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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ウルトラシークレット
30/91

◇ レズリーの思惑

 レズリーは思った。


 ──大統領を警護していた者は、本当になにをやっていたのか?


 彼女は、それをワイアードに調べさせた。すると、奇妙なことが判明する。


 レオパルド大統領が殺害された当日、大統領を警護する人員が変更されていた。いつものメンバーではなかったのだ。彼らはダーモスが大統領になると、なにもとがめられることなく、そのままダーモスの警護を続けている。


 大統領殺害のニュースに隠れて大々的に報道されることはなかったが、大統領の部屋にいっしょにいた官房長官カルマン・イーガーも命を落とした。


 事件の詳細を知っていると思われるカルマンは重症を負って意識がなかったものの、当初はどうにか助かるという見解だった。だが、翌日に容態が急変し、意識がもどらないまま亡き人となったのだ。


 レズリーは考える。


 ──あの時は、そういうこともあるだろうと、たいして疑問に思うこともなかったが


 頭の中を、さまざまな思惑が駆け巡る。


 ──いま考えれば、カルマン官房長官も口封じのために、暗殺者の手に落ちたのでは?


 この事件は、大統領を警護する者たちが暗殺者と仲間であったとすれば、スムーズに事がはこぶ。


 そして黒幕は


 ──ダーモス・コーネン……


 これが、導かれた答えだ。おそらく間違いないだろう。だが、証拠がない。




 ある日、レズリーはワイアード・ロディオンを議員専用の自分の部屋へ呼び出した。そして、レオパルド大統領ならびにカルマン官房長官殺害について、自分の考えを述べる。


「ロディオン隊長、どう思いますか?」

「わたしも同感です。レズリー議員のおっしゃるとおりだと思います」


 この事件について、最初に疑問に思ったのは彼だった。シグマッハといえど、そう簡単に大統領官邸に侵入できるものではない。


 レズリーは沈思黙考する。


 その様子を見たワイアードは、彼女に対してピンとくるものがあった。


「レズリー議員、まさか」


 大きな声ではいえない。


「クーデターを考えているのですか?」


 レズリーは顔を上げる。


「ロディオン隊長、お願いばかりして悪いけど」


 彼女から依頼される内容を告げられたワイアードは、唖然となった。彼女はワイワードだけでなく、情報局も動かそうとしていた。すでに、情報局長官のボルグが協力するところまで話を進めている。


「レ、レズリー議員……」

「これ以上、ダーモスの好きにはさせません。いま、いったことを調べ終わったときは、わたしに連絡を。では、頼みましたよ」


 ワイアードは部隊の本部に帰るあいだ中、険しい顔つきになったまま、レズリーに頼まれたことを遂行するために必死で思考を巡らせるのだった。




 それからしばらく経った、ある日──レズリーたち三名が、ワイアードの所属する政府軍防衛部隊の基地に顔を出す。


 やって来たのはレズリー議員と彼女の秘書であるアルオーズ、そして政府情報局長官のボルグもいる。


 隊員たちが、ひそひそと噂する。


「議員が直接、基地へ来るのは、めずらしいな」

「情報局の人間もいるぞ。部隊の予算で、不正でもあったのかな」


 レズリーたちは、部隊会議室へ案内される。案内するのは、セシル・ファーマインだ。会議室には、彼女も呼ばれている。


 ──なぜ、幹部でもないわたしが会議に?


 このところ成長いちじるしく、部隊内でも評価が上がっているセシルだが、議員を交えての会議に自分が参加する理由が、まったくわからない。


 心の中で戸惑いつつも議員たちを会議室へ案内したセシルは、彼らとともに室内に入ると、ワイアードのとなりに座った。


 会議室の防音は完璧だ。事前に盗聴器がしかけられていないか、すでにチェックを済ませている。


 会議に参加するのは、議員のレズリー・マットと彼女の秘書を務める側近アルオーズ・バルディン、政府情報局長官のボルグ・レギング、そして防衛部隊大隊長のワイアード・ロディオンに部下のセシル・ファーマイン、以上五人だ。


 セシルはますます困惑する。そうそうたる肩書きの人物たちがいる中に、自分が含まれていることの違和感が半端ではない。




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