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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ウルトラシークレット
34/91

◇ 作戦遂行

 リナは、防塵メガネをかけてペン型の小型呼吸器を口にくわえると、セシルが電磁カッターで開けた空調ダクトの穴から中に入る。


 それを見とどけたセシルは、穴を開けたダクトの部分を、元どおりに修復する。


 その間、ワイアードは監視カメラを制御するITV制御盤に細工をする。正常なヒューズを、いまにも切れそうなヒューズに交換するのだ。


 制御盤の電源が落ちないように、ヒューズ挿入部分の両極端子をコードでつなぐ。そして正常なヒューズを抜いて、寿命間近のものに入れ替えた。

 盤内にある予備のヒューズも、不良品に取り替える。


 やるべきことを終えた二人は、電気室を出て、一階にある監視制御室に歩を進める。


 途中でワイアードが口をひらいた。


「ここまでは順調だ」


 問題は、ここからだ。監視制御室に入った彼らは、警備員たちに報告する。


「電気室に異常はなかったよ。いちばん危険な場所は、電気室だと思ったんだが……」


 そのときだった。ズガーンという音が響くと同時に、部屋の明かり消え、非常灯が点灯する。


 警備員たちに緊張が走る。


「いま、爆発音がきこえたぞ!」


 すぐに自家発電機が起動する。


 セシルがいった。


「爆発は官邸内ではなく、外だ。そんなに遠くではないな」


 ワイアードの言葉が続く。


「われわれが見てこよう。行くぞ、ファーマイン」


 セシルとワイアードの二人は、官邸の外に出るのだった。




 二階を調べていたボルグとその部下は、官邸内が停電すると、すぐさま大統領の部屋に向かった。


 部屋の前に貼りついている警備員の二人に、ボルグはいった。


「いま、爆発音がきこえただろう。外で、なにかが爆発したんだ。ひょっとしたら、官邸を狙っているのかもしれん」


 警備員たちの表情が、険しくなる。


「念のため、大統領には地下のシェルターへ避難してもらった方がいい」


 警備員の彼らは、了解した。すぐにドアをノックして、大統領がいる部屋に入る。


「失礼します」


 ダーモスがその声をきくなり、不機嫌そうな顔でいった。


「爆弾はあったのか?」


 ボルグが答える。


「官邸内には、ないもようです」


 ダーモスは続けて問いかける。


「さっきの爆発音はなんだ」

「官邸の外で、なにかが爆発したようです。この建物を狙っているのかもしれません」


 警備員がおそるおそるダーモスに進言する。


「大統領、念のために地下のシェルターへ移動した方が良いと思います」


 警備員の二人は、ぶつぶつ文句をいう大統領に付き添いながら、地下のシェルターへ向かって行った。


 ボルグは、自分のそばにいる部下たちに命令する。


「わたしは、この部屋をもう少し調べてみる。おまえたちは一階に降りて警備員と合流し、もしものときに大統領を守れるように、シェルターへの入口を警戒しろ。ああ、その脚立は、わたしがあずかろう」


 二人の部下は「了解しました」といって脚立をボルグにあずけると、一階へ降りていった。


 誰もいなくなった大統領の部屋で、ボルグは空調の通気口の型枠を取り外しにかかる。

 通気口の下にくると脚立に乗り、型枠四隅のビスを工具でまわす。それが終わると、型枠を引っこ抜くようにガコッと取り外した。


 すると、防塵メガネをかけて小型呼吸器を口にくわえたリナが、そこから顔をのぞかせる。

 ボルグは、脚立をその位置からいくぶん遠ざけると、ふたたび足を乗せる。右手を伸ばしたリナのその手をつかみ、リナの身体を空調ダクトから引き出した。


 脚立から落ちて怪我をすることもなく、ぶじにリナをフロアへ降ろす。そして、急いで通気口の型枠をもとどおりにはめ込んだ。


 やるべきことが終わったボルグは、リナから防塵メガネと小型呼吸器を手渡されると、彼女の目を見ていった。


「頼んだぞ、リナ・ジーグ。君ならできる」


 念押しのレイズを、リナに(ほどこ)す。


 リナはなにもいわずに、こっくりとうなずいた。






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