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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 運命に流されて
59/91

◇ ファルコとの邂逅

 兵士の一人が、後ろから首を締められる。


「ぐっ」


 頭の右側に、ツンッとなにかを当てられた。背後から声が響く。


「俺が本気だったら、あんたは死んでるよ」


 レオナッシュがレイズを解き、姿を見せる。兵士の頭に人差し指を当てた彼は、その兵士を解放する。


「組織の指導者に会って、話がしたい。俺なら、みんなの役に立てる」


 もう一人の兵士が、ひきつった顔で言葉を返した。


「……そこで待ってろ」


 彼はそういうと、建物の中に入っていった。




 しばらくして、兵士がもどってくる。その兵士が、レオナッシュに伝える。


「来い。ウォーデス総隊長が、おまえに会うといっている」


 レオナッシュは、案内する兵士について行く。ガラの悪い連中が彼に顔を向けて、薄気味わるい視線を突き刺してくる。


 ある部屋の前で足を止める。兵士がドアをノックすると、中から「入れ」という声がきこえた。


 兵士がドアを開けて入り、レオナッシュがあとに続く。


 さほど広くない部屋に、スクエアのテーブルを前にしてシグマッハの総隊長ファルコ・ウォーデスが座っている。

 その横に、二人の兵士が立っている。


「俺と話がしたいというのは、おまえか」


 ファルコは、テーブルの対面にある椅子を顎で指す。レオナッシュを連れてきた兵士は部屋を出て行き、レオナッシュは椅子に座った。


 ファルコの全身から威圧感が放たれる。


「小僧、なんの話がしたいんだ?」


 レオナッシュは怖じ気づくことなく、言葉を返した。


「二人だけで話したい」

「俺の仲間が信用できないのか」

「この部屋には、隠しカメラや盗聴器もあるんだろ。切ってくれないか」


 ファルコの目が凄みを帯びる。


「いい気になるなよ、小僧」


 レオナッシュは服のポケットに突っ込んでいた右手を前に出し、持っていた物をテーブルの上に置いた。


 直径八センチほどのメダルだ。それを見たファルコは、驚きをあらわにする。

 彼は知っている。そのメダルは、ラムドの貴族の一族を証明するものだ。


「おまえっ」


 レオナッシュは「静かに」というように左手の人差し指を自分の口元に立てる。


 ファルコの両横にいる二人の兵士は、そのメダルがなにを意味するのかわからない。


 ファルコは大きく深呼吸すると、兵士たちにいった。


「おまえたちは部屋から出るんだ」

「し、しかし」

「大丈夫だ。はやく出ろ」


 これで、部屋の中はファルコとレオナッシュだけになる。ファルコはモバイル通信機で、基地内の部下に連絡する。


「盗聴器を切れ」


 部下の戸惑うような声が返ってくる。


「よろしいのですか?」

「かまわん」


 ファルコはレオナッシュを見据えた。


「カメラは生かしておくぞ。素性の知らないヤツと二人だけになって無警戒でいられるほど、俺は能天気じゃないからな」


 レオナッシュは、仕方ないという感じでうなずいた。


 ようやく、話がはじまる。ファルコが目の前にあるメダルを手に取り、口をひらいた。


「このメダルは、ラムドの貴族であることを証明するものだろう。おまえは、ラムドの貴族なのか?」

「そうだ」

「なぜ、シグマッハの俺に会いに来たんだ」

「俺の父さんはシグマッハに殺されたとみんないっているが、俺はちがうと思っている」


 ラムドの貴族の街、ラブロスを襲撃することは考えている。しかし、まだ計画を立てる段階ではない。


「おまえの父親というのは、誰だ?」


 レオナッシュは、ファルコが持っているメダルを指さした。


「その紋章に見覚えはないかい?」


 問われたファルコは、メダルの紋章をじっと見る。確かに見覚えがある。

 思い出したとき、自分の目の前にいる若い男が誰なのかが、わかった。ファルコの顔色が一変する。


「まさか、おまえは!」

「察しのとおりだよ」


 ラムド政府の大統領の息子が、シグマッハの本拠地へ独りで来るなど、誰が想像できよう。




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