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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 奪還作戦
53/91

◇ 任務完了

 ホバーランサーに乗って帰還しているセシルたちは、パダスーンの町を目指す。

 そこでは、ホバーランサーより座席の広さに余裕があるグランドランサーが待機している。


 町に到着すると、まず病院に向かい、アルオーズの健康状態をチェックする。

 怪我はないが、満足な食事を与えられていなかったためか、栄養不足であると診断され、そこで点滴治療を受けながら一晩を過ごす。


 翌日にグランドランサーに乗り、街の軍施設に泊まりながら、アルオーズは点滴治療を続ける。

 できるだけ無理のない日程で統合本部に到着したのは、アルオーズを救出して五日後だった。


 アルオーズはすぐさま本部の医療室に運びこまれ、さらに大病院の集中治療室に移動する。

 そこまで悪い状態ではないのだが、レズリーが大統領命令でそのようにしたのだ。働きすぎの感がある彼を、強引に休ませるためである。


 ただ、シグマッハに捕まってからのことを軍と情報局が綿密に把握するため、集中治療室で調書をとるという異例の事態となった。




 統合本部の指令室に、セシルたち三人が入ってくる。


 司令官のワイアード・ロディオンは、セシルとレミーそしてミランダが無傷であることに、ホッとした顔を見せた。


「三人とも、よくやった」


 情報局でセシルの身代わりを務めたアストン・ワグナーも、いっしょにいる。


「ご苦労様でした」


 そういう彼を、セシルがねぎらう。


「よく、わたしの代わりを務めてくれた。今回の作戦の、最大の功労者だ」

「ありがとうございます」


 実際、アストンの存在は大きい。彼がいなければ、今回の作戦は成り立たなかった。


 セシルは、シグマッハに対して思うことがある。それをワイアードに話す。


「シグマッハが人質をとるような手段に出るのは、かなり追いつめられているからだと、わたしは考えるのだが」

「そうかもしれない。こういうやり方は、一度もなかったからな」

「一気に叩くべきでは?」

「大統領は、それを望んでいないようだ」


 意外だった。したたかなレズリーであれば、表で平和を叫びつつ裏でシグマッハを一網打尽に叩き潰すことを思索するのではないかと、セシルは思っていたのだ。


 ワイアードが話を続ける。


「前回の戦いで、ジーグの重症が堪えたらしい。極力、犠牲者を出さない方針で行くようだ」


 できるかぎり、シグマッハとの戦闘は避けるということである。


「むろん、向こうが攻めてくれば迎撃するが、こちらから攻めて行くことはないだろう」


 セシルは甘いと思う。


「いまがチャンスだと思うが」

「仕方ない。大統領がシグマッハとの戦闘を拒んでいる限り、われわれは勝手に動けない」


 セシルは、まるで子どもが楽しみしていた遠足が中止になったような顔をする。ワイアードには、彼女の表情がそのように見える。


「確かにチャンスかもしれないが、こちらも敵のすべてを把握しているわけではない。ノーティスだったか、そいつの素性も痩せぎみの若い男であることと保護色のレイズを使う以外のことは、ほとんどなにもわからない」


 ワイアードのいうとおりだ。シグマッハには、他にも彼のような兵士がいる可能性がある。

 その場合、ヘタに突っ込んで行くと、こちらの犠牲が大きくなることも十分あり得る。


「いまは、防衛線を押し上げるように考えている。できるだけ街の中心地から離れたところで、やつらを迎撃できれば、街はより安全になる」


 やはり、司令官だけのことはある。賢明で的確な判断だ。


 セシルは、うなずいた。


「わかった。とりあえず、わたしたちは基地に帰るよ」


 ワイアードは微笑んだ。


「ネルソンも、やっと本部へ帰れるな」

「本部より暇で、楽だったろう」

「ひたすら緊張していたようだ。シグマッハがいつあらわれるか、夜もおちおち眠れないといっていたよ」


 セシルたちは笑いながら指令室を出るのだった。




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