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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 狡猾な大統領
42/91

◇ 裁断会議

 大統領のレズリーは、厳かな口調でいった。


「ゆゆしき事態となったのを遺憾に思うのは確かです。この問題について、われわれは慎重に考えなければなりません。まず、誰に責任があるのか」


 彼女は断言する。


「最初の会議で、わたしはいっています。すべての責任は、わたしにあると」


 レズリー大統領の言葉に、みんなは唖然となった。


「いま、リナ・ジーグ隊員を失うわけにはいきません。彼女は、わが国の未来を左右するほどの戦力です」


 セシルは、どうやって大統領を説得するか必死に考えていたのだが、レズリーは思った以上に、リナに対する理解があった。


「リナ・ジーグ隊員については、不問とします」


 アルオーズが立ち上がった。


「大統領!」


 憤る彼は、食ってかかるようにレズリーに向かって口をひらいた。


「ウルトラシークレットですぞっ。そういう前列を作ってしまうと、今後どうなるか……」


 レズリーは、彼の言葉をさえぎる。


「さっきもいったように、すべての責任はわたしにあるのです。責任を問うのであれば、それはジーグ隊員でもロディオン司令官そしてファーマイン隊長でもなく、わたしなのですよ」


 まだなにかいいたそうなアルオーズに、ワイアードが言葉をかける。


「ウルトラシークレットの内容を知っているのは、まだファーマインの部隊だけです。オズマの知るところとなったのは事実ですが、それほど心配はいらないと考えます」


 納得できないボルグは、怪訝な想いが顔に、そして声にもあらわれる。


「なぜだね。民衆に知れわたると、一大事だぞ!」


 ボルグの疑問に、ワイアードは冷静な声で答えた。


「たとえ民衆にウルトラシークレットが知れわたったとしても、十歳の子どもが大統領を殺害したなどと、誰が信じますか?」


 ボルグは沈黙を余儀なくされる。アルオーズも言葉を返せない。


 ここで、レズリーが締めくくる。


「裁断会議は、これで終了です。では、解散」


 ワイアードとセシルはその言葉をきくなり、さっさと会議室を出る。アルオーズとボルグが、まだ大統領にぶつぶつ文句をいうかもしれないが、もはや知ったことではない。


 大統領官邸を辞し、軍専用車両に乗った二人は、統合本部へと帰るのだった。




 車を運転するのは、ワイアードだ。


 本部へ帰る道すがら、二人の会話がはじまる。ぶじに会議が終わったことに、ワイアードはホッと表情をゆるめながらいった。


「よかったな。ジーグは無罪で、おまえも責任を問われなくて済んだ」


 セシルは、ブスッとしながら彼に返した。


「わたしは、あの気難しい顔をした官房長官が好きにはなれん」


 ワイアードは、ニヤニヤと微笑む。それを見たセシルは怪訝に思う。


「なにがおかしい?」


 ワイアードはニヤついたまま、チラッとセシルに目を向けた。


「おまえは、本当にアルオーズ官房長官が、ジーグの処刑を望んでいると思っているのか?」


 予期せぬ言葉に、セシルは絶句する。


「あの人は、絶対にそんなことは考えないよ。ファーマイン」


 まるでワイアードとアルオーズの二人は親友であるかのような口ぶりに、セシルは変な感じを受ける。


 彼らの間に、それほどの付き合いがあるとは思えない。また、そういう噂もまったくきいたことがない。


 ──だとすると、裁断会議での官房長官の態度は、演技だったというのか?


 しかし、なぜそんなことをするのか理由がわからない。


 腑に落ちない顔をしているセシルに、ワイアードはいった。


「まあ、いつかはおまえにも、わかる日がくるだろう」


 本当にその日がくるというなら、何年も遠い先のことだろうとセシルは思った。




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