表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 狡猾な大統領
37/91

◇ 副大統領への罠

 また、この計画は、それで終わりではなかった。


 リナを回収し終わったあと、まだ官邸にいるボルグが部下に命令する。


「大統領が死んだことを外部の人間には絶対に漏らさないよう、官邸にいる全員に伝えろ」

「はっ」


 部下たちが一階に降りると、のこされた警備員がボルグに尋ねた。


「どうして、大統領の死亡を外部に伝えないのですか?」


 ボルグは、わざとらしく真剣な表情をつくって語った。


「レイズを使えない一般人の多くは、大統領に不満をもっている。大統領の死亡が知れると、彼らがこれを機に暴動を起こすかもしれん。このまえ、ガルモア議員が襲われた事件が、あっただろう」

「ああ、確かに……」

「いま、差別的処遇を受けている彼らが一斉に暴れだすと、ラムドは内側から崩壊していくぞ」


 ボルグはそういうと、モバイル通信機を取り出した。連絡先はレズリーだ。


「レズリー議員、情報局長官のボルグです。大変なことが起きました。大至急、大統領官邸に来てください」


 やがてレズリーが官邸に到着すると、ボルグと二人で台本どおりの会話をはじめる。

 そして救命車を呼び、ダーモスの遺体を感染病棟へ運ぶよう手配した。ボルグもいっしょに同行する。


 必然的に、感染病棟で働く職員には大統領の死亡が知れることになるが、それを外部に漏らさないよう、ボルグが厳重にいいわたす。


「この事実を外部に漏らした者は、極刑に処せられて死刑になると思え!」


 彼の言葉をきいて、事の重大さを理解した職員一同は、真っ青になりながらうなずいた。


 ボルグは己の言葉にマインドコントロールのレイズを機能させていたため、感染病棟の職員を通じてダーモス死亡の情報が外に出回ることは、いっさいなかった。


 一方、レズリーはすべての議員を政府議事堂へ呼びよせる。議員の他にワイアードとセシル、そして感染病棟に向かったボルグ長官の代理としてマリー・クレストン情報解析室室長が参加している。


 レズリーは、大統領が死亡したことをみんなに告げた。

 だが、これが国民に知れわたると、いままで差別的処遇を受けてきた一般人が、ここぞとばかりに暴動を起こす恐れがある。

 そのことをみんなに話し、事実を隠蔽するように彼らを説得したのだった。


 国民には、大統領は未知の伝染病に(かか)った恐れがあり、重症であると報道することに決める。


 ダーモスの死亡を国民に伝えなければならないときがくるだろうが、そのときまでダーモスには防腐処理を施し、彼の肉体は腐敗しないよう処置したのだった。当然、面会することはゆるされず、それは家族でも例外ではなかった。


 早急に、ダーモスに代わる大統領を決めなければならない。

 ふつうなら、副大統領のベルガー・ジモンが適任者として推されるのだが、レズリーたちは彼に対して罠を仕掛けていた。


 ボルグは事前に、ベルガーに良からぬ疑惑があるとして、部下に接近させていた。

 マスメディアの一員に扮した部下は、ボルグの指示どおりにベルガーにインタビューする。


「次に大統領になる人物はあなただという声が多いのですが、あなたの時代になれば、ラムドの国をどうされますか?」


 ベルガーは、ボルグの思ったとおりに言葉を返した。


「そうだな。ダーモス大統領がいなくなれば、わたしの時代になるな。ハハハ」


 情報局長官の代理で来たマリー・クレストン女史により、録音されたこの声が議員全員にきかされる。


 ベルガーの顔が、一瞬で真っ青に変わった。


 マリーが彼を問いつめる。


「ベルガー副大統領。この声は、あなたの声ですね」

「ち、ちがう、わたしは……」

「わが情報局の解析チームを侮らないでいただきたい。この声は、あなたの声と完璧に一致する」

「た、確かにわたしの声だ。しかし、これは……」


 レズリーは、彼に最後まで話させない。


「ベルガー副大統領、あなたには大統領殺害の容疑がかかっています。それが無実だと証明されるまでは、警察庁で取り調べを受けてください」

「ちがうっ。わたしは大統領を殺していない!」

「副大統領の地位にあれば、自分の手を汚さずに誰かに命令するのが、ふつうでしょう」


 ベルガーは、警備員たちによって警察庁へ連れて行かれ、取り調べを受けることになる。


 そして数日後、彼は取り調べの最中に謎の死をとげるのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ