艇で迎えに出ました。太平洋の真ん中で、未来と過去、そして日米の代表者が初めて直接対面する瞬間でした。


吉野少佐は、ミラー少佐の顔を凝視しました。スクリーンで見た時よりも、その存在は現実味を帯びていました。キンブル大佐もまた、警戒心を露わにしながら、ミラー少佐の言葉を待っていました。


ミラー少佐は、両者に深々と頭を下げ、流暢な日本語で語りかけました。


「皆様、この度は、我々の突然の出現により、多大な混乱とご迷惑をおかけいたしました。私は、第7艦隊の情報士官、アダム・ミラー少佐と申します。そして、私たちは…2024年の未来から、この時代にタイムスリップしてしまった者たちです。」


吉野少佐とキンブル大佐は、その言葉に息を呑みました。「未来」という言葉は、彼らの理解を完全に超えていましたが、目の前の現実がそれを否定することはできませんでした。


補給と情報交換の始まり

ミラー少佐は、第7艦隊が食料と燃料の深刻な不足に直面していることを率直に伝え、日米両国に協力を求めました。同時に、彼らがなぜこの時代に来たのか、そして歴史に干渉する意図がないことを懸命に説明しました。


「私たちは、意図せずしてこの時代に飛ばされてしまいました。皆様の歴史に介入するつもりは毛頭ございません。しかし、このままでは我々は生存できません。どうか、補給のご協力をお願いいたします。」


吉野少佐は、ミラー少佐の言葉に耳を傾けながら、彼らの窮状が嘘ではないことを直感しました。キンブル大佐もまた、彼らの技術力と、それに見合わない切迫した状況に、複雑な表情を浮かべていました。


この情報は、直ちにワシントンD.C.と大本営に伝えられました。両国は、第7艦隊の要求に対し、慎重ながらも協力する方針を固めました。彼らの技術力を警戒しつつも、その圧倒的な力を目の当たりにした今、彼らを敵に回すことは賢明ではないと判断したからです。


数日後、日米は協力して第7艦隊への補給を開始しました。食料、水、そして当時の技術で可能な限りの燃料が、大型輸送船で運ばれていきました。第7艦隊の乗員たちは、久しぶりの補給に安堵の表情を見せました。


補給と並行して、日米と第7艦隊の間で、情報交換が始まりました。ミラー少佐は、未来の科学技術、国際情勢、そして第二次世界大戦の概略について、慎重に、しかし正確に伝えました。特に、日米が後に同盟国となること、そして広島と長崎への原爆投下という悲劇は、両国の首脳陣に大きな衝撃を与えました。


「原爆…?そんな恐ろしい兵器が、未来には存在するのか…?」


山本五十六は、ミラー少佐の言葉に戦慄しました。東條英機もまた、その表情を硬くしていました。ルーズベルト大統領もまた、その情報の重さに、深く考え込んでいました。


この情報交換は、日米両国の未来に対する認識を大きく揺るがし、第7艦隊への警戒心を抱かせつつも、同時に彼らを「未来からの警告者」として見なすきっかけとなりました。歴史は、誰も予想しなかった方向へと、さらに大きく動き始めていました。

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