#18 辞めようと思う
「そうだったんだ!それは知らなかったよ」
「だから本来は中学の時に高校受験が必要だったんだけど、紗綾が前を向いて頑張っていきたいって言ってたからね」
「そうだったんだね」
すると紗綾が強い気持ちを持ちながらこう言う。
「でもこれからは、大輝と出逢えたことだし、誰かを傷つけたりするのは辞めようと思ってるの」
「それはすごい良いことだね!確かにイライラしたりしてる時は、手を出したくなると思う。だけど手を出したり、誰を刺したりしても何も解決しない上に、自分で自分の首を絞めることにしかならないからね」
僕がそう言うと莉乃も反省しながらつぶいていく。
「大輝の話を聞いてると納得できるものがあるなって思うし、これからは勝手に持ち帰るのは辞めようって思う」
「持ち帰るのは良いんだけど、ちゃんとレジに並んでお金は出さないといけないよ」
「だって私の家、親父がヤクザしてるって言ってもお金はぜんぜん無くて困った生活ばかりしてたからね」
「と言うことはもしかして莉乃は、最初勝手に持ち帰るつもりは無かったりする? 」
「よく分かったわね!そうだよ。私は、最初勝手に持ち帰るつもりなんてなかったの。だけど家は、常に貧しくて母親が働いてくれても、家賃と最低限の光熱費で全部飛んでしまうんだよ。それで、食費はほとんどない事が分かっていた私は、近くのコンビニとかスーパーで回りをよく確認してから、1回だけって思いながらおにぎりをカバンの中に入れてそのまま逃げて家まで帰ってきて、幸いバレなかったのをきっかけに気づいたら繰り返すようになってたかな」
「ちなみにどのくらい繰り返してきたの? 」
「私は、今まで100回くらい繰り返してきて全部大丈夫だったよ」
「それって莉乃、どれだけ幸運を持ってるんだよ!普通それだけ繰り返してたら、今防犯カメラとか普及してきてるから逮捕されても可笑しくないと思うけど」
僕がすごく驚いた表情をしていると莉乃は、苦笑いをしながら言った。
「自分でも振り返ると、恐ろしすぎることをしてしまってたんだなって思うよ。でもこれからは、大輝に迷惑かけたくないから、もうしないけどね」
「ありがとう、莉乃。でもそう考えると莉乃もかなり大変な人生を過ごされてきたんだね」
「まぁ、そうだね。でもけっこう今まで悪いことしてきちゃったせいで、誰も私の事を正しく理解してくれようとした人はいなかった事も辛かったかな」
「そうだったんだ。と言うことは、みんな莉乃の事を悪いようにしか見てくれなかったって事なんだね」
「そう言うことになるかな。だからそう考えると大輝は、良い意味で変わった奴だなって思う」
「どこが変わった奴だなって思うの? 」
「だって最初、近づいてくるなって何度言っても近づいてくる上に、私たちが手を出してても、大輝からは一切出してこなかったから根性ある奴だなって思う反面、本当に変わった奴だなって思うんだよ」




