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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 運命に流されて
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◇ ドノヴァンとの出会い

 ある日、ノーティスは情報収集のためにラムドの領域に来ていた。


「今回は、めぼしい収穫はなかったな」


 たいした情報は得られず、シグマッハの本部にもどろうと市街地から離れ、グランバードまで移動したときだった。


 ズズンッと、地面が揺れる。一瞬、地震かと思った。


「いや、これは……」


 なんらかの攻撃だ。しかし、シグマッハがこの街に奇襲をかける予定など、なかったはずだ。

 近くに人影はない。


 キョロキョロと辺りを見回すと、煙が上がっているのが目に入った。案外、近い。そっちの方へ足を進ませる。


 煙の出所がわかった。そこに、ひとりの男が背中を向けて立っている。

 彼を中心に、半径二メートルのクレーターができている。男は、冷めた目でプスプスと煙が出ているなにかを見下ろしていた。


 ノーティスはレイズを発動し、己の姿を消して男の横にまわるべく足音を立てないようにして忍び寄ってゆく。


 男の右側、三メートルまで近づいた。そこに転がっているのはラムド兵士のアーマーだと理解するのに、いささか時間がかかった。


 なにが燃えていたのか答えが見つかるが、信じられない。


 ──ラムドの兵士が、アーマーを着たまま燃えて灰になった……?


 不意に、男が声を響かせる。


「誰だ」


 ノーティスは息を飲んだ。男は、保護色で存在をわからないようにしているノーティスの方に顔を向けているのだ。


 ──俺が見えないはずなのに、なぜわかる?


 その男は重力の歪みでノーティスの位置を察知したのだ。


 興味を抱いたノーティスは、己のレイズを解除する。


 男の顔に警戒心の色が浮かぶ。ノーティスを敵視する彼は、低い声を響かせた。


「おまえはラムドか?」

「いや、俺はシグマッハだ」


 どうやら、この男はラムドに恨みがあるらしい。しかし、彼はシグマッハの人間ではない。


「見ない顔だな。さっきの地震のような揺れも、おまえの能力だろう?」

「………」


 ノーティスは、転がっているアーマーに視線を移した。


「これ、ラムドの兵士だよな。一瞬で灰にしたのか?」


 鋭い目でにらみながらなにも答えない男に、ノーティスはいった。


「そう警戒するなよ。おまえを殺すなら、とっくにやっている。まあ、本当にそれが可能かどうかは、わからないがな」


 そこまで話すと、笑みを浮かべる。


「おまえのことを教えてくれよ。おまえと、いろいろ話したい」


 二人は場所を変えて話し合うのだった。


 お互いに話しているうちに、同じような哀しみを背負う二人は、気心の知れる仲となってゆく。


「まだ名前をきいてなかったな。俺はノーティス・バジルだ」

「俺は、ドノヴァン・オズマ」


 ノーティスは通信機を取り出してシグマッハの本部に連絡する。


「バジルだ。総隊長はいるかい?」


 しばらくして、ファルコが応答に出る。


「バジル、なにかあったのか?」

「特に、これといった情報はなかったよ。でも、大きな収穫があった。本部に連れて行きたい人間がいる」

「誰だ?」

「ダブルレイズを使えるんだ」

「本当か! すぐに連れてくるんだっ」


 どこにも行くあてがなかったドノヴァンは、この日からシグマッハの一員となるのだった。


 彼の加入は、シグマッハにとって本当に大きかった。シグマッハの怒涛の進撃をラムドは抑えることがかなわず、ドノヴァンはラムドから「シグマッハの悪魔」と恐れられる存在になったのである。




 そして、現在──ラムド政府も軍も、そういう事実をまったく知るよしもなかった。

 まさか大統領の息子が敵対組織の幹部になっているなど、誰が予想できるというのか。


 レオナッシュが生きているとわかったことは良かった反面、彼はシグマッハの一員になっている事実に、大統領のレズリーをはじめ、みんなは複雑な想いをどうすることもできないのだった。




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