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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 奇襲
74/91

◇ 突然の急襲

 平和な日々が続いていた。


 ラムド政府も軍も、また民衆たちも、この平和を当たり前のように感じはじめていた。


 だが、戦いのない平穏な毎日が続くことを、シグマッハはゆるさなかった。


 ラムド軍統合本部に、非常通信が入る。


「ムルグッドにシグマッハがあらわれました!」


 指令室に緊張が走る。あっという間に防衛線が破られ、現地から随時送信される連絡を受けるたびに、不安感が増してゆく。


「遊撃部隊が応戦していますが、圧されているもようです」


 応援が必要だ。こういうときに、もっとも頼りになるのは、セシルを隊長とする特別機動部隊だ。


 司令官のワイアードが指示を出す。


「特機隊に応援を要請するんだ」

「了解」


 統合本部からの指令により、セシルの部隊はムルグッドに出撃する。




 シグマッハの侵入をゆるしていたムルグッドだが、街の中心地まではまだ距離があり、遊撃部隊がどうにか食い止めている。


 そこへ、セシル率いる特機隊がやってくる。両部隊が合流し、遊撃部隊の分隊長カシン・プロストが、セシルに状況を説明する。


「敵のミサイルがやっかいだ。ランチャー編隊だと思うが、後衛から何発も一斉に打ってくる。そっちを先に潰したいが、後衛までは攻めきれない」

「わかった。われわれが、なんとかする」


 セシルはリナを呼んだ。


「傷はもうふさがったと思うが、いけるか?」

「はい」

「本当に大丈夫か」

「大丈夫です」


 どのみちリナがいないと、どうにもならない。

 セシルはリナに作戦を伝える。


「わたしとおまえで、敵後衛のランチャーを一掃する」

「わかりました」

「まずは……」


 話している間にも、こっちへミサイルが飛んでくる。カシン隊長が叫んだ。


「電磁バリアを重ねろ、急げ!」


 ミサイルが次々に迫ってくる。どうにかもちこたえたが、バリアは完全に破壊されてしまった。


 セシルはカシンに告げる。


「自分たちが片づけてくる。それまで、もちこたえてくれ」

「了解した。頼むぞ、ファーマイン」


 セシルはリナを連れて、テレポーテーションのレイズを発動する。敵のランチャー編隊の横、彼らから約十メートル離れた左の壁の後ろに、隠れるように移動した。


 ランチャー編隊は五メートル間隔で四人が横にならび、それと同じ編隊が彼らの後ろに構えている。


 いま兵隊たちは、ラムドの部隊に照準を合わせようと集中しているところだ。


 セシルはリナに顔を向ける。


「ジーグ、絶好のチャンスだ」

「はい」


 リナは、隠れている壁から姿をあらわすと、左手を前に出して掌を兵隊たちに向ける。


 バリッ


 電撃が、いちばん手前の兵隊をとらえた。


「ぐあっ」


 彼女の電撃は、そこからさらに横にならんでいる兵隊たちに、次々にアークする。また、後ろの兵隊も同じように感電し、あっという間に彼らを動けなくさせる。


 ここで、リナは右手を左手の下に添えるようにして、ダブルレイズを発動する。強烈な電撃が、最初の電撃の電磁波を伝うようにしてランチャー編隊の全員に炸裂する。

 装填準備にあったミサイルが、誘爆を起こす。けたたましい爆発音が、辺りの空気を震わせる。


 ダブルレイズを放った瞬間、リナの後ろにいたセシルはリナの身体に手をまわし、テレポーテーションで避難した。間一髪の神業(かみわざ)だ。


 進撃していたシグマッハの勢いが止まった。爆発音に驚いた前線の彼らは、このまま前に出るか後方を助けに行くか、躊躇する。


 迷っている彼らに、遊撃部隊が猛攻をかける。形勢は一気に逆転した。


 シグマッハの部隊は、リーダーらしき男が大声をあげる。


「退けっ、撤退だ!」


 彼らは犠牲を出しながら退(しりぞ)き、突破したラムドの防衛線まで後退する。後衛にいた兵隊たちは、誘爆したミサイルの爆発に全員が巻き込まれた。


 遊撃部隊は攻め続け、生きのこったシグマッハの兵隊たちをムルグッドから完全に撤退させたのだった。




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