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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ラーホルン
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◇ 入浴タイム

 リナたちが乗った車は、休憩をはさみながらブルガナンの街に到着する。

 ラーホルンまではまだ距離があり、この日はここで夜を明かすのだ。


 宿泊施設に入る。ここは一般客も泊まるのだが、部屋は政府関係者専用の部屋があてがわれる。

 彼女たちが携帯する銃は必要ないと判断し、車の中にしまってある。


 リナとローヌは相部屋だ。二人はアーマースーツを脱いだ。


 ガイ・ユングは男なので、彼女たちといっしょに寝ることはない。その彼が、二人のいる部屋をノックして顔をのぞかせる。


「お風呂に入れるそうですよ」


 それをきいたローヌが、笑顔でリナにふり向いた。


「ジーグ隊員、お風呂に行きましょう!」


 彼女はそういうと、さっさと着替えのインナースーツを準備する。

 いままで、ローヌの緊張したような顔しか見ていないリナは、彼女の笑顔にいささか驚いた。


 風呂場に行って、さらに驚く。ローヌはインナースーツの姿からでもかなりの筋肉質だとわかるが、インナースーツを脱いで裸になった彼女の身体は、鍛え方が格段にちがうのだ。


 盛り上がった肩、割れた腹筋、太く力強そうな手足。後ろ姿は、がっちりとした幅のある広背筋に、たくましい臀部、瞬発力のありそうなふくらはぎ、まるで筋肉の鎧だ。


 リナの口から、思わず感嘆の声があがる。


「す、すごい身体ですね」

「え?」

「わたしとは、鍛え方が全然ちがいます」

「そうですか?」


 ローヌ自身はここまで鍛えて当然という彼女の肉体だが、どれほどの努力と精神力を必要とするだろうか。


 風呂場にいるのは彼女たちだけで、他に客はいない。二人は湯船に入りながら話す。


「ローヌさんは、特機隊のどのチームに配属されたのですか?」

「アストロです」

「ルゼ教官の?」

「はい、そうです!」


 アストロチームは、敵の本部や部隊の中枢に突き進み、重要人物である指揮官や幹部たちを壊滅するチームである。他のチームにくらべると、出動機会はかなり少ない。


 だが、もともと特別機動部隊の構想としては、このアストロチームを主体とする部隊構成を考えていた。すなわち、敵の幹部や指揮官を壊滅する特殊部隊を完成させようとしていたのである。


 銃撃戦よりも近距離での格闘となることが多く、だいたいはナイフを使うか、徒手での戦闘となる。

 いわば、接近戦のスペシャリストだ。現在、六人の隊員が、このチームのメンバーとなっている。


 チームマスターは格闘技の得意なミランダ・ルゼで、彼女はレイズを使えないが特殊な能力がある。

 小柄な身体から放たれる打撃は、衝撃が相手の体全身に広がり、戦闘不能に陥らせる。


 アルオーズ官房長官が誘拐された際に、ズッカーナでメディカルチームに扮して救出劇を行ったのは、記憶に新しい。


 ローヌはミランダと同じ資質がある。それを感じたミランダが、自分のチームにローヌをひっぱってきたのだ。


 ミランダは格闘技の教官として、特機隊の隊員たちに格闘術を教えている。

 セシルよりも三つ年上の彼女は、ローヌがもっとも尊敬する軍人なのだ。


 ローヌがミランダの話をするとき、彼女は目を輝かせる。


「マスター・ルゼは、すごいです。身体は小さいけど、誰もあの人には敵わないんです」


 楽しそうに話す。ミランダが自分をひき入れてくれたことが、本当にうれしいのだ。


「教えられた技があるんですよ。やってみましょうか?」


 ローヌはそういって湯船から出ると、壁の前に立った。右足を前に身体を斜めに構えて、右手の掌を壁に触れる。


「呼吸が大事なんです。こんな感じで──」


 ローヌは「ハッ」と短い呼吸で壁を打つ。右手の掌から放たれるゼロ距離の打撃は、リナはもとよりローヌの想像をはるかに超えたものだった。


 ドオンッという、爆発でも起きたような音が響くとともに、壁に大きな穴があく。となりの男湯から丸見えだ。


 ローヌの顔は、恥ずかしさで赤くなることはなく、逆に血の気がひいたように真っ青になった。


「ご、ご、ごめんなさい!」


 まさか、壁にこんな大穴をあけるとは思わなかった彼女は、パニック状態だ。


「ど、どど、どうしましょう。わ、わ、わたしっ」


 リナが知っているローヌにもどった。リナは、ただただ呆然となっている。




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