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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 奇襲
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◇ アストロチーム

 第二企画事務室では、シグマッハのベルコ部隊と戦い終わったアストロチームが、光学迷彩を解除する。


 隊員の一人が、チームマスターのミランダ・ルゼに問いかけた。


「やつらを追わなくて良かったのですか?」


 彼女は首を縦にふる。


「ああ。部屋から通路に出ると、障害物がないからな。流れ弾に当たってしまう」


 ミランダは、新入隊員であるローヌ・シュルツのそばへ行くと声をかけた。


「よくやった。アストロチームとして、はじめての任務にしては上出来だったぞ」


 しかし、ローヌの顔には悔しさが浮き出ている。


「最低でも、気絶させたと思ったのに……まだ声を出せるほど、元気がのこっていたなんて」


 ガラハッドに強烈な一撃を見舞ったのは、彼女である。ミランダは、三人目の敵をゼロ距離打撃の一発で葬ったが、同じようにできなかったローヌは無念の想いが募るのだ。


 ミランダは、ため息をついた。


「あの一撃は、わたしから見ても完璧だったぞ。ふつうなら、気絶どころか死んでるよ」


 慰めていっているのではない。本当のことである。


「あいつは、シグマッハの幹部だろうな」


 ほかの隊員たちは納得する。


「そうですね。幹部なら、そう簡単には死なないでしょう」


 別の隊員が、ミランダに話しかける。


「狙いどおりに、この部屋に来ましたね」


 ミランダは、うなずいた。


「ワグナーが情報局からきいた話では、この部屋のデータを何度も観覧した形跡があったらしい。ふだんは誰もそんなことはしないから、やるとすればシグマッハだと判断したんだろうな」


 その人物はノーティスである。保護色のレイズでラムド情報局に侵入し、データをチェックしていたのだ。


「間に合って良かったよ。ワグナーは優秀な参謀だな」


 ミランダは、まだ悔しがっているローヌを見上げる。


「今回の、おまえの功績は大きい。そんな顔をするな、シュルツ。おまえは、もう立派なアストロチームの一員なんだ」

「はいっ」


 無念が吹っ切れたようなローヌの返事に、ミランダは微笑んだ。




 撤退したベルコ部隊は、隊長であるガラハッドの退避を優先させる。


 ガラハッドは、装甲車の椅子を変形させた簡易ベッドに乗せられ、スピードを出す車両に激しく揺らされていた。


 そばにいるノーティスが、唖然となった顔で声をかける。


「あんたが、これほどやられるとはね」

「ざまあ……ないわ……」


 ノーティスは信じられなかった。


 ガラハッドのレイズは、己の身体の再生だ。彼は、脳や心臓を部分的に破壊されても再生して復活できる。

 しかも、再生速度が異様にはやい。片腕を吹っ飛ばされても、みるみるうちに元どおりになる。


 だが、不死身というわけではない。このレイズは、発動すればそれだけ寿命を縮めることになるのだ。


 瀕死の彼に、ノーティスは訊いてみる。


「なにがあった?」

「光学……迷彩……だ」


 ノーティスの表情が、厳しさを帯びる。


 ──光学迷彩?


 記憶の海に潜って必要な情報を探し出そうとしていると、該当する編成隊にぶち当たった。


「わかった。特機隊のアストロチームだ」

「アス……トロ……?」

「ニックス隊長がやられたときの部隊だよ」

「あ……あいつら……がっ」


 以前、シグマッハの幹部クラウド・ニックスを隊長とする部隊が、壊滅したことがあった。当時はどういう状況でそうなったのか、かいもく見当がつかなかった。


「接近戦を専門とするチームだ。ナイフのほかに、一撃で戦闘不能にする特殊な技を使うらしい。身体が再生できないのは、その技を食らったからだろうね」


 事実、ローヌ・シュルツのゼロ距離打撃はガラハッドの全身の細胞に異変をきたし、レイズがまともに機能しない。

 意識しなくても発動する彼のレイズだが、死なないようにするのが精一杯の状態だ。


「特機隊をムルグッドにひきつけたはずなのに、彼らがのこっていたのは大誤算だな」

「やれやれ……だ……」

「もう話さない方がいい。しんどいだろう」


 揺れる車両の中で、ガラハッドは意識を失い、眠りについた。




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