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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ウルトラシークレット
31/91

◇ 暗殺計画

 五人が席に着いたデスクは、コの字の両端をやや広げたような形で、真ん中にレズリー議員が座る。

 その右側に気難しい顔をした細身のアルオーズと、彼とは対照的に恰幅(かっぷく)のよいのボルグが着席する。ワイアードとセシルは、大統領の左側にまわって席に着いた。


 レズリーの正面には大画面のモニタースクリーンが設置され、映像を写し出す機器は、アルオーズのすぐ前にある。


 レズリーが、会議の口火をきった。


「では、はじめます。まず、この会議で決まったことは、絶対に外部に漏らしてはなりません」


 セシルは緊張する。いったい、この会議でなにを話そうというのか。目的は、なんなのか。


 困惑しているセシルに、ワイアードが声をかけた。


「ファーマイン。おまえにはまだ、なにも話していなかったな」

「はい」

「これから、ここで決めるのは」


 次に語るワイアードのひと言が、セシルの全身を硬直させる。


「ダーモス・コーネン大統領の暗殺だ」


 セシルは目を大きく見開いて絶句する。


 ──だ、大統領暗殺?


 ワイアードは言葉を続ける。


「驚くのも無理はない。まずは、こういうことに至った経緯を話しておこう」


 レズリーが割って入る。


「それは、わたしから説明しましょう」


 彼女は、ここにいるみんなに事の成り行きを語った。


 セシルは驚愕する。まさか、レオパルド初代大統領が殺害されたのはラムド内部の犯行だったとは、考えてもみなかった。

 それは、いまの時点では推測でしかないのだが、話をきくかぎり間違っていないように思う。


 軍務に追われる日々を過ごしていたセシルは、一般人が差別的処遇を受けている状態にあることも、まったく知らなかった。ワイアードが、唖然となっているセシルに顔を向ける。


「われわれの部隊は……いや、政府が擁する軍隊は、すべての国民のために存在するのだ。当然、レイズを使えない一般人も守るべき国民だ」


 ボルグ長官が続く。


「このままでは、一般人たちの不満が高まり、暴動が起きる恐れもある。先日、ガルモア議員が、一般人に襲われたことを知っているかね? 彼は、ダーモスを支持する第一人者だ」


 さらに、レズリーが語る。


「いまの状態を放置しておくと、レイズを使える者と使えない者とに別れての争いに発展しかねません。そうなると、ラムドは内側から崩壊してしまうでしょう」


 ワイアードがつけ加える。


「そこへシグマッハがなだれ込んでくれば、ラムドの敗北は決定的となる」


 レズリーは顔をひきしめる。


「もはや、悠長にしていられる状態ではありません。一刻もはやく、ダーモスを叩き潰さなければならないのです」


 確かに筋はとおっている。セシルも、ダーモスは好きではない。

 彼の顔には、自分のことしか考えていないという想いが、ありありと出ているように感じるのだ。


 それはそうと、彼女は疑問に思うことがある。


「なぜ、幹部でもないわたしが、こんな大事な会議に呼ばれたのですか?」


 ボルグが答える。


「君が必要だからだ。君がいなければ、これから話す計画は成り立たない」


 セシルは焦った。


「ま、待ってください。わたしに大統領が暗殺できるとは、とても……」

「いや、暗殺を実行するのは、君じゃない」


 彼女は、頭の中が真っ白になった。


 ──それなら、わたしが呼ばれた理由はなんだ?


 実績を上げてきたのは確かだが、これほど重要な作戦に加えられるほどの功績はのこしていない。彼女自身はそう思っている。


 ──この人たちは、わたしになにをさせようというのか?


 ワイアードが、そんなセシルを安心させるようにいった。


「ファーマイン、落ち着くんだ。この計画は、ひとりでできるものではないんだよ。話が進むにつれて、自分のやるべきことがわかってくるはずだ」


 レズリーがうなずいた。


「では、これよりダーモス大統領暗殺について、作戦会議をはじめます」


 刹那、会議室の空気が凍ったように冷たくなるのを感じた。



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