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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 誘拐計画
49/91

◇ かけひき

 不意に、レズリーの左側にある電話が着信ベルを鳴らす。これは会議室の電話ではない。大統領へ直接つなぐ電話だ。


 ──だれ?


 この大事なときに、大統領の自分に電話をよこすなど、よほどのことが起きたのか。


 彼女は受話器をとる。


「もしもし」

「レズリー大統領か?」


 レズリーの顔が硬直する。相手が何者かが、わかったのだ。

 彼女は、この通話をスピーカーに切り替える。


「俺はシグマッハの総隊長、ウォーゼスだ。こちらの要求は、きいてくれただろうな」


 情報局に送られた犯行声明の通信と同じ声だ。レズリーは、自分が気にかけていることを訊いた。


「アルオーズ官房長官は、ぶじでしょうね」

「ああ、ぶじだ」

「声をきかせて」

「それはできない」


 ワイアードが、レズリーに手でサインを送る。手話だ。レズリーは、彼が手話で伝える指示どおりに話す。


「いっておきますが、特別機動部隊のモルダン副隊長ひとりでズッカーナへ行くことはできませんよ」

「車の運転手を、一人だけ認めよう」


 それに従うと、シグマッハの思うがままになる。ワイアードは、そうはさせない。


「官房長官の容態が心配です。メディカルチームの二人が同行します」

「ダメだ」

「彼女たちは医療チームです。戦闘員を乗せて行くわけではありません。車も、武器を搭載しない医療車両です」


 ファルコは、しばらく考える。


「……わかった」

「車両の整備に時間がかかります。また戦闘車両ではないので、あまりスピードが出ません。官房長官とモルダン副隊長の交換は、五日後にできませんか?」

「いいだろう。五日後の正午、場所はズッカーナの中央広場だ。忘れるなよ」


 ファルコ・ウォーゼスからの通話は、それで切れた。


 レズリーは、手話で指示していたワイアードにいった。


「これでいいのですか」

「ええ、上出来です」


 とりあえず、アルオーズとレミーとの交換を五日後まで延ばすことができた。医療車両であるホバーランサーのスピードは実は速く、ズッカーナまでは三日で行けるので、二日間の余裕ができる。

 あと二日の間に、アルオーズの奪還作戦を考えなければならない。 


 ワイアードはセシルの方をふり向いた。


「ファーマイン、わたしとおまえで作戦を立てるぞ」


 神妙な顔をするボルグが、懸念することを二人に伝える。


「当日は、ファーマイン隊長が情報局に釘付けになるぞ。しかし、ズッカーナに彼女が行かなければ、あのときのように成功しないのではないか」


 彼のいう「あのとき」というのは、ウルトラシークレットのことだ。


 ダーモス・コーネン元大統領を暗殺したリナを、セシルのレイズで一瞬のうちに移動させたように、アルオーズも彼女の能力で瞬時に奪還する以外に策はないと考える。


 それを知らないオルトナが、漏らすように声を出した。


「あのとき?」


 ボルグは、いささかあわてた。


「ああ、おまえは知らなくていい」


 ワイアードがフォローする。


「以前、われわれしか知らない重要な作戦があったんだ。いまでも、関係者以外は秘密にしている」


 頭の良いオルトナは、察しがついた。彼は目を見開いて、驚きを声に出す。


「ま、まさか、ウルトラ……」


 ワイアードは、最後までいわせない。彼の目つきが凄味を帯びる。


「これ以上は話せない」


 オルトナは、びびった。


「……わ、わかりました」


 彼は素直に了解する。


 レズリーは、部隊の二人に問いかけた。


「官房長官を奪還し、モルダン副隊長も危険な目にあわせるわけにはいきません。なにか良い案があるのですか」


 セシルは大統領を安心させるように言葉を返した。


「わたしが、ズッカーナへ行きます」


 ボルグが彼女に疑問を投げる。


「しかし、君は情報局から離れられんのだぞ」


 だがセシルにとっては、なんの問題もなかった。


「代わりがいる」

「代わり?」


 ボルグもオルトナも、目を丸くする。




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