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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 運命に流されて
54/91

◇ 消沈

 ノーティスが、シグマッハの本部に帰ってくる。


 作戦会議室に入ると、いつもの幹部たちがそろっている。


 ファルコ・ウォーゼス総隊長をはじめ、ディガー・ムーア、ガラハッド・ベルコ、ゼノバ・リジンという面々だ。

 ドノヴァンがいなくなったのは、やはり寂しい。


 円卓の席に座ると、ディガーが困惑した面持ちで話しかけてくる。


「ズッカーナで、なにが起きたんだ。ファーマインが来ていたというのは、本当か?」


 ノーティスは答える。


「本当だ。医療チームのスタッフに変装していたよ」


 ノーティスも、ズッカーナの中央広場に来ていたのである。レイズを発動して姿を消し、アルオーズとレミーの交換を離れた所から見ていたのだ。

 もっとも、その二人の交換は実現しなかったが。


 ガラハッドが顔をしかめる。


「ヤツは、ラムドの情報局にいたんだぞ。身体が二つないかぎり、無理だろうが」


 ノーティスは彼に顔を向けると、いった。


「情報局にいたファーマインは、本物か? ズッカーナに来たファーマインは、テレポーテーションで装甲車に移動して手榴弾を投げ入れ、すぐにもどってアルオーズを瞬間移動で医療車両まで飛ばしたんだぞ」


 ゼノバが話に割り込んでくる。


「そっちのファーマインが本物だろう。テレポーテーションが使えるのは、ファーマインただ一人だけだ」


 ノーティスは、最初からそう思っている。


「ここへ帰るまえにも伝えたが、なにもできなかったよ。あっという間だった」


 ディガーがファルコの方をふり向いた。


「総隊長」


 ファルコは、さっきから苦虫を噛みつぶすような顔をしている。機嫌が悪そうな彼に、ディガーも渋い表情で問いかける。


「これから、どうしますか?」


 ファルコはため息をつくと、力のない声で答えた。


「しばらくは、情報収集に専念しよう。ヘタにこっちから仕掛けると、犠牲が大きくなりそうだ」


 ノーティスが右手上げる。


「賛成だ。いまは、なにをやっても上手くいく気がしない」


 ゼノバもディガーもうなずいた。だが、ガラハッドはしかめっ面を崩さない。


「やられっぱなしのままでいるのは、どうかと思うぞ」


 そういうガラハッドに、ゼノバが言葉を返した。


「戦力は、ラムドの方が上をゆく。やみくもに攻めても、総隊長のいうように犠牲が大きくなるだけだ」


 ディガーが、彼のあとに続く。


「だから、勝つための情報を探すんだ。なんの情報もなければ作戦が立てられない。無策で行動するわけには、いかないだろう」


 理論的には正しいと思うガラハッドは、しぶしぶ納得するのだった。


 会議はこれで終わり、各々は持ち場にもどる。

 ファルコは不機嫌そうな顔のまま、指令室に入った。


「敵の動きはないか」


 ファルコの代理を務めていたサイアスが答える。


「ありません」


 それをきいたファルコは椅子に座った。


 会議室でノーティスのいったことが、思い出される。いまは本当に、なにをやっても上手くいきそうにない。


 椅子に座ったのもつかの間、すぐに立ち上がったファルコはサイアスに告げる。


「情報部隊のネイザーを作戦会議室に呼んでくれ」

「ネイザー隊長ですね?」

「そうだ」

「了解しました」


 ファルコは指令室を出て、ふたたび作戦会議室に向かって行った。


 ──まだだ。俺は、あきらめんぞ


 シグマッハを率いて十五年以上になるが、これほどの窮地に陥ったのは、はじめてだ。


 これまでラムドと互角に戦ってきたが、単に幸運なだけだったのかもしれない。

 ノーティスがシグマッハの本拠地を訪れ、ドノヴァンが加入すると、戦力は一気に強大になった。


 ドノヴァンひとりが去っただけで、組織はこんなにも弱体化するものなのか。

 ダブルレイズがいかに貴重な存在かを思い知らされる。


 しかし、あきらめないその先にあるのは、絶望ではなかった。




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