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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 惑星アーカス
3/91

◇ 未知なる能力(レイズ)

 市街地から離れた工業都市グランバードで、ラムド政府軍とシグマッハ反政府部隊が戦っている。


 シグマッハ攻撃隊の火力が予想以上に高く、ラムドの部隊は圧されている。


「行け、ラムドを蹴散らせ!」

「おうっ」


 勢いにのるシグマッハの部隊は、グランバードの最終防衛線まで迫ってくる。


 シグマッハの本拠地指令部では、戦地グランバードでの戦いをドローンに搭載したカメラで監視している。

 指令部にいるファルコ・ウォーゼス総隊長が、モニターの映像を見ながらニヤリと笑みを浮かべ、つぶやいた。


「ここを突破すれば、こっちのものだ」


 そのときだった。ドゴーンッという爆発音とともに、部隊の先頭を走る装甲車が、地雷をふんだような爆撃を受けて吹っ飛ばされた。


 編隊に急ブレーキがかかる。そこへ、ラムドの遊撃部隊が一斉に攻撃をかけた。

 三台の装甲車が、瞬く間に破壊される。


 後続の歩兵隊が、ひき返そうとしたときだった。指令部のモニターは急に映像が乱れ、やがてなにも映らなくなる。


 ファルコはギリッと歯ぎしりする。


「くそっ、なにがあったんだ」


 戦場の後方部隊から通信が入る。


「指令部、応答願います!」


 ファルコがそれに応える。


「ウォーゼスだ。どうした」

「総隊長、前方の歩兵隊が一気に……」


 部隊兵の言葉は、最後までは続かなかった。ジジッ、バシッという音がきこえたあと、通信が完全に途絶えた。


 ファルコが思考を巡らせる。


 ──例のジーグというヤツが、やったのか? 


 歩兵隊も後方部隊も、こんな短時間で殲滅(せんめつ)できるのは、ラムドの新たな戦力以外に考えられない。


 通信が切れるまえに、雑音があった。


 ──電磁力……敵のレイズは、電撃か?


 答えに近づいている。だが、部隊を一網打尽にするほどの絶大なレイズは、オズマ以外に見当がつかない。


 もっと情報がほしい。それはラムドも同じだった。




 山嶺地区のブレゼオでも、ラムドとシグマッハが戦っている。

 シグマッハの本拠地は、この先にあるのだ。


 ラムドの部隊も、シグマッハの防衛線を前に攻めあぐねている。


 ラムド先進部隊の後方にいる支援部隊が、離れた場所で戦闘のもようを望遠カメラでとらえ、映像を本部に送信していた。


 ラムド軍の本部では、現地の戦闘をモニターで見ている。すると、モニターに映し出された映像が突然、地震でも起きたかのように大きく乱れる。

 司令官のワイアード・ロディオンが眉をよせる。


 映像がもとにもどったとき、本部のモニターに映し出されたのは、燃えさかる業火だった。凄まじい炎が立ち上がったかと思うと、それは瞬く間に消えてゆく。

 一瞬ですべてを焼き尽くしたかのようだ。


 確認はできないが、敵の部隊にオズマがいる可能性が高い。


 ラムドが知る、オズマに関する数少ない情報


 ──シグマッハの悪魔は、すべてを焼きつくす炎を使い、あっという間に殲滅する


 その炎は、エルレアン合金で作られたアーマーをも炭と化し、人間は跡形もなく灰となる。極めて短い時間で焼きつくすゆえに、火が消えるのもはやい。


 ワイアードの顔が、血の気を失う。映像が乱れた一瞬で、ラムドの先進部隊が全滅したのだ。

 モニターから目にする現場の様子は、その事実を物語っている。しかし、具体的になにがあったのか、全然わからない。


 支援部隊から連絡が入る。


「本部、こちらブレゼオ攻略隊の支援部隊、エルガーですっ。先進部隊が全滅しました!」


 ワイアードが応答する。


「支援部隊、すぐにもどれっ。一人でも多く帰ってこい!」

「敵の攻撃が……」


 本部のスピーカーから爆発音が響いたあと、通信は完全に途絶え、モニターの映像が映らなくなる。

 シグマッハのミサイルによる一掃攻撃が、支援部隊を蹂躙(じゅうりん)する。


 ブレゼオで戦っていたラムドの兵士は、誰一人として帰って来ることはなかったのだった。






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