◇ ひっかかる謎
シグマッハの本部では──総隊長のファルコ・ウォーデスが、流民収容施設から帰還したゼノバ・リジンから報告をきき、呆然となっている。
「なぜ、オズマが流民の施設に?」
「あいつは、戦うことしかできない男だ。本当に流民になったんだと思う」
オズマが流民に落ちぶれるなど、まったく想像できなかった。
それ以上にショックだったのが、存在すると思っていた地下室も破壊兵器も、なかったことだ。
本当に破壊兵器があるなら、オズマのいうようにラムド軍が先に使っているだろう。
──焦ったか……
どうにも頭がまわらなくなっている。
ファルコは作戦会議室に幹部を集め、今回の襲撃の結果をみんなに伝える。
やりきれない想いが、彼らの表情を渋くする。
ディガーがファルコにつぶやいた。
「ネイザーがもってきたチップのデータは、なんだったんでしょうね」
ファルコは首を横にふる。
ガラハッドは、誰にいうともなく声をあげた。
「ネイザーは、施設にオズマがいたのを知らなかったのか?」
ノーティスが推測する。
「たぶん、入れちがいになったんだろう。ネイザー隊長なら、施設の隅々まで調べるはずだからね」
そう、彼は──ルオード・ネイザーは、まず建物内に敵となる人物がいないことを調べたのち、施設を隅々まで調べて地下室はないことを確認したのだ。
ファルコは歯ぎしりする。判断を誤ったと思うファルコは、自分に腹が立つ。
そんな彼に、ゼノバが注意を施した。
「総隊長、落ち着いてくれ。レイズが漏れているぞ」
ゼノバの言葉にハッとしたファルコは、ひとつ深呼吸をした。
「すまん。いまは、冷静な判断ができない」
ノーティスが、フォローするようにいった。
「あんなチップが出てきたんじゃあ、無理もない。誰でも総隊長と同じことを考えると思うよ」
みんなは、うなずいた。そして、全員が心にひっかかっている。
施設で見つかったチップのデータは、本当に意味のないものなのか。
そのチップが、場違いといえる流民収容施設にあったのは、どうしてか。
彼らは、施設に地下室の痕跡があったという事実を、まだ知らずにいる。




