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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ノーティス
25/91

◇ 戦う運命

 セシルがもう一度、飛ぼうとしたときだった。ヘッドギアのインカムからきこえるレミーの叫び声が、セシルの耳をつんざいた。


「ミサイルです! 隊長、そっちに……」


 セシルは、リナに怒鳴るように大声をあげる。


「伏せろっ」


 敵のミサイルが、彼女たちの盾になっている建物に命中する。二階から上が木っ端微塵になった。


 セシルが建物の右端まで進み、前方の様子をうかがおうとしたとき、ふたたびレミーの声がインカムに響いた。


「もう一発、きます!」


 二度目のミサイルが炸裂し、セシルは後方へ吹っ飛ばされる。リナが後ろをふり向いて叫んだ。


「隊員っ」


 セシルは、すぐに返す。


「大丈夫だ、心配するな」


 リナからかなり離れたものの、受け身が完璧だった身体はそれほどダメージを受けていない。


 土煙が前方の視界を曇らせる。リナは、不意に人の気配を感じた。


 ──誰かいる


 レイズで仕留めようとしたとき、ドキッとする。会いたくなかった人物が、そこにいる。


 彼はリナの姿を確認すると、運命の残酷さを味わっているような声を出した。


「リナちゃん……」


 ドノヴァンだ。彼の後ろの方から、別人の声がきこえてくる。


「いてててっ」


 ノーティスである。ラムドの部隊から発射された小型ミサイルが、ノーティスが隠れていた建物に命中し、彼を吹き飛ばしたのだ。


 シグマッハの部隊が、一気に上がってくる。ノーティスが、そんな彼らに指示を出す。


「止まれ、動くな!」


 部隊の一人が、彼にいった。


「どうしてですか?」


 ようよう起き上がったノーティスは、ため息をつくと冷静な声を響かせる。


「シグマッハとラムドの、最高戦力者どうしの一騎打ちだ。邪魔するなよ、巻き添えを食うぞ」


 みんなは、そこから動けなくなる。いうべきことをいったノーティスは、己のレイズで姿を消した。


 セシルは、あわてたように先進部隊の隊長ラインバッハに伝える。


「先進部隊は撤退してくれ。急いでここから離れるんだ」

「いや、ここでシグマッハを止めないと」

「この場所でみんなが全滅すると、迎撃部隊だけでは都市を、ラムドの国を守れない」


 おそらく、セシルのいうとおりになるだろう。しかし、特機隊を見捨てるわけにはいかないと思うラインバッハは、迷う。


 そんな彼に、セシルは言葉を続ける。


「最悪の事態に備えてくれ。われわれは、むだ死にはしない」


 ラインバッハは決心した。国を守るのが最優先だ。


「……健闘を祈る」


 彼はセシルにそういいのこし、部隊をひき連れて戦線から離脱するのだった。




 双方、攻撃を停止する。


 ラムドもシグマッハも、いつでも銃撃できる態勢を保っている。


 リナのいる場所から十メール後方にいるセシルは、思考を巡らす。この状態は、非常にまずい。

 いま、リナとドノヴァンが戦うと、リナの電撃は彼の重力のレイズに曲げらる。逆に、ドノヴァンのレイズは防ぎようがない。


 ──自分が、ヤツのそばまで移動して心臓を突き刺すか、喉元を掻き切ることができれば良いのだが


 セシルは、肌で感じる。


 ──ダメだ、失敗する


 彼女の身体が、それは不可能だと拒んでいる。こういうときは、むやみに動いてはならないのを、彼女自身がよく理解している。


 一方、シグマッハの兵士たちは、リナを見て驚いている。彼女が十七歳だということはすでに知れわたっているが、実際にリナを目にすると、その年齢で戦場に立っている現実に半端ではない違和感を覚える。


「本当に、子どもじゃねえか!」


 ふつうなら、ありえない。だが、彼女はシグマッハの部隊を壊滅する力があるのも事実なのだ。


 いま、リナとドノヴァンの間には、誰も入ることができない。




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