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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 奪還作戦
52/91

◇ セシルの言葉

 セシルは、知りたかったことをアルオーズに尋ねる。


「あなたとジーグは、どういう関係があるのですか?」


 彼は率直に答える。


「遠い親戚にあたるらしいんだ。まったく知らなかったがね」


 ウルトラシークレットの件以来、同じ電磁波のレイズを扱う能力者として、アルオーズはリナに興味があった。


 不幸な生い立ちのリナを調べると、元は同じ一族から枝分かれした家系だとわかり、驚いた。


 ルッデリア家の貴族が本家であり、まず娘が(とつ)ぎ、さらにその娘たちが嫁ぐということを繰り返し、血筋はうすくなってゆく。だが遺伝子が共通している関係からか、血のつながりのある彼らが発動するレイズは、みんな電磁波のレイズとなった。


 レイズの能力には個々の差があり、また両親ふたりの能力も影響するので、同じ電磁波のレイズといっても発揮できる分野がちがってくる。


 リナは戦闘に特化しているが、アルオーズは制御系である。


「リナ・ジーグがわたしと血縁関係にあるとわかると、このまま放っておけなくなったんだ。あのあとすぐに、軍の部隊へ編入されたあの子が、わたしは心配になったのだよ」


 レズリーが大統領になって以降、ウルトラシークレットに関わる者たちが、リナの処遇について話し合った。


 ボルグのレイズの影響は予想以上に大きく、死んだような目をしているリナは、もはやふつうの子どもと同様の生活はできないのではないかと懸念された。


 それなら、将来にわたってリナのレイズを生かすべく、軍が面倒をみるようにした方が良いと考え、ワイアードがリナをひきとったのだ。


 セシルが特機隊の隊長になると、リナは彼女の部隊へ移動する。リナだけ年齢がかけはなれているため、リナは個別に教育や訓練を受けていた。

 しかし教官たちは、まるで感情のないロボットを相手にしているような現状に戸惑いを覚えた。


 セシルが、やわらかな口調で話す。


「あなたがジーグに会いに来てくれたおかげで、ジーグは感情を取りもどしたのです」


 少しずつではあるが、アルオーズに会うことでリナに人間らしさがよみがえる。お互いのレイズが無意識に交差し、それがリナの心に作用する。ボルグから受けたレイズの呪縛から、徐々に解放されていったのだ。


 アルオーズには、その自覚がない。


「家族をすべて失ったわたしは、いつ死んでもいいと思っている。ただ……」


 その目に、ふだんは見せることのない寂しさがあふれる。


「死ぬまえに、唯一の血縁関係であるあの子に、会ってみようと思っただけだ」


 そんなアルオーズに、セシルは言葉を続ける。


「あなたがいなければ、ジーグは任務を最優先で遂行するため仲間を見捨て、子どもさえ平気で殺す殺人マシンになっていたかもしれません」

「………」

「官房長官、あなたはジーグが成長するにあたって、絶対に必要な存在なのです」


 セシルがそこまでいってくれるとは思わなかった。

 しかしアルオーズは、彼女の前では話したくない。リナに会うことが、もう死んでもいいと思っていた自分の、生きがいなのだと。


 アルオーズは、セシルが特機隊の隊長になるまでの、数々の評判の悪さを耳にしていた。謙虚さの欠片もない、傲慢な女だと思っていた。


 しかし、そんな彼女の言葉は


「だからあなたは、ジーグのために」


 どんな女性よりも、慈愛にあふれているのだった。


「生きてください」




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