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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 奇襲
76/91

◇ 見えない敵

 ラパノスに進行したシグマッハの部隊は、とうとうラムド軍の第二防衛ラインを突破した。


 街の人々は、すでに避難している。


 シグマッハの幹部ガラハッド・ベルコが、めずらしく部下たちを率いて前戦に出ている。


「あのビルだ。支配しろ」


 総合建設会社のビルだ。八階建てである。


 七人の部下たちは、ショットバズーカを携えながらビルに入ってゆく。避難勧告が出ているため、街には誰もいない。

 建物に入った時点で、支配したといえる状況だ。


 街の中心部まではまだ距離があるが、このビルから確認できるラムド軍の迎撃部隊を殲滅すれば、目的は果たしたも同然だ。


 ガラハッドは、自分の兵隊に顔を向ける。


「エレベーターは動くか?」

「はい、動きます」

「よし、五階まで行くぞ」


 部下たちは「了解」といいながら、二つあるエレベーターに次々と乗り込んだ。もちろん、ガラハッドもそのなかにいる。




 五階に到着する。みんながエレベーターから降りると、一人がある物を指さした。


「あれはなんだ?」


 別の兵隊が答える。


「脱出用のシュートだ」


 火災が起きたときの避難設備だ。


「まあ、俺たちが使うことはないな」

「そうだな」


 リーダー格の男が、彼らに怒声を飛ばす。


「むだ話してるんじゃねえっ、もたもたするな!」


 彼らは早足に目的の部屋へ向かう。そこは第二企画事務室だ。


 部屋の前まで来ると、ガラハッドは部下たちに命令する。


手筈(てはず)どおりに、窓の外からラムドのやつらを狙い打て!」

「はっ」


 部屋のドアが、右にスライドするように開く。兵隊たちが中に入った。


 あらかじめ打ち合わせした配置に着こうとした、そのとき──


「ぐっ」


 兵隊の一人が、首を締められたように苦しんでいる。

 ほかの仲間が彼に目を向けるが、独りで苦しんでいるようにしか見えない。


「どうした? なにを……うっ」


 声をかけた兵隊は、左(ひざ)をガクッと落とす。膝の裏を突かれたのだ。

 直後、首の右側から鮮血がほとばしる。


 最初に首を締められた兵隊は、うつ伏せに倒れた。すでに絶命している。


 明らかに、ラムド軍の攻撃だ。だが、姿が見えない。


 ガラハッドの額から、冷や汗が滴る。


 ──これは……光学迷彩か?


 三人目の犠牲者は、ドンッという音とともに吹っ飛んだ。血を吐きながら倒れた彼のアーマースーツは、腹の部分がへこんでいる。


 どういう攻撃を受けたのか、さっぱりわからない。パニックに陥りそうな状況で理解できることは、ひとつ。


 ──このままだと、全滅する!


 ガラハッドが、そう思ったときだった。


 彼の胸に、なにかがピタッと触れる。


「?」


 次の瞬間──


 ドンッ!


 ゼロ距離打撃が炸裂する。ガラハッドは吹っ飛ばされた。それを見た部下たちは、口々に叫んだ。


「た、隊長!」

「大丈夫ですか、隊長っ」

「隊長、ベルコ隊長っ!」


 三人の部下が彼に近より、一人が部屋中にビーム弾を撒き散らすように撃ちまくる。


 アーマースーツの胸の部分が破壊されたガラハッドは、苦しみながら必死で声を出す。


「退け……撤退……だっ」


 ビキッ、ビキッと身体が硬直するガラハッドを、兵隊たちは部屋の外に連れ出す。

 最後の一人は、見えない敵を近よらせないよう、ビームマシンガンを撃ち続ける。


 光学迷彩で姿を消しているラムドの隊員たちは、ビーム弾が当たらないよう身体を低くしている。


 シグマッハの全員が部屋から出ると、ドアが閉まる。彼らはガラハッドを連れて、エレベーターへ急いだ。


 しかし、エレベーターに乗れたとしても、降りたところに見えない敵が待ちかまえていると……そんな不安が、彼らの頭をよぎる。


 エレベーターの前まで来たとき、兵隊の一人が思い出した。


「そうだ、脱出用のシュートがあったんだ!」

「どこだ?」

「あれだ。でも、どうすれば」

「任せろ、俺がやる」


 使い方を知っている彼が、脱出シュートを機能させる。その間に、もう一人はビームマシンガンを構えて警戒する。


 準備をしながら下にいる仲間に通信を送った。


「ベルコ部隊だ、撤退する。隊長がやられた」

「ベルコ隊長が? まさか」

「脱出シュートで下に送り出す。頼んだ」

「このシュートは、おまえたちが……」

「もたもたしていると全滅する、行くぞ!」

「わ、わかった」


 彼らは最初にガラハッドを送り出し、次々に脱出シュートで退避するのだった。




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