#26 一緒に行ける方法
それから2週間が経過してまもなく6月になろうとしている時期に、放課後に夢嫁から呼び出される。
「大輝くん、ちょっと話したいことがあるんだけど良いかな? 」
「うん、良いけどどうしたの? 」
「ちょっと今日、2学期に向けた、急な職員会議があったの。詳しいことは、車の中で話すね」
「分かった」
それから僕と夢嫁は、学校の駐車場に移動していき、夢嫁の車の中に乗っていく。
そして夢嫁が、ボタン操作で車のドアを全部閉めてから暗そうにしながら話し出す。
「実は、今日の急な職員会議であたし、2学期に東京の高校に移動することになったんだ」
僕は、この時移動することについて、全く信じられなかった。
「それは何かの間違えじゃないの? 」
「ううん、間違えじゃないよ。あたし、すごく悲しい。大輝くんと1年の時から教師と生徒と言う関係ではあるものの、ずっと一緒だったんだよ。それであたしは、みんなに優しく接してあげたり、困った人がいたら助けてあげたりしてるところを見てあたしは、大輝くんの事が好きになったのに… 」
すると夢嫁の目から大粒の涙が流れていく。
「夢嫁、一緒に東京の学校に行ける方法ってないの? 」
「ないことはないよ。一つだけあたしと一緒に東京に行くことが出来る手段がある」
「どんな手段なんですか? 」
「急で中途半端な移動と言うこともあるから、学校から特別に緊急移動手当てとして移動する時に50万円がもらえるの。ちなみにこれは東京側の高校が、ここの高校の口座に振り込んでる分だから、東京側の高校が出してくれるんだけどね」
「50万円も出るの? 」
「普通はもちろんこんなには出ないわよ!だけど急な移動と言うことは、家も引っ越さないとってなるからその分のお金に困らないようにって言う感じかな? 」
「でもどうして普通の移動だとお金が出ないの? 」
「それはあたしには、よく分からないんだけどね。それで手段があるって言うのは、まず大輝も転校届けの書類を書いて学校に出すの。それから大輝くんも実際にあたしと一緒に東京に行くの。そうしたら例え、あたしが担当するクラスと違ったとしても、少なくとも毎日あたしと逢えるよ! 」
「それじゃ、その手段であれば僕も夢嫁と一緒に東京の高校に行けるんだね? 」
「行けるのは行けるけど、あたしは勧めないかな」
「どうしておすすめじゃないの? 」
「それは大輝くんには、幸せになってほしいからだよ。今だと松田たちにも毎日逢えるし、大輝くんは引っ越さなくて済む。だけど東京に行くとなれば、松田たちには逢えなくなる上に大輝くんまで、東京に引っ越さなければいけなくなるから」
「夢嫁… 」
「それにあたしは、大輝の事が大好きだから縛りたくないの」
「僕だって夢嫁と別れるのなんて嫌だよ! 」
「大輝… 」




