◇ 暗殺者
ドノヴァンのレイズに苦しんでいる副隊長のレミーは、頭が混乱してくる。
──副隊長のわたしでさえ知らないウルトラシークレットを、なぜジーグが知っている?
その想いは、だんだんと強さを増してくるドノヴァンのレイズに、押し流されてゆく。
混乱の渦にひき込まれたのは、彼女だけではなかった。ドノヴァンも思考が混沌としている。
シグマッハが大統領を暗殺したのであれば、組織全体に知れわたるのは当然であり、自分が……いや、みんなが知らないはずはない。
暗殺したのがシグマッハでなければ、ふつうに考えると実行者はラムドの人間ということになる。しかし、一般人に大統領を殺害できるとは、とても思えない。
すなわち、これはラムド政府軍内部の犯行である。クーデターだ。
──なぜだ?
理由がわからない。いったいどうして、誰がダーモス・コーネン元大統領を暗殺したのか。暗殺しなければならなかったのか。
そして、その話が本当だとすると、暗殺は大統領がレズリーに代わった七年前ということになるだろう。
──七年も前に、ヤツはすでに死んでいたのか?
困惑した想いが顔にあらわれるドノヴァンは、声を響かせる。
「誰でもいい、答えろ。誰があいつを殺したんだ!」
リナが話そうとする。セシルが、それを止めようと必死になる。
「元……大統領を……」
「いうな、ジーグ!」
「殺したのは……」
「やめろ、それ以上……ぐっ」
もはや声も出せないほど、ドノヴァンのレイズが威力を増している。
このままでは、メディカルチームの三人をのぞく部隊の全員が、死んでしまう。
瀕死のリナは、気を失いかけている。
だが──
「ダーモス……コーネンを……」
彼女は、意識を失うまえに
「暗殺……したのは……」
ドノヴァンに真実を告げるのだった。
「わたし、です……」




