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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 誘拐計画
48/91

◇ シグマッハの要求

 アルオーズが誘拐されてから三日後、シグマッハからラムド情報局に通信が入る。


 それを傍受したジュリアが、ボルグ長官に伝える。


「長官、シグマッハの通信です。ラインCー1です」


 ボルグはジュリアの近くにあるスピーカーまで行き、音声に集中する。


 ラインCー1の回線は相手からの一方的な通信であり、こちらからは返信できない。


「われわれは、シグマッハだ。ラムドに要求する」


 その要求に、ボルグは驚いた。


「いまからいう場所に、特別機動部隊の副隊長モルダンを連れてこい。モルダンと官房長官を交換する。場所は──」


 ボルグは、すぐにレズリー大統領に報告する。そして、大統領官邸に前回と同じメンバーが集まるのだった。




 大統領官邸の会議室で、ワイアードの困惑する心情が、その顔に浮かぶ。


「モルダンと官房長官を交換、か」


 ボルグが、わかりきったことを口にする。


「レミー・モルダンを連れてこなければ、アルオーズ官房長官は殺されるだろう」


 セシルは眉をよせながら、彼の方をふり向いた。


「モルダンにもしものことがあれば、部隊の戦力はガタ落ちだ。副隊長の存在は、ラムドの平和に直接かかわってくる」

「だが、官房長官を見捨てるわけにはいかん」

「当然だ。しかし、なにか手を打たないとモルダンはやつらに連れて行かれたまま、どんな目に会うかわからない」


 レズリー大統領は、オルトナに指示する。


「先ほどきいた通信を、もう一度お願いします」

「はい」


 シグマッハが情報局に要求を述べた通信だ。


 オルトナがキーボードを操作する。ラインCー1の通信音声が、部屋のスピーカーから流れる。


「われわれは、シグマッハだ──」


 みんながその声に耳を傾ける。


「──場所は、ズッカーナの中央広場。時間は三日後の正午だ」


 ズッカーナは、ラムドにもシグマッハにも属さない中間的な領域である。


 緩衝地帯といってよいのだが、この地は過去に激戦に次ぐ激戦で、完全な廃墟と化した街である。

 復興の兆しもまったくない、捨てられた町なのだ。


 シグマッハの要求に応えるには、かなり遠い位置にある。睡眠時間を確保することを考慮すれば、ふつうの車両では五日はかかる距離だ。

 速度のはやいランサータイプの車両でなければ、シグマッハが指定する日時に間に合わない。


 いま、アルオーズを拐った者たちは夜通し車を運転して、このズッカーナの地にいるのではないかと推測される。


 シグマッハの要求は、それだけではなかった。


「官房長官とモルダンを交換する間、ラムド情報局のラインCー4で、特別機動部隊のファーマイン隊長を映すようにしろ。もちろん、通話できるようにするんだ」


 ラインCー4は、いわばテレビ電話である。

 シグマッハは、ズッカーナの現場にセシルを来させないよう、彼女を情報局に釘付けにする気なのだ。


 セシルの能力テレポーテーションは、やっかいだ。彼女がそのレイズを発揮すれば、造作なくアルオーズを奪還できるだろう。


 ワイアードが顔をしかめる。


「特機隊の副隊長に目をつけるとは、考えたな。しかも、ファーマインを情報局から動けないように監視するとは」


 こういう頭のキレるところが、シグマッハの侮れないところだ。彼らは、力まかせに戦うだけの脳筋集団ではない。


 だがシグマッハは、本当はモルダンよりもリナをとらえたかった。リナを抑えることができれば、大きくかけはなれたラムドとの戦力の差は、だいぶ縮小するだろう。


 しかし、ズッカーナでアルオーズとリナを交換するとき、彼女の電撃であっという間に一網打尽にされる恐れがある。

 シグマッハは、そうなる確率が極めて高いと判断し、リナではなくレミー・モルダンを選んだのだ。


 ところが、リナはまだ満足に動ける状態ではない。彼らの知らないその事実は、この作戦における誤算だった。


 シグマッハにすれば、レミーも要注意人物であることに変わりはない。

 セシルが懸念するように、レミーにもしものことがあれば、ラムドの戦力はマイナスの方向に大きく傾くのは目に見えている。





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