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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ウルトラシークレット
32/91

◇ リナ・ジーグ

 アルオーズが、大画面のモニタースクリーンへ映像を写す出力装着に、メモリチップを挿入する。

 それは、今回の調査でワイアードとボルグが調べあげた集大成だ。


 キーボードを操作すると、モニタースクリーンに大統領官邸が映し出される。

 大統領官邸は三階建てで地下シェルターがあり、さらに屋上がある。官邸内外に監視カメラが設置され、万全の警備体制をしいているのは、いうまでもない。


 アルオーズが説明にはいる。


「これが大統領官邸ですが、まず警備員の配置状態を調べてみました」


 映像を順次、切り替えてゆく。


「以上のように、官邸の警備員が配置され、外部からの侵入を防いでいます。さらに」


 もう一度、映像を切り替える。スクリーン画面には、官邸を上空から見た様子が出力される。


「三階建ての官邸の屋上にも警備員が配置され、官邸の周辺を上から見張っています」


 ふたたび映像が変わる。これは、官邸の内部構造の見取り図だ。


「二階にある大統領の部屋は、ここです。もちろん、ドアの前には警備員が二人、貼りついています」


 矢印のアイコンで大統領の部屋を示したあと、映像が一階の見取り図に変わる。


「これが一階です。作戦において重要となるのは電気室と思われますが、その扉は一階のここにあります」


 アルオーズがキーボードを操作し、電気室の扉を矢印のアイコンで示した。


 次は、空調のダクトの図面だ。


「官邸の設計図によると、空調のダクトはこのように設置されています」


 ここで、ボルグが口をひらいた。


「部下のレミーに調べさせたが、設計図のとおりで間違いない。他の設備、電気室や監視制御室なども、機器の配置は図面どおりだということだ」


 そこまできいたセシルは、妙だと思った。


 ──空調のダクトが、それほど大事なことだろうか?


 ダクトの中をつたっていけば、大統領の部屋に侵入することができるかもしれない。だが、空調のダクトは、人が中に入って移動できるほど大きくはない。


 子どもでなければ、無理だろう。


 ──毒ガスを使うのか?


 この場合、ダクトは官邸内すべての部屋につながっているため、無関係の人たちを巻き込んでしまう。

 毒ガスで大統領を殺害するのは、あり得ないといいきれる。


 彼女は、誰ともなく訊いてみる。


「大統領の暗殺は、どのように?」


 それには、ワイアードが答えた。


「あのダクトの中をとおって、大統領の部屋へ侵入する。そして、大統領を殺害するのだ」


 不可能だ。


「ダクトの中? 無理でしょう。そんなことができる人間がいるのですか」


 ボルグがうなずいた。


「ひとり、いる」


 驚いた。目が点になっているセシルに、ボルグはその人物の名前を告げる。


「リナ・ジーグだ」


 はじめてきく名前だ。いったい、どんなレイズを使うのか。


「どこの部隊に所属しているのですか?」

「いや、部隊に所属しているわけではない」


 一度ならず、二度も驚かされる。部隊の人間ではないとなれば、一般人ということになる。

 心なしか、ボルグの目が冷酷な光を放ったように思える。


「適任者を見つけるのに苦労したよ。この子は……」


 セシルは、その響きに違和感を覚えた。


 ──この子?


 続けて話すボルグの言葉に、セシルの全身が凍りついた。


「政府の養成学校の初等部に所属している、十歳の女子だ」


 モニタースクリーンの画面左側に、リナの上半身が映し出される。右側には、リナの身体的なデータが表示されている。


 セシルは、驚いたどころではない。絶句した彼女は次の瞬間、椅子から立ち上がって思わず叫んだ。


「こ、子どもに大統領を暗殺させるのですか!」


 ワイアードがセシルの方に顔を向ける。


「落ち着け、ファーマイン」


 無理だ。子どもに人を殺害させようとするその異常さを、当然のように受け止められる神経の方が、どうかしている。




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