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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ノーティス
26/91

◇ 予期せぬ事態

 お互いの声がとどく距離に、リナとドノヴァンが立っている。


 ドノヴァンが、リナに向かって率直な想いを声に出す。


「君とは戦いたくないんだけどな」


 リナは、ドノヴァンを見つめながらいった。


「わたしは、自分の使命を果たします」


 ドノヴァンの顔に、消沈した想いが浮かぶ。


「そうか……残念だ」


 ピリピリとした空気が、戦場をおおいはじめる。一触即発の状態にあるなか、ラムドもシグマッハもヘタに動けない。


 そのとき、予期せぬことが起きた。リナの右側にある崩壊しかけた建物が、ガラガラッと音を立てて崩れた。


 リナもドノヴァンも驚いた。そこには、五歳ぐらいの子どもが隠れていたのだ。

 その子は、いまにも泣きそうな顔をして怯えている。


 リナが、即座に子どものところへ走った。その距離は、約二十五メートル。


 ──なぜ、あんなところに子どもが


 後ろにいたセシルが叫んだ。


「ジーグ!」


 彼女の位置からでは建物が邪魔になり、いったいなにが起きたのかわからない。


 ドノヴァンの後ろにいるシグマッハの部隊が、リナを狙って一斉に銃撃を開始する。


「撃て、撃てーっ」


 銃声がとどろくなか、ドノヴァンは唖然となり、セシルは焦った。

 セシルのテレポーテーションは、彼女の視界に入らない場所に移動することができない。


 ラムドの部隊も、シグマッハの兵隊たちに銃で応戦する。

 しかし、敵の兵士のなかに電磁バリアのレイズを使える者がいる。その電磁バリアが、ラムドのビーム弾をことごとく弾き返す。


 銃声が止む。リナは子どもを抱きながら、横たわっている。幾多のビーム弾を浴びたアーマースーツは戦闘モードが解除され、その背中は血まみれだ。


 それを見たドノヴァンは、絶句したまま動かない。

 彼の背後から、歓喜の叫びが響く。


「やったぞ、ジーグを倒したぞ!」


 ウオオオッと、歓声が広がる。


 リナが守ろうとした子どもが、泣き声をあげる。それを心配するように、リナの手が動いた。


「おい、まだ動いてるぞ」

「トドメを刺すんだっ」


 勢いづくシグマッハの兵士たちは、リナに狙いをさだめる。


「子どももろとも、ぶっ殺せ!」


 セシルの顔が血の気を失い、青くなった。


 ──まずいっ


 子どもの泣き声がきこえたので、リナが子どもを守ろうとして重症を負ったことが想像できる。

 だがセシルには、どうすることもできない。


 そのときだった。ラムドの兵隊たちは、信じられないことを目の当たりにするのだった。


 ズドドドンッ!


 大きな地響きが空気を震わせる。ドノヴァンの背後から、巨大な建物でも崩れたかのような地煙が立ちのぼる。

 ドノヴァンの後方にいたシグマッハの兵士たちが、彼のレイズで圧し潰されたのだ。


 ドノヴァンは、自分の後ろをのぞくように顔を向けた。


「子どももろとも、ぶっ殺せだと?」


 そして、身体の向きをそっちへ変える。


「生きる価値がないのは、貴様らの方だ!」


 凄まじい炎が、圧し潰されたすべての兵士たちの死体を、あっという間に灰にする。


 わずかな時間でシグマッハの進撃部隊を壊滅させたドノヴァンのレイズに、ラムド特機隊のみんなが息を飲んだ。


 ──味方を全滅させたのか……?


 呆然となっていたセシルは、ハッとわれにかえると、テレポーテーションでリナが最初にいたところへ飛んだ。そこから右を向いた彼女は、リナを見て愕然となった。


「ジーグ、返事をしろ」


 リナは、セシルの声に反応しない。


 セシルは後方へふり返り、全力で声をはりあげる。


「フォーゼリエ、はやく来いっ、急げ!」


 メディカルチームの三人が、グランドランサーに乗ってセシルのそばまで来ると、セシルが指さした方へ曲がる。


 セシルもリナが倒れている場所まで行こうとしたとき、ゾワッとする悪寒に襲われた。不気味な圧力を感じる。


 忘れるところだった。ドノヴァンは、まだ敵なのだ。

 彼は、鋭い目でセシルをにらんでいる。彼女は金縛りにあったように、一歩も動くことができない。





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